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失踪
14.
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「あれぇ、今日津田さん、お休みですかぁ?」
午前10時を過ぎたところで、増井が声をあげた。彼女の右隣は、昨日の昼から空席のままだ。
「あぁそっか、津田さん今週発情期か」
増井の呟きに、乾はギクッとした。
「主任ー、じゃあ津田さんのやりかけの仕事、分配しますけどいいですよね?」
「…… お願いします」
そう返事をしながら、乾は鼓動が早まるのを感じていた。
津田の、潤んだ目と荒い息遣いを思い出す。もうすぐ発情期が始まるはずだ。明日か、明後日か。無断欠勤した彼が、どんな状況にいるのか全く分からない。
昨夜、T大からの連絡を待つ間に、乾は都内にあるすべての救急指定病院に電話をかけた。そして当日中に運び込まれた患者の中に、津田らしき者がいないことは確認済みだった。
オフィスに部下がいなくなるのを待ってから電話をかけ始めたので、診療時間外のせいか1件ごとに時間がかかった。
(いてほしい…… いないでほしい…… )
保留メロディを聞きながら、乾は祈るような気持ちで落ち着きなく待った。
その病院に、津田の外見と一致する患者がいないと分かるたび、乾は安堵のため息をついた。しかしすぐに別の心配が湧いてくる。
何度もそれを繰り返し、すべての確認を終えたときには、精神がぐったりと疲れていた。
津田はどこにいるのだろうか。彼が自分の意志で行方をくらましているとは思えない。
津田に執着し、何度も届いた河野のメールに感じたざらりとした違和感が、乾の心をかすめた。
夜中でも構わない、と言われていたので、乾は佐伯に電話をかけ、都内の病院には津田がいないことを報告した。
「どうもありがとう。疲れただろう」
そう労ってくれた佐伯に、胸が痛んだ。
(あぁ…… この人は、息子と孫を亡くしたんだ…… )
つらい思いをしたのだろう。津田と同じように。
午前10時を過ぎたところで、増井が声をあげた。彼女の右隣は、昨日の昼から空席のままだ。
「あぁそっか、津田さん今週発情期か」
増井の呟きに、乾はギクッとした。
「主任ー、じゃあ津田さんのやりかけの仕事、分配しますけどいいですよね?」
「…… お願いします」
そう返事をしながら、乾は鼓動が早まるのを感じていた。
津田の、潤んだ目と荒い息遣いを思い出す。もうすぐ発情期が始まるはずだ。明日か、明後日か。無断欠勤した彼が、どんな状況にいるのか全く分からない。
昨夜、T大からの連絡を待つ間に、乾は都内にあるすべての救急指定病院に電話をかけた。そして当日中に運び込まれた患者の中に、津田らしき者がいないことは確認済みだった。
オフィスに部下がいなくなるのを待ってから電話をかけ始めたので、診療時間外のせいか1件ごとに時間がかかった。
(いてほしい…… いないでほしい…… )
保留メロディを聞きながら、乾は祈るような気持ちで落ち着きなく待った。
その病院に、津田の外見と一致する患者がいないと分かるたび、乾は安堵のため息をついた。しかしすぐに別の心配が湧いてくる。
何度もそれを繰り返し、すべての確認を終えたときには、精神がぐったりと疲れていた。
津田はどこにいるのだろうか。彼が自分の意志で行方をくらましているとは思えない。
津田に執着し、何度も届いた河野のメールに感じたざらりとした違和感が、乾の心をかすめた。
夜中でも構わない、と言われていたので、乾は佐伯に電話をかけ、都内の病院には津田がいないことを報告した。
「どうもありがとう。疲れただろう」
そう労ってくれた佐伯に、胸が痛んだ。
(あぁ…… この人は、息子と孫を亡くしたんだ…… )
つらい思いをしたのだろう。津田と同じように。
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