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第四十五話 遺書

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『ゾムビーにも手を差し伸べる、共に歩んでいくという道もあるかも知れない。そこで具体的な方法を何か模索してくれないだろうか? 身体副隊長、サケル隊員、ツトム隊員、その他の隊員達でも構わない。何か策を考案して欲しい。そしてそれを実行に移し、ゾムビー達との戦いに、終止符を打ってくれ。私から言える事は以上だ。健闘を祈る』

身体は遺書を読み終え、続けて言う。

「と、内容はこういったモノだ。隊長の遺志を継ぎ、個人的には不本意だが、ゾムビー達と和解する方向で指揮を執って行く。そう、本当に不本意だがな……」



(回想)

河川敷をランニングしている身体。ふと、何かの気配に気付く。川の方を見るとそこには紫色をした、得体の知れない生物がたたずんでいた。

「! 何だコイツは!?」

その生物はじりじりとこちらへ近寄ってくる。

「ゾム……ゾム……」

「くっ来るなぁ!!」

怯える身体。



「……バースト」



「ボボン!」

得体の知れない生物は爆発するかのように弾け飛んだ。声のした方へと身体が顔を向ける。

「危なかったな、青年。もう大丈夫だ」

そこには、若かりし頃の爆破がいた。

「あ、貴女は?」

「ん? 私は爆破スマシ。ストレス解消と趣味で、さっきのような生物を駆除している者だ!」



「ケガの調子はどうだ? 副隊長」

爆破が問う。

「ええ、お陰様で、後はリハビリを残すのみとなりました。この通り、引っ付いています」

答え、手を動かして見せる身体。

「そうか……それは良かった。しかしまぁ、なんだ。クリスマスの夜と言うのに、お前はリハビリにトレーニングばかりなんだな……この後、食事にでも行かないか?」



「!!」



爆破の言葉に衝撃を受ける身体。

「何だ? 嫌か?」

「いいえ! 滅相もございません!」

爆破に咄嗟に言う身体。

「そうかそうか。じゃあ、30分後くらいに出発しよう。また後でな」



「まずは副隊長」

「は、ハイ……」

反応する身体。

「今まで私の右腕として良くついてきてくれたな、ありがとう」

「滅相もございません!」

「私にもしもの事があれば、この部隊を仕切ってくれるのはお前だ。宜しく頼むぞ」

「は……ハイ!!」

(回想終了)



(隊長……隊長の命を奪ったのはゾムビー。そのゾムビー達と、どうしても和解しようと言うのならば、私は私情を捨てて和解の道を歩んでいきます)

身体はひっそりと思うのだった。



「副隊長、スマシさんは……」

主人公は口を開いた。

「何だ? ツトム」

身体が問う。



(回想)

「さて、私は様々なゾムビーを倒してきた。時には同胞さえも……しかし、他の方法があったのではないかと、時々、思うんだ」

(回想終了)



「スマシさんは、ゾムビー化した人間だった人を、いいえ、元々ゾムビーだったゾムビーすら、殺すことをためらっていたのかもしれません。本当は嫌だったのかもしれません。だから……」

「今回、和解という指令を出してきた、と?」

主人公の言葉を遮って、言う身体。

「はい……!」

何か思いつく主人公。

「どうした? ツトム」

身体は問う。

「ゾムビーの発生源は、宇宙にあったウイルスなんですよね?」

「そうだ、それがどうかしたか?」

主人公に返す身体。

「和解の具体的方法として、あの石を、ロケットに載せてゾムビーの住処へ返すというのはどうでしょうか?」



「!」

「!!」



主人公の言葉に反応する身体と逃隠。

「そうか! ウイルスも石も、元は宇宙にあったゾムビー達の物。それを返すことで地球を襲わさせない様、協定を結ぶことが出来たら……!」

身体は声を上げて言う。

「はい……スマシさんの遺志も引き継いで、和解できる可能性があります」

「だい!」

主人公と逃隠は口々に言う。

「よし! 早速行動に移すぞ! あの石はここ、狩人ラボにはもう一つも有りはしない。急いでN州支部に連絡だ!」

身体の指示で、狩人隊員達が動き出す。





N州支部の者にビデオ通話するべく、準備を始める。モニターを通信用に切り替え、通話を始めた。

「How are you! Everyone」

通信がつながった様だった。身体は英語で対応する。

『もしもし、狩人副隊長の身体だ』

『oh! そちらからの連絡とは珍しいデスね』

『今回は、込み入って頼みがある』

N州支部の者に相談を持ち掛ける身体。

『? ナンでしょうか?』

『例の、ゾムビーの能力を高める石を、宇宙に還して欲しい』



『……』

『……』



暫くの間、沈黙が続いた。先に口を開いたのは支部の者だった。



『何故デショウか?』



身体は返す。

『ゾムビー達と、和解するためだ』

『……』

再び黙り込むN州支部の者。遂には口を開く。

『……何でデスカ?』



「!」



その表情は酷い憤りを感じていた為か、非常に険しいものだった。

『今まで戦ってきた敵と! どうやって和解しろと!? これまでに数万人の被害者を出してきた敵が! そんなことで攻撃の手を緩めるとでも! 本気で思っているのデスか!?』

N州支部の者の言葉をしっかりと聞いた上で、身体は口を開く。

『まず、事の発端から考えるんだ』



『!?』



虚を突かれるN州支部の者。身体は続ける。

『ゾムビーが地球に発生し始めたのは、我々地球人が宇宙に足を踏み入れて、ゾムビーのウイルスを地球に持ち帰ったからだ。違うか?』

『そ、……ソレは……』

『その時にあの石も数個持ち帰ったのだろう。ゾムビーが地上に発生した原因は、明らかに人間側にある』

『ぐ……ぐぬぬ』

支部の者はぐうの音も出ない様子だった。更に身体は続ける。

『それを、攻撃して来たから攻撃し返すでは筋が通らないだろう』

『それで、こちらから謝り、下手に出る、と言うのデスか……?』

『そうだ。和解の道はそこから以外ない』

N州支部の者の質問に淡々と答える身体。



(会話の全ては英語だからラ分からないけど、副隊長が上手に回っている事は分かる!)

主人公はそっと思う。

『そうデスか……。それでヤツらが和解に応じてくるという確証はあるのデスか?』

支部の者の質問に再び答える身体。

『それは分からない。しかし、こちらの隊長、そしてそちらのエース隊員を失った今、ヤツらゾムビー達を再び宇宙で迎え撃つ事が出来る可能性の方が、低いのでは?』

『! ……。分かりマシタ。しかし試すのは一回だけデスよ?』

『今回の申し出に、応じてくれるのか!?』

『……ハイ』



「グッ」



拳を握る身体。その様子を見ていた主人公と逃隠。

「副隊長!」

「副隊長ォオオ!!」



「スッ」



飛びつきそうな二人を右手で制止する。

『石を宇宙へ送る具体的な方法についてだが、ゾムビー達がそれに気付いてくれないと話にならないな』

『そうデスねー。無人ロケットに入れて飛ばすのが安全策デスガ……』





すると――、



「バチバチッ……ジー、ジー」

通信回路に異変が。



「!」

「!!」

「!?」



身体、逃隠、そして主人公が異変に反応した。

「ジー、ジー」

通信回路が安定してきた。







『!! !! !?』







一同が驚愕する。何と、モニターにはかつて見た、ゾムビーの親玉が映っていたのだ。

『ヤア、久シブリダナ、諸君』

親玉は語り掛けてきた。





「お! お前は!!」





主人公が叫ぶ。



「スッ」



それを身体は右手で制止させた。

「久しぶりだな、何の用だ? まさか先程の話を聞いていたのか?」



『ソノマサカダ』
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