3 / 4
「ゴキブリと悲しき悪役」みたいな、あらすじ・予告風ストーリー
しおりを挟む
頭脳明晰、才色兼備な生徒会長「太郎」は、全学年の女子のみならず、多くの男子からもただならぬ熱い視線を注がれていた。しかし彼は誰にも靡かない、謎多き男であった。
実は彼には、ゴキブリしか愛せないという秘密があった。ちなみにゴキブリでさえあれば種類・性別は問わない。
そんな彼は校内の全ゴキブリを救おうと、時折密かにゴキブリを模した仮面を被っては「ゴキ仮面」として活動していた。極悪非道な生徒たちの目から校内のゴキブリを隠し通していたのだ。そのため、生徒だけでなく教師まで、この学校にはゴキブリが生息していないと信じて疑わなかった。
太郎はゴキブリの存在を表の世界から隠すとともに、自身がゴキ仮面であることも完璧に隠しており、生徒会長としての信頼と人気が揺らぐことはなかった。
生徒たちの間では、ゴキブリを救うゴキ仮面の噂が流れていたが、「どうせ都市伝説の類だろう」とみんなほとんど本気にしていなかった。
そんなある夜、太郎はうっかり徹夜でゴキブリ動画を見てしまい、次の日の授業をうとうとと過ごしていた。そのとき教科書を音読しているクラスメートが発した「語気を弱めて……」という言葉に反応して、激しいジャーキング現象を起こし、机を蹴ってしまった。
前の席の生徒は休みだったため、幸い誰にも当たらなかったが、机が倒れ中身が散らばり、机に忍ばせていたゴキブリの仮面とゴキブリ写真集(手作り)が人々の眼前に晒された。
教室中に響き渡る悲鳴。どよめくクラスメートたち。
「ゴキ仮面……そんな……生徒会長が……!?」
「まさか……! あの清潔そうな彼が……!」
「いやあぁぁ!!」
太郎ファンの数人の女子は、あまりのショックに泣き出してしまった。
太郎はクラスメートに背を向け、窓から顔を出して空を仰ぐと、束の間、自らの人生について思考を巡らせた。眠すぎてあんまり頭は回らなかった。
「僕は今までゴキブリたちを皆の目から隠し続け、自身のゴキブリ愛をも隠し通してきた。まるで僕やゴキブリの生き様を恥じるかのように。しかしこんな態度で、本当にゴキブリを愛していると言えるのか?」
「否。僕でない僕を演じ続けて、一体何になるというんだ! ……僕は本当の自分を人々に知られることを恐れていた。自尊心を守るため、完璧な自分を演じてきた」
「今までの表の人生こそが仮面だった。ゴキ仮面でいるときの方が素顔だったんだ。……僕はもう、逃げも隠れもしない!」
太郎はゴキブリの仮面を装着し、ゴキブリ写真集を開いて頭に乗せた。そして高らかに名乗った。
「そうだ。僕がゴキ仮面だ!」
そのとき、校舎のあちこちからゴキブリが現れ、太郎の元へカサカサと集まり始めた。そして太郎を守るかのようにまわりを囲った。
さっきまでとは比べ物にならないほど大きくなる人々の悲鳴。
「ゴキブリたち……! 人前に出てきたら、皆殺しにされてしまうぞ……!」
太郎は焦ったが、考え直す。
「そうか、君たちももう、逃げも隠れもしないのか……!」
そのとき、太郎の体が焦げたべっこう飴色に輝き始めた。
太郎は力が漲るのを感じた。今までゴキブリを守ってきたお礼に、ゴキブリたちからゴキブリパワーを授かったのだ。
「ありがとう、みんな。僕はこれからも君たちを守る!」
人間界に完璧に馴染んでいたかのように見えた彼は突如、人間界を裏切り、世界のゴキブリを守ることを誓った。そしてゴキブリたちと共に窓から飛び出し、姿を消した。
心から愛してしまったもの、愛さずにはいられないものがゴキブリであったが故の悲しみ。世間から忌み嫌われるゴキブリを愛してしまったことを誰にも打ち明けられず、好きなものを誰にも受け入れてもらえずに生きてきた、今までの葛藤と抑圧感情。彼が悪の道に堕ちるのにそう時間はかからなかった。
いや……「ゴキブリを守る彼の正義は歪んでいる」「彼は悪の味方である」と人々の間で囁かれるようになったが、果たしてそうなのか?
良くも悪くも、彼はただ……惚れ込んだ者を全力で守ろうとしただけなのだ。
ゴキがゴキを呼ぶ超問題作、全編フルモザイクで絶賛上映中!(嘘)
実は彼には、ゴキブリしか愛せないという秘密があった。ちなみにゴキブリでさえあれば種類・性別は問わない。
そんな彼は校内の全ゴキブリを救おうと、時折密かにゴキブリを模した仮面を被っては「ゴキ仮面」として活動していた。極悪非道な生徒たちの目から校内のゴキブリを隠し通していたのだ。そのため、生徒だけでなく教師まで、この学校にはゴキブリが生息していないと信じて疑わなかった。
太郎はゴキブリの存在を表の世界から隠すとともに、自身がゴキ仮面であることも完璧に隠しており、生徒会長としての信頼と人気が揺らぐことはなかった。
生徒たちの間では、ゴキブリを救うゴキ仮面の噂が流れていたが、「どうせ都市伝説の類だろう」とみんなほとんど本気にしていなかった。
そんなある夜、太郎はうっかり徹夜でゴキブリ動画を見てしまい、次の日の授業をうとうとと過ごしていた。そのとき教科書を音読しているクラスメートが発した「語気を弱めて……」という言葉に反応して、激しいジャーキング現象を起こし、机を蹴ってしまった。
前の席の生徒は休みだったため、幸い誰にも当たらなかったが、机が倒れ中身が散らばり、机に忍ばせていたゴキブリの仮面とゴキブリ写真集(手作り)が人々の眼前に晒された。
教室中に響き渡る悲鳴。どよめくクラスメートたち。
「ゴキ仮面……そんな……生徒会長が……!?」
「まさか……! あの清潔そうな彼が……!」
「いやあぁぁ!!」
太郎ファンの数人の女子は、あまりのショックに泣き出してしまった。
太郎はクラスメートに背を向け、窓から顔を出して空を仰ぐと、束の間、自らの人生について思考を巡らせた。眠すぎてあんまり頭は回らなかった。
「僕は今までゴキブリたちを皆の目から隠し続け、自身のゴキブリ愛をも隠し通してきた。まるで僕やゴキブリの生き様を恥じるかのように。しかしこんな態度で、本当にゴキブリを愛していると言えるのか?」
「否。僕でない僕を演じ続けて、一体何になるというんだ! ……僕は本当の自分を人々に知られることを恐れていた。自尊心を守るため、完璧な自分を演じてきた」
「今までの表の人生こそが仮面だった。ゴキ仮面でいるときの方が素顔だったんだ。……僕はもう、逃げも隠れもしない!」
太郎はゴキブリの仮面を装着し、ゴキブリ写真集を開いて頭に乗せた。そして高らかに名乗った。
「そうだ。僕がゴキ仮面だ!」
そのとき、校舎のあちこちからゴキブリが現れ、太郎の元へカサカサと集まり始めた。そして太郎を守るかのようにまわりを囲った。
さっきまでとは比べ物にならないほど大きくなる人々の悲鳴。
「ゴキブリたち……! 人前に出てきたら、皆殺しにされてしまうぞ……!」
太郎は焦ったが、考え直す。
「そうか、君たちももう、逃げも隠れもしないのか……!」
そのとき、太郎の体が焦げたべっこう飴色に輝き始めた。
太郎は力が漲るのを感じた。今までゴキブリを守ってきたお礼に、ゴキブリたちからゴキブリパワーを授かったのだ。
「ありがとう、みんな。僕はこれからも君たちを守る!」
人間界に完璧に馴染んでいたかのように見えた彼は突如、人間界を裏切り、世界のゴキブリを守ることを誓った。そしてゴキブリたちと共に窓から飛び出し、姿を消した。
心から愛してしまったもの、愛さずにはいられないものがゴキブリであったが故の悲しみ。世間から忌み嫌われるゴキブリを愛してしまったことを誰にも打ち明けられず、好きなものを誰にも受け入れてもらえずに生きてきた、今までの葛藤と抑圧感情。彼が悪の道に堕ちるのにそう時間はかからなかった。
いや……「ゴキブリを守る彼の正義は歪んでいる」「彼は悪の味方である」と人々の間で囁かれるようになったが、果たしてそうなのか?
良くも悪くも、彼はただ……惚れ込んだ者を全力で守ろうとしただけなのだ。
ゴキがゴキを呼ぶ超問題作、全編フルモザイクで絶賛上映中!(嘘)
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる