せめく

月澄狸

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地球は発狂したのかね

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怖いテレビ番組を見た後のように
ふと恐怖が再構築される夜

生まれて「初めて」知ったときは
どんな気分だった?
嬉々として受け入れたのか
気持ち悪かったのか


ほの暗い命を
日常の喧騒で覆い隠すけれど
滲み出る必要悪
打ち勝てない現実のすべて

数多くの命を我がもの顔で転がした罪
人類はそれらを何の形で返されるのだろう
なぜ野生生物たちが私を見た途端逃げてゆくのだろう
私は一体何に加担している?


お客様が気持ち悪いとおっしゃるので
蜘蛛の巣をはらわなくてはなりません
なんなら人間より蜘蛛の方が可愛いし
人間より蜘蛛の方を大切にしたいけど
人間様のために生きないとお金がもらえません

私の価値観……
私の思想……
私の生き方……

自分らしさを臆病と惰性で握り潰した
自分で自分をねじ曲げた


お金貯めて飛行機に乗って
どっかの密林にでも飛び込むか

失踪して音信不通で行方不明になって
どっかの森のUMAと化すとか

そんな決意はなかったな


もう何も語れない
はずだけれど
壊れた自我がまだ語りたがる

口をついて出るのは恨み言と
永遠の言い訳

「私は殺したくないんだよ」
「私は本当はもっと清らかなんだよ」
「土を踏み花を踏むことが辛い」
「信じてよ」
「この世界のせいで」


嘘なんだ本当は
私は幼少期から殺しまくった
運良く直接鳥類や哺乳類を殺さずに済んだだけ
狩猟本能か殺戮本能かサドだか知らんが
今もなんとか抑えているだけ
役立たずな上に凶暴なんだ

理想の自分なんて
作り上げた持論なんて
嘘っぱちだ
生き物を愛でる私なんて存在しない
私に優しさも愛情もない

これじゃやっていけないと気づいて
中途半端に作り出した
失敗作の自分像を語るだけ
「これで同情の余地ありでしょう?」

自分の罪から逃れたくて
虫を逃がして罪滅ぼししては
「肉を食べ虫を殺すみんなだって同罪だ」と
責任転嫁した


今から変われるはず
罪を認め人を許し……

なんてできなかった
私の器は小さすぎて

矛盾が多すぎて
良い人も演じられない
今ここからどうする?
本物の良い人だったらどうする?
「蜘蛛の巣をはらえ」と言われたら

命あるものの住処を
たかが人間の美醜感覚ごときで潰すなんて
どうやったら正当化できる?
良い人マニュアルをちょうだいよ


一日千回
命のために祈る
その時間を惜しんで漫画を読む私は
ほらやっぱり偽善者だ
偽善者は人の目のあるところで吠える
人の目がないところでは動かない

口だけなんだよ
命がどうのこうのと
本気なら何だってやるだろう
罪滅ぼしでも祈るだろう


「何のために生きるのか」
いつの間にか随分
ありきたりで軽い言葉になった

あんまり何度も聞くと定型化しちゃって
どうでもいい言葉の一つみたい


なんとなく生きて
なんとなく潰した重み
一匹なら罪悪感でも
100匹くらいになれば逆に軽い

1463643463の罪が
1463643464になったくらいで
大して何も変わらないわ


当たり前に部屋に置かれた殺虫スプレー
当たり前に皿に置かれた動植物
当たり前に趣味を中断して働く私
こうして並べると浅いな私の憂鬱


「何のために生きるのか」

「誰のために」


こんなこと考えてる時間が無駄なのだわ
余計なこと考えすぎ
もっと思考を己の生存本能のみに集中するんだ
人間様の多数決に合わせときゃ良い

余程ヤバいことしなきゃ
働いて生きていけるはず

多い方を敵に回したら不利なんだから
多数決に従うだけ
もう考えなくて良いだろ楽だろう

朝と夜とを繰り返すように
拘束時間を耐え抜けば
自由時間は巡ってくる

めんどくさい
めんどくさい
めんどくさい


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