上 下
34 / 70

死も年齢も上下関係もいらない

しおりを挟む
 人は年齢で人を見る。自分のことも年齢で見る。誰の目も気にせず楽しんでいた遊びも、大人になるにつれやらなくなっていく。子どもの頃より存在意義を求めるようになっていくだろう。

 年齢なんてなければいいのに。越えられればいいのにといつも思う。


 ある日、夢の中で部活の後輩と楽しく喋っていた。どの道、対人恐怖症な自分にはこんなことはできなかっただろうけど……。夢の中では同級生になった後輩に「初めまして」と声をかけて友達になっていたらしかった。

 夢が終わると同時に温かい気持ち、そして虚しさがこみ上げた。色んな意味でこんな展開あるはずがないのに。


 物が永遠の命だったら、消耗しなくて済む。
 肉体は物だ。物だから壊れてゆく。
 何一つ壊れない世界なら良かったのに。


 もしも生まれ変わりが本当にあるとしたら、みんな生まれ変わっていて、前世を覚えていないだけなのだろうか? 親は子に、先輩は後輩に、上司は部下に、永遠にグルグル回っているのだろうか。どこか越えられない壁を抱えながら。

 人が恋をし、子を愛し、家族になるのは、この「越えられない壁」を越えたいからだと思う。けれど最初から壁がなければ、あえて家族という形態をとる必要はなかっただろう。物や肉体が壊れない世界なら、そもそも繁殖のシステムもないだろうし、今いる地球上のメンバーで変わらず仲良くやっていくはずだ。

 上下関係その他の壁がなければ、誰とでも友達になれたはずだ。「特別な人」「大切な人」を見つけなくたって、すべての人を愛せただろう。

 あれもこれもなければ良かった。


 ……そんなこと言って何になるのだろう。ただ、小説なら許される。時を越えて友達になることも、何も失わない世界を描くことも、弱肉強食を無視することも。実在した人物のイメージを覆すことだって可能だ。

 現実逃避だと言う人もあるだろう。ただ、今見ている現実が本物だという証拠もない。すべて本当は夢の中なのかもしれない。

 だから私は空想する。せめて形を持たない空想を、文字という現実に書き換えたい。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

暴れ馬のように元気なユスリカが大量発生

月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
ユスリカって儚い生き物かと思っていたのだけれど、最近うちにたくさん入ってくるユスリカは元気いっぱい。

誓いの言葉

  *  
エッセイ・ノンフィクション
誓いの言葉です

【生き物立体写真】昆虫写真でステレオグラム(立体視)

月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
立体の画像や映像を見るには3Dメガネとか専用機器が必要そうですが、実は裸眼で見られる3Dもあるのです。そんなステレオグラムのご紹介です。生き物たちの姿を立体写真でお楽しみください。 この作品は画像中心です。昆虫や節足動物の画像が多く含まれますので、苦手な方はご注意ください。

【写真】気まぐれに風景・生き物撮影

月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
風景や鳥・虫・植物たちを気まぐれに撮影して載せていこうと思います。過去の写真も時々載せる予定です。どのエピソードからでも、お好きに見ていってください。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

処理中です...