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ラント外伝 求めているもの

3 分かった事

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 その後正式にメルルーシェとの婚姻を結んだ。その後やる事は分かっているから、ただそれをやればいいだけの時でなんとも新しい発見などはなかったが、ただメルルーシェが訳の分からない行動を取り、こちらは些か興醒めはしたものだ。

 夫のためと言いつつ、何やらと彼女はやらかすのだ。勿論、こちらが望んでもいない事を。それを微笑ましい、可愛らしいと周囲の者は褒めそやすが私にはメルルーシェがそんなに素晴らしい事をしている様にはどうしても思えなかった。だから、そのままに対応していた。側にはいるが自分は褒めず、妻を立て敬うがその行動に注意も関心も共感も示さなかった。夫という者は威厳に満ち堂々とし家の中でも公平に家族を律する者だろう?
私の行いは間違っていないだろう。あの時までは、本当にそう思っていた。

 結婚して数年経てば両親も老い代替わりし私が一族筆頭となった。周りにいる者は皆優秀な為重圧に押し潰されることなく日々忙しく領地を周りそれはそれで充実した時を過ごしていたのだが…こちらが充実すればするほどメルルーシェの表情が消えていく。メルルーシェの方から話しかけて来る事も無くなってこちらとしては寧ろスッキリとした日々になったのには少なからず驚きを覚えた。
 夫婦とはこのようなものなのか?それとも、時より夫婦間のことに対して口を挟むようになった使用人達の話を聞かなかった事が悪かったのか?自分の思い描いていた夫婦像、両親達の姿とは程遠くにいるように感じてならない。

 そして、それが現実のものとなる。

 ある夜気晴らしに屋敷の庭園に散歩に出てみれば、一番の腹心であったと思っていた者と妻であるメルルーシェが、口付けをしている所に出くわしてしまった……勿論それは不貞行為に当たり、我が家の血筋を産まなければならない妻がして良い行為ではない。

 当然ながら責められる側はメルルーシェにある。しかし彼女は私を責めた。言葉の限りを尽くし、どんなに酷い夫であったかを並べ立てたのだ。思いを込めても、言葉を尽くしても、すべての態度で好意を伝えても私は答える事も見向きもしなかった、と。私は本当の愛も知らない、人を愛する事ができない冷血な欠陥人間であると氷のような冷たい視線をただ向けるだけだった。彼女だけではなく、一番の信頼を置いていた腹心ですら目は笑っていなかった。

「使える方としては貴方は申し分ないほど信頼できる。しかし、ここまで奥方を追い詰める事ができるなど、人としては貴方を軽蔑さえしています。」

 そう言い置いて、その夜二人は消えた…我が家の土地以外の資産の殆どと優秀な人間達と共に………………
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