上 下
6 / 15

第六節 西へ

しおりを挟む
――爆破のオフィスルーム。爆破スマシが机につき、考え事をしている。(先日のショッピングモールでの被害数、42名……か。今まででワースト3に入る数だ……戦力が整ったとは言え、一般人の被害がこんなにも出てしまっていては……)



「ガチャ」



「!」

狩人の研究員がオフィスルームに入ってきた。

「何だ? ノックくらいしたらどうだ?」

少し怒ったように爆破は言う。すると研究員は謝りつつ話す。

「申し訳ありません! しかし隊長、例の宝石について、興味深い発見がありまして……」

「何だそれは?」

「ひとまず、研究室へ」





――狩人ラボ、研究室。

「ツカ……ツカ……」

爆破が研究員の後に続いて歩く。

「こちらです」

研究員は手で、あるモノを指し示した。それは透明なケースに数個入っており、紫色に光っていた。

「これは……?」

爆破が問う。

「主人公隊員達が単独で手に入れた宝石に、先日のショッピングモールでの戦いで手に入れた宝石を近付けてみたところ、共鳴するように輝き出したのです。宝石同士が7、8mほどの距離にあれば輝くのですが、近付けば近付くほど、その輝きが増すのです」

「ほう……(手に入れた時には気付かなかったが、戦いの中で何かの役に立つかも知れんな)」

研究員の返答に、感心し考え事をする爆破。

「よし! 次の戦いではこれを一つ持って行く事としよう。良いか?」

「はい、他にも宝石はありますし、一つならば問題はありません」

「……決まりだな」

研究員の了解を得る爆破。と、



「ピロリロリ! ピロリロリ!」



爆破の携帯が鳴った。

「ピッ」

「もしもし、狩人・関東支部隊隊長爆破だ。何? 関西支部? 何の用だ?」

狩人・関西支部の男が話す。

「ええ、少しお頼みしたい事がありますねん……」

「…………!」







――二日後、新大阪駅にて。



「よし皆、切符はちゃんと持っているな?」



爆破達、狩人十数名が丁度新幹線から降りてきたところだった。



(大阪! おおさカ オーサか!)

(タコ焼き食って帰るか……)

(ああ……ホントに来ちゃった。授業……)



逃隠、抜刀、主人公がそれぞれ、思いを募らせる。





「ところで隊長ォ!」





逃隠が手を上げて質問する。

「何だ?」

「身体副隊長の姿がありませんガ、どうしたのですカ? てっきリ、もう現地に到着しているモノかト……」

爆破が答える。

「ああ、副隊長なら、この前の戦いで腕を折っているからな。今日は休養に充ててもらっている」



――その頃、狩人ラボ、トレーニングルームでは

「ガッシャン……ガッシャン……」

片腕で身体がトレーニングをしていた。



――場所は戻って大阪。

「が――――――――ン」

ショックを受ける逃隠。

(今回モ、俺の活躍を身体副隊長にお見せする予定だったのニ……)

爆破が口を開く。

「まぁ、そういう事だ。さて、次はなんば駅辺りに向かうぞ。地下鉄に乗り換える」





在来線のホームを歩く一同。それに気付いた民間人が、ひそひそと話をする。



「見ろ、狩人や。近頃、ゾムビーがよう出てくるからなー」

「見た事の無い顔ぶれやなー。どこの支部のもんや?」

「あの女、べっぴんさんやな……」



それに対し、抜刀が不満そうに言う。

「へっ! 見世物じゃねーっての!」

「セツナ。……気にするな」

爆破が注意する。電車が来る。



 電車は走り、なんば駅に到着した。爆破は言う。

「さて、少し悠長かも知れんが、戦いの前に腹ごしらえでもするか」



(うオ――――!)

(へへっ、ラッキー)



歓喜する逃隠と抜刀。



――とあるタコ焼き屋前。

「ここのタコ焼きが旨いと聞いた。立ち食いで悪いな」

爆破が話す。

「いえいエ、とんでもなイ」

「気にすんな! いっただっきまーす」

タコ焼きを食べる逃隠と抜刀。少しうつむき気味の主人公

「パクっ」

二人と同じく、タコ焼きを食べる。

「ん⁉ う、美味い!」

パァッと明るくなる。

「う――、美味いんじゃア――!」

「こいつぁ旨いタコ焼きだぜ!」

逃隠、抜刀もそれぞれタコ焼きを味わう。

「そうか、それは良かった。はふはふ」

タコ焼きに息を吹きかける爆破。

「パクっ」

タコ焼きを頬張る。

(うむ……イケるな)

爆破は少しタコ焼きを食べてから話し出す。

「さて、今回の本題に入ろう。今回の戦いは、ここ大阪の道頓堀川付近で行われる予想だ。その近辺はゴミなどが多く、汚れており、ゾムビーがもともと発生しやすい場所とされていた。特に最近になって、ゾムビーがよく出没しているらしい。狩人・関西支部の隊員が駆除にあたったが、敵の数も多く、死傷者が続出した様だ。そこで、我々関東支部の隊に要請があり、今回ここに集まったというわけだ……聞いていたのか? お前達……?」



「むしゃむしゃむしゃむしゃ」



一心不乱にタコ焼きを食べる逃隠、抜刀、主人公。



「んまァ!」「うめぇ!」「おいしい!」



呆れる爆破。

「…………おい、話を聞いていたのか?」

「わぁーってるよ! 最近ここいらで、ゾムビーがよく出てくるからそれを倒すんだろ?」

抜刀が食べながら言う。

「隊長! 我々の方は、今回の事前情報を頭に入れております!」

狩人の隊員が言う。

「……まぁいい。そろそろ行くぞ。ゴミは所定の場所に捨てるか、持ち帰るように!」







「ピロリ―ン! ピロリ―ン! ピロリ―ン! こちら大阪市です。緊急速報。緊急速報。中央区道頓堀付近で、ゾムビーが発生しました。お近くの住民は直ちに避難して下さい。繰り返します……」







爆破が言うのも束の間、市の緊急速報が辺り一帯に放送された。

「……現れたか。行くぞ! 道頓堀川沿いにヤツらは発生している可能性が高い! そちらへ向かう‼」



「ハイ!」



「おウ!」

「オウ!」



「ラジャー!」



爆破の号令に、主人公、逃隠と抜刀、狩人隊員達が返事する。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

回避とサイコとツトム外伝~後日談~

いぶさん
SF
地球は有限の世界だ。それに対し、宇宙は無限、無限に世界が広がっている。そのどこかで、主人公達と共に戦い、命を落とした者が酒を酌み交わしていた。 変わって地上では、回避とサイコとツトムの主人公、主人公ツトムが志望校合格に向けて受験勉強に勤しんでおり……。

回避とサイコとツトム外伝~ゾムビー~

いぶさん
SF
あの日、あの時――、これは人間からは理解されないであろうゾムビー側の、悪と決められた側の生物の物語。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

爆破スマシという女

いぶさん
SF
『回避とサイコとツトム』にて、一際目立った活躍を見せ殉職した女、爆破スマシ。 彼女の生い立ちや、最初で最後の恋、ゾムビーとの因縁。これは爆破がまだ狩人を立ち上げる前の、少女時代の彼女を描いた物語である。

Scnner Neatry

桃梨 夢大
SF
なんでも運送できる『スキャン運送屋』。今回の依頼は一筋縄ではいかないようで・・・・。

コード・ナイン

OSARAGI
SF
現代日本。 日本を取り巻く安全保障環境が混沌を増す中、日本国安全保障庁は人体と機械技術を結合させ人力を超えた強力な兵力を得るため、【サイボーグ・ウルトラ作戦】を実行する。 そんな中、被験者達の待遇への不満から被験者達は日本政府へ反旗を翻すこととなる。 日本政府を裏切り唯一脱出に成功した主人公は、日本に留まらず全世界を敵に回す事となった。 1人で世界と戦わなければならない孤独、 その悪魔の力故に人として生きれない絶望を描く。

回避とサイコとツトム_第六章 終幕

いぶさん
SF
 狩人は、はるかに大切なものを失った。失意の底に打ちひしがれる隊員達。そんな中、見つかる一枚の遺書。爆破が記した、『和解』の道。  そしてゾムビーの親玉を前にした主人公が出す、最後の答えとは……?  全六章の壮大な物語が、幕を閉じる。

回避とサイコとツトム_第五章 殺戮の終焉

いぶさん
SF
「ツトム! 私だ‼ アメリカへ飛ぶぞ‼‼‼」  爆破の一声から始まった、アメリカ渡航。未踏の地で主人公を待ち受けていた戦いとは……? そしてここで、一つの命が奪われ、大量殺戮が終焉を迎える。

処理中です...