三日坊主の幸せごっこ

月澄狸

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愛ある社会の想像はまだ難しい

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 陰口を嫌いながら、いつの間にか自分自身が陰口の王者になっていた。
 文章の書き方もどうも陰口臭くて、我ながら嫌だ。

 けれどおかしなことに、陰での悪口よりも、陰での褒め言葉の方が言ってはいけない気がする。妙なことだ。
 世の中の批判は平気でするのに、誰かにときめいたことは、名前を伏せても言いづらいのである。
 しかもなぜだ? 人を愛おしいと感じた記憶はサラリと水に流し、昔言われた嫌なことは記憶し続けているのは。


 近頃人が可愛いと感じる。ネット上の文章でも。リアルでの言い回しや仕草でも。
 なのにどうして、「みんな可愛いなぁ。一生懸命生きてるなぁ。あまり困らせちゃいけないなぁ」より、「あの人のこういうところ、困ります」の方が言いやすそうなんだ?

 言われる側として考えても、陰口の方が受け入れやすく、「職場のみんな、フォロワーのみんな、可愛くて大好きだ!」とか急に言われたら戸惑うであろう。なぜだろう。


 あ、褒め言葉はセクハラ臭いからか? そして誰も彼もを褒めるのは尻軽な感じがするからか。

 仕事仲間が言うことにしても、陰口だと、淡く傷つくと同時に、なんだか「普通」な気がする。
 それが「◯◯さん、いつも丁寧で優しくて、ちょっと不器用なところも可愛い! 怒られてる姿を見ていたら、守ってあげたくなる~」とか言っていたら。冷や汗をかくかもしれない。なんか褒め言葉って聞き慣れなくて。好意が怖い。


 人は何でもすぐ恋愛……いや、本能に結びつける。私の思い込みかもしれないが。
「好き」と言うだけで何事かが始まるらしいし。
「みんな好き」になってしまったら始まり放題か。だから無闇に人を好くことができないのか。


 あるいは人間関係において、「相手はこちらが嫌いでも、こちらは相手が好きだ」と言う勇気がなく、プライドが許さないからか。
「どうせアンタらみんな私が嫌いでしょう。言っとくけどこっちもだからね」という疑心暗鬼な態度に持ち込もうとしてしまうのか。その方が楽なのだろうか。


 けれどなんか違う。おかしい。
「みんな大好きだ!」で良いはずだ。それでドン引きされるような関係なんていらない。

 はずだけど……。やっぱり「好き」だとか、面と向かっての褒め言葉、面と向かわずとも陰で「あの人素敵」と言う褒め言葉であっても……。想像するとなぜか怯んでしまう。

 愛に裏切られるのが怖いんだろうか。好かれるのも嫌われるのも、本心が分からなくて、傷つきたくなくて、踏み込まれるのが怖いのだ。
 たとえば褒め言葉を真に受けたら、「ちょっと優しくしただけで、何勘違いしてんの?」「お世辞だっつーの」と笑われるんじゃなかろうか、とか。


 しかし、誰がどうだのと、ネガティブなことは言うだけでも聞くだけでも多少疲れる。何か後ろめたくて、陰口を言って楽になるようにはさほど感じない。「言ってしまった」罪悪感で後味悪い。心が汚れていくように感じる。個人的には。

 ならば「実はみんな可愛いと思っている」ことは、気持ち悪がられないために胸に秘めておくにしても、あんまり陰口は言うべきではない。陰口に代わる話題、そして「素晴らしい人格」が欲しいところだ。コミュニケーション上手な人に憧れるなぁ……。


 でも、私個人のことで言えば、好かれたいだの嫌われたくないだのの前に、まずちゃんと仕事しようぜって感じだ(私が)。ちゃんと仕事していれば、ある程度信頼は得られるはず。現に今、落ちこぼれなりに一生懸命やって、余計なことは言わないようにしているから、皆様、親切にしてくださる。これが、余計なことは言うわ仕事はできないわ努力している気配もないわだったら、もっとあからさまに嫌われているはずだ。


 とりあえず今はそう、創作があるじゃないか。
 好きに架空の状況を作り上げ、独り言を極めればいい。

 いや、難しいな……。


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