背徳のアルカディア

おまけのページ

おまけSS

（やっと手に入れたぞ……）

　自身の背中から生える純白の翼を撫でながら、悪魔は微笑んだ。

（あいつ好みの金髪。美しい緑の瞳。完璧だ）

　今まで拒まれ続けた天上界への門も、天使の外見をしているだけですんなり通れた。五百年ぶりの雲の上は、時が止まっているかのように昔と同じ景色だ。

（あいつの神殿も……変わっていないんだろうな）

　実家の権力を傘に着て自分たちを引き裂いた妻神も、まだ彼の神殿にいるのだろうか。

（構わん。オレの前に姿を現したが最後、地獄の業火であの女を焼いてやる……！）

　アリアドネによって下界へ堕とされた後、自ら醜い悪魔にまで成り果てたのは全て、彼に再び会い、今度こそ引き離されない力を得るためだ。

（あいつ、オレ以外の男に抱かれないって約束、守っているだろうな……？）

　智慧者ぶった顔が、快楽に蕩けるのが好きだ。精悍で敏感な身体。震えるあご髭から落ちる汗の雫。期待にひくつく、熟れた果実のような赤い孔。
　思い出すだけで下半身に熱が集まる。

（五百年分の想い、お前の身体に注ぎ込んでやるからな……）

　悪魔は口の端を上げると美しい両翼を羽ばたかせ、豊穣神の神殿へとまっしぐらに翔けた。

（待っていろ、バッコス！)


～Fin～