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失踪
11.
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自分は、津田と佐伯の関係を知っている。それを伝えなければ、話が前に進まない。でもそれを、他の部下がいるところで話すわけにはいかなかった。
佐伯は何かを察したのか、小さく頷いて踵を返した。乾は一瞬迷ってから上着をとり、それを羽織りながら佐伯の後について歩いた。
「託児所から私の…… 自宅の方に電話があってね、津田君がまだ律を引き取りに来ていないと言われたんだよ」
応接室のソファに腰を沈め、佐伯は心配げに眉をひそめた。
先刻、乾の方から、津田が河野との会食以降オフィスに戻っていないことを説明した。そのうえで、津田の家庭環境、律のことや佐伯との関係も一応は津田から聞いていると話し、佐伯の来意を尋ねたのだ。
津田から家族の事情を聞いた、と言うと、佐伯は驚いた顔をした。どんな経緯でそれを聞くことになったのかはさすがに話さなかったが、ただの上司と契約社員の関係でそこまで踏み込んだ事情を知っているということは確かに珍しいだろう。
彼は驚きの後にふと柔和な顔になり、そしてまた気づかわし気な物憂い表情に戻った。
「契約の時に、親権者が引き取りに来ない場合の連絡先を書く必要があってね、津田君に頼まれてうちの電話番号を書くことにしたんだよ。それでさっき、託児所から電話があったと妻から連絡が来たんだ。今までこんなことはなかったから、ゆ…… 津田君はどうしたのかと心配になってね。見に来させてもらったんだが…… 」
いつもなら17時半過ぎに迎えに来る津田が、一時間待っても来ない。事前に連絡をせずに延長保育を頼む利用者もいるが、津田がお迎えに遅れたことなど一度もなかった。託児所は21時までの営業なので、もしも津田に連絡がつかないようであれば、代わりに律を引き取りに来てもらえないか。
電話口で保育士は、佐伯の妻にそう言ったという。
佐伯は何かを察したのか、小さく頷いて踵を返した。乾は一瞬迷ってから上着をとり、それを羽織りながら佐伯の後について歩いた。
「託児所から私の…… 自宅の方に電話があってね、津田君がまだ律を引き取りに来ていないと言われたんだよ」
応接室のソファに腰を沈め、佐伯は心配げに眉をひそめた。
先刻、乾の方から、津田が河野との会食以降オフィスに戻っていないことを説明した。そのうえで、津田の家庭環境、律のことや佐伯との関係も一応は津田から聞いていると話し、佐伯の来意を尋ねたのだ。
津田から家族の事情を聞いた、と言うと、佐伯は驚いた顔をした。どんな経緯でそれを聞くことになったのかはさすがに話さなかったが、ただの上司と契約社員の関係でそこまで踏み込んだ事情を知っているということは確かに珍しいだろう。
彼は驚きの後にふと柔和な顔になり、そしてまた気づかわし気な物憂い表情に戻った。
「契約の時に、親権者が引き取りに来ない場合の連絡先を書く必要があってね、津田君に頼まれてうちの電話番号を書くことにしたんだよ。それでさっき、託児所から電話があったと妻から連絡が来たんだ。今までこんなことはなかったから、ゆ…… 津田君はどうしたのかと心配になってね。見に来させてもらったんだが…… 」
いつもなら17時半過ぎに迎えに来る津田が、一時間待っても来ない。事前に連絡をせずに延長保育を頼む利用者もいるが、津田がお迎えに遅れたことなど一度もなかった。託児所は21時までの営業なので、もしも津田に連絡がつかないようであれば、代わりに律を引き取りに来てもらえないか。
電話口で保育士は、佐伯の妻にそう言ったという。
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