三日坊主の幸せごっこ

月澄狸

文字の大きさ
上 下
312 / 436

ノウハウ

しおりを挟む
 この世には簡単に叶う夢と、自分では叶え方が分からない夢がある。

 求人誌にたくさん載っていて、経験不問で、わりと簡単に雇ってもらえる職種とかが「夢」だったら、それはわりと簡単に叶う。
 まぁバイトとかで良いのかどうかとか、私は世の中のことや金銭感覚、老後やら何やらがまったく分かっていないから、偉そうなこと言えないんだけど……。
 とにかく「工場で働きたい」が夢だったら、その夢はそこそこ簡単に叶うと思う。工場だけを選んで面接に行けばいいのだ。

 でも音楽家になるには? 芸術家になるには? 芸人になるには? 小説家になるには? 写真家になるには?

 私はまったく分からない。「ネットで活動しているうちに人気になり、才能が人々の目に止まって……」といった、シンデレラストーリーみたいなのしか分からないのだ。

 漫画なら漫画賞。小説なら小説の新人賞。
 けどどうやったら受かるとか、出版社ごとの傾向とか、何も知らない。求められるページ数も多いし、規定に沿った書き方とか送り方とか、合っているか不安だ。そもそも全然規定に沿った書き方をできていなくて、選考の前にハネられていたらどうしよう、とか。

 そう思うと、確実に誰かが見てくれているネットで表現する方が、バズる可能性はある気がして、そっちへ行ってしまうが。ネットはいいね交換の場であって、本当に私の作品が好きで、興味を持って見てくださっているのかどうか怪しい。私の虫投稿にいいねしてくれた人が、別の人の虫嫌い投稿に「私も虫苦手なんです~」と書いていたりする。

 自分のやりたいことを、漠然と。
 漠然とし続けているうちは、永遠に漠然としているのかもしれない。「いつかどうにかなったらいいな」と。「どうにか」が何なのかも分からない。

 行動。具体的な、行動。ノウハウ。方向性。
 でもその知識がない。道が分からない。
 タダで聞くのは申し訳ない。お金を払って学びたい。でも、勇気がなく、まだ自由にやりたかったりもする。

 そもそもお金を払って勉強する、そのお金がない。そのお金は、働かないと得られない。でも仕事が遅くて、自分もまわりのみんなもストレスで。「まだこんだけしか終わってないの?」みたいな言葉が聞こえてきて。過敏になって。
 もはや悪口は全部、自分のことを言われているような気がしてきて。何を言われても、悪く言われたように感じて。とても「よし、夢のためにもっと働いて、お金を貯めるぞ!」などと意気揚々と切り替えできない。

 そもそも私も社会不適合者だけど、身内も性格に難ありで、しなくていいことをし、喧嘩し、物を破壊する心配もあり。

 永遠に無気力、現状維持で、ズルズル、グダグダ。何か目標を決め、それに向けて長期的に取り組めばいいのかもしれないが、どれもこれも無意味な努力の気がして、何が有意義なんだか、何が当たりだかハズレだか分からない。

 夢見ているのか。搾取されているのか。普通なのか。才能がないのか。
 分からないんだな、ノウハウが。


しおりを挟む
うだつの上がらないエッセイ集(たまに自由研究)
【うだつの上がらないエッセイ集】

生き物の話や夢の日記、思い出や星占いの話など、思いついたことを色々詰め込んだ連載です。


良くも悪くも、星の回転は止まらない

【良くも悪くも、星の回転は止まらない】

詩集です。すぐ読める短いものが多いです。20編で完結しました。



ツギクルバナー
感想 41

あなたにおすすめの小説

そんじょそこいらのたぬ記

月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
雑記(?)です。おまけに過去のマンガも載せていきます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女について考える(ほとんど憶測と偏見とヒステリー)

月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
 私は生物学も心理学も学んでいない、ただの学のない女だ。ついでに恋愛経験もない、さらには友達もいない。告白されたこともないし当然したこともない。そんなわけでこの連載は、浅い知識と経験から「なんとなく思ったこと」を感情的に書き連ねるだけのものになる。読んでも何の学びもなく、不快になるだけなのでご注意を。(※LGBTQについては分からないので、基本的に古い価値観オンリーで書きます。)

懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣
恋愛
社会人の鳳健吾(おおとりけんご)と高校生の鮫島凛香(さめじまりんか)はアパートのお隣同士だった。 兄貴気質であるケンゴはシングルマザーで常に働きに出ているリンカの母親に代わってよく彼女の面倒を見ていた。 リンカが中学生になった頃、ケンゴは海外に転勤してしまい、三年の月日が流れる。 三年ぶりに日本のアパートに戻って来たケンゴに対してリンカは、 「なんだ。帰ってきたんだ」 と、嫌悪な様子で接するのだった。

うだつの上がらないエッセイ集(2)

月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
なんてことはない文章の集まりです。「2」とありますが基本的に一話完結の予定で、前作の内容は忘れましたのでどなた様でもお気軽にどうぞ。ただ作者はどネガティブなので、お気軽に開いた結果どんよりとした気持ちにさせてしまったらすみません。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。

さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。 忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。 「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」 気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、 「信じられない!離縁よ!離縁!」 深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。 結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

島猫たちのエピソード2025

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
「Cat nursery Larimar 」は、ひとりでは生きられない仔猫を預かり、保護者&お世話ボランティア達が協力して育てて里親の元へ送り出す「仔猫の保育所」です。 石垣島は野良猫がとても多い島。 2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。 「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。 でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。 もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。 本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。 スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。

処理中です...