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26 思い出したの
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「ラント!ラント、ラント……ラント………」
落ち着くまで何度も自分の夫の名前を呼ぶ。夫なんだもの、誰に憚る事もなく好きなだけ呼んだ。
「ここにいるよ?ラーシャ。頑張ったんだね?」
「……ラント…」
背中を優しく撫でてくれる手が温かい。
「ラント…ラッキービーナ、は…私だった…」
「………うん…」
「やっぱり知っていたのね?」
「…うん。ねぇラーシャ?」
「なぁに?」
涙で濡れた頬をそっと優しく包んでくれて嬉しそうに微笑んでくれる。ラントはいつもそう…大変だって思う時ほど全て受け止めているみたいにニッコリと笑うの。
「愛しているよ?心から……」
「そんなの、何度も聞いているわ…」
そう、何度も何度も、覚えていないような記憶まで湧き出してきて不思議だけど、不快感は全くないの。逆にすんなり受け入れている自分が不思議だわ。幼い時も?まだ、ラントに出逢っていない時だったはずの……あの時も…?
「私の中の記憶……貴方が沢山いるわ…」
自分自身を見直せば、そこにはいつもラントが居た。そんな感想をポツリと呟けば、それはそれは嬉しそうにラントはニッコリと笑うじゃないの……頬をうっすらと染めて、まるで少年の様だわ…変ね?もう良い歳をしたおじさんなのに……
「どんな時も、君の中に居るのが僕だと分かった時が一番嬉しいんだ……」
「まぁ、なぁに?子供達が生まれた時は、滝の様な涙を流していたじゃないの?」
「それは勿論!得られないと思った事が全部手に入ったんだ…こんなに嬉しい事はないだろう?」
もう一度私をギュウッと抱きしめ直してラントは呟く。
「そんなの、大袈裟じゃない?」
記憶が少し戻ってきてもっと混乱してしまうと思っていたのに、ラントのこんな喜び様を見たらこちらが落ち着いてしまったわ。
「そんな事はないよ?ラーシャ…欲しいと思った事を得る方が難しい事もあるんだ。だから彼らはここを求めるんだろう?」
そうだ……何か、強い思いを持って彼らはここに来たものね。私を渡し人と言ってたのも間違えではないわ…
ラントの記憶と一緒に戻って来たラッキービーナの記憶。あちらの世界に向かう人々の最後の願いを叶える…心がここに残らない様に…
「私は、その為にここに居たのね…」
落ち着くまで何度も自分の夫の名前を呼ぶ。夫なんだもの、誰に憚る事もなく好きなだけ呼んだ。
「ここにいるよ?ラーシャ。頑張ったんだね?」
「……ラント…」
背中を優しく撫でてくれる手が温かい。
「ラント…ラッキービーナ、は…私だった…」
「………うん…」
「やっぱり知っていたのね?」
「…うん。ねぇラーシャ?」
「なぁに?」
涙で濡れた頬をそっと優しく包んでくれて嬉しそうに微笑んでくれる。ラントはいつもそう…大変だって思う時ほど全て受け止めているみたいにニッコリと笑うの。
「愛しているよ?心から……」
「そんなの、何度も聞いているわ…」
そう、何度も何度も、覚えていないような記憶まで湧き出してきて不思議だけど、不快感は全くないの。逆にすんなり受け入れている自分が不思議だわ。幼い時も?まだ、ラントに出逢っていない時だったはずの……あの時も…?
「私の中の記憶……貴方が沢山いるわ…」
自分自身を見直せば、そこにはいつもラントが居た。そんな感想をポツリと呟けば、それはそれは嬉しそうにラントはニッコリと笑うじゃないの……頬をうっすらと染めて、まるで少年の様だわ…変ね?もう良い歳をしたおじさんなのに……
「どんな時も、君の中に居るのが僕だと分かった時が一番嬉しいんだ……」
「まぁ、なぁに?子供達が生まれた時は、滝の様な涙を流していたじゃないの?」
「それは勿論!得られないと思った事が全部手に入ったんだ…こんなに嬉しい事はないだろう?」
もう一度私をギュウッと抱きしめ直してラントは呟く。
「そんなの、大袈裟じゃない?」
記憶が少し戻ってきてもっと混乱してしまうと思っていたのに、ラントのこんな喜び様を見たらこちらが落ち着いてしまったわ。
「そんな事はないよ?ラーシャ…欲しいと思った事を得る方が難しい事もあるんだ。だから彼らはここを求めるんだろう?」
そうだ……何か、強い思いを持って彼らはここに来たものね。私を渡し人と言ってたのも間違えではないわ…
ラントの記憶と一緒に戻って来たラッキービーナの記憶。あちらの世界に向かう人々の最後の願いを叶える…心がここに残らない様に…
「私は、その為にここに居たのね…」
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