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決断
27.
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できる妻ゆり子に爽やかに追い出された津田と乾は、彼女にもらった割引券を消費すべく駅前の蕎麦屋に入った。
店まで歩く間、またもこもこに着ぶくれした律は津田に抱っこをせがみ、心地よい揺れに誘われてすぐに眠りに落ちた。外で1時間以上も遊び、おやつで小腹が満たされた身体を温め揺すられては、大人でも眠くなるだろう。
幸い店には小さな座敷があり、気を利かせた店員がそちらに案内してくれたので、津田は熟睡した律を座布団にそっと下ろした。
「落ち着いて食えそう。ちょっと嬉しいな」
頬を緩め、脱いだコートを律にかける津田の前に、乾は「蕎麦」のページを開いて品書きを渡した。
津田はいつも、律に取り分けやすいものを第一の優先順位にしてメニューを選ぶ。洋食ではオムライス、和食なら茶碗蒸しを外さない。蕎麦屋では通常うどんを頼む津田が、本当は蕎麦の方が好きだということを、乾は先日知ったのだった。
「俺がうどんにして律君に分けますから、津田さんは好きなの頼んでください」
「え、いや、あ…… そ、っか…… じゃあ、うん」
遠慮、躊躇い、からの了解に、笑みが零れる。こうやって、少しずついろいろなことを分け合っていきたい。迷った末にとろろ蕎麦を選んだ津田が、普段は食べられないものに期待して少し上機嫌になるのを見られることも嬉しかった。
「引っ越し、いつにします?」
二人分の食事と取り分け用のお椀の注文を済ませてから、乾は向かいの津田に尋ねた。
「賃貸契約上の転居はまだ先でもいいと思うんですが、その…… 番のことを考えると、来週中に、とりあえず身の回りのものだけを持って泊まりに来てもらうといいんじゃないかと思うんです」
「来週…… 」
「急だとは思います。でも、周期を考えると先月のあれが確か16日ーー 」
「おい」
店まで歩く間、またもこもこに着ぶくれした律は津田に抱っこをせがみ、心地よい揺れに誘われてすぐに眠りに落ちた。外で1時間以上も遊び、おやつで小腹が満たされた身体を温め揺すられては、大人でも眠くなるだろう。
幸い店には小さな座敷があり、気を利かせた店員がそちらに案内してくれたので、津田は熟睡した律を座布団にそっと下ろした。
「落ち着いて食えそう。ちょっと嬉しいな」
頬を緩め、脱いだコートを律にかける津田の前に、乾は「蕎麦」のページを開いて品書きを渡した。
津田はいつも、律に取り分けやすいものを第一の優先順位にしてメニューを選ぶ。洋食ではオムライス、和食なら茶碗蒸しを外さない。蕎麦屋では通常うどんを頼む津田が、本当は蕎麦の方が好きだということを、乾は先日知ったのだった。
「俺がうどんにして律君に分けますから、津田さんは好きなの頼んでください」
「え、いや、あ…… そ、っか…… じゃあ、うん」
遠慮、躊躇い、からの了解に、笑みが零れる。こうやって、少しずついろいろなことを分け合っていきたい。迷った末にとろろ蕎麦を選んだ津田が、普段は食べられないものに期待して少し上機嫌になるのを見られることも嬉しかった。
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二人分の食事と取り分け用のお椀の注文を済ませてから、乾は向かいの津田に尋ねた。
「賃貸契約上の転居はまだ先でもいいと思うんですが、その…… 番のことを考えると、来週中に、とりあえず身の回りのものだけを持って泊まりに来てもらうといいんじゃないかと思うんです」
「来週…… 」
「急だとは思います。でも、周期を考えると先月のあれが確か16日ーー 」
「おい」
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