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第三十二話 談笑
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羽田空港、飛行機内にて――、
「ツトム、ところであの女性との仲はどうなんだ?」
爆破が話をふる。
「え……まぁ、上手くやってます。そうだ、連絡しておこう」
急な展開に驚くが、淡々と返す主人公。尾坦子に何か連絡する様だ。
「急でゴメン、狩人の任務で、アメリカに行きます、と」
「ツトム」
「ハッ!!」
急に近づく爆破。
「馬鹿正直は馬鹿を見るぞ」
「えっ?」
「それと、カッコつけないと格好悪いんだ」
「は……ハイ。覚えておきます」
知らぬ間に離陸していた飛行機は、アメリカ・サンフランシスコへ飛ぶ。
「本日はこの飛行機をご利用いただき、誠にありがとうございます」
機内アナウンスが聞こえる。
(ああ、日本が離れていく。本当にアメリカへ行くんだ……)
頭を抱える主人公。
「おオ! 雲より上にいるんだい‼」
逃隠が叫ぶ。
「サケル君、修学旅行の時と同じことを……」
主人公は軽くツッコむ。
「ハハ、サケルは元気が良いな。私や副隊長は任務で乗る事も多いので、もう慣れている」
爆破は機嫌良く話す。
「さて、ここでもう一つ」
「?」
「?」
爆破の突然の言葉に虚を突かれる主人公と逃隠。
「世間は狭くて、世界は広いんだ」
『せっ……世間? 世界?』
主人公と逃隠は声をそろえて問う。
「そうだ。世間は人で、世界はモノだ。この前、とある日の夜に、コンビニでセツナに似た人物に出会ってな。その時思ったんだ。この国でもまだ行った事の無い場所がある。しかしそんな場所でも、似たような人間に出くわすのかもな、と……もっとも、この国の外にだって行った事の無い場所で溢れていて、どの様な出会いが待っているかも分からないのだがな」
「アイつ……」
「セツナさん……」
感傷に浸る逃隠と主人公。続けて爆破は言う。
「なぁツトム。人は忘れてしまう動物か、若しくは忘れることができる動物なのか、どちらだと思う?」
「えっと、それは……」
動揺する主人公。
「私は後者だと思う」
「!」
爆破の言葉に、反応する主人公。
「お通夜等で親族が死んだのに大人たちが笑いながら酒を飲んでいるのは恐らく、その人が死んでしまったという悲しみを忘れて、楽しかった時だけを思い出せているからなのだと、私は考える」
「な、なるほど!(そんなコト、考えもしなかった。この旅で、得るものは大きいかも……)」
主人公は静かに思う。
「あ、アイつとの楽しかった思い出なんて、無いんだい!」
強がる逃隠。優しく笑いながら爆破は言う。
「そうか? 大阪で一緒に呑んだ時は、二人は楽しそうだったぞ?」
「ソ……そんなコト無いんだい!」
更に強がる逃隠。
「そうか……それにしても、副隊長は一言も話さんな。具合でも悪いのか……?」
どーんと構える身体。それを見る一同。
「ぷっ、ふふ」
「ハハ!」
「あはハ!」
「ハハハハハハハ‼」
主人公、爆破、逃隠と順に笑い、笑いに包まれる一同。腕を組みながら身体は言う。
「特に、体調に不具合はありません」
「ハハ! もう、よせ! 副隊長は相変わらず堅物だな」
「フ、副隊長、腹筋が痛いんだい!」
爆破、逃隠は言いながら笑う。
「はは……」
主人公もつられて笑う。
誰もがこの時は知らなかった。この旅が、どんなモノになるかなど――。
暫くして爆破が口を開く。
「さて、今回の旅についてだが、――危ない橋と言った具合になりそうだな。果たして渡り切れるだろうか……」
「え……?」
主人公は呆気に取られる。
「スマシさん。今、何て?」
「いや、悪い。何でもない」
明らかに動揺している爆破。それを見る身体は思う。
(隊長……もしもの事があれば――私が……)
一行は食事を始めた。身体は魚を食べていた。それに気付く爆破。
「ほう、副隊長は魚を選んだんだな」
「はい……肉よりも好きでして……」
爆破に返す身体。ここで爆破が話を始めた。
「ここで小話でもするかな。肉や魚になぜ筋や骨があるのか、食事というキーワードを基にひも解いてみよう」
「え?」
「何だ何ダ?」
虚を突かれる主人公と逃隠。話を続ける爆破。
「それら筋や骨が入っていたら取り除かなければ食べられない。そこで箸が止まる。高級レストランでは箸が止まらない。何故なら、出てくる料理は最初から筋や骨が取り除いているからだ。そこでだ、老舗の料理店ではたまに筋や骨を料理に残している場合がある。何故か分かるか?」
「はーいはーイ!」
逃隠が手を上げる。
「サケル、分かったのか?」
「意味が分からないんだい!」
「……」
「……」
「まぁいい、話を続けるぞ」
気を取り直して話を続ける爆破。
「何度も言うが、それら筋や骨を取り除いている時に箸が止まる。それは、箸が止まるようにしている理由が、会話をするためだからではないだろうか?」
「あ!」
「!」
「高級料理店では筋や骨を取り除く時間はないが、同時に会話している時間も少ない。しかし、先ほど言った様な老舗の料理店ではそれら二つを取り除く時間があり、箸が止まった分、会話する時間が生まれる。そして人は食事を摂りながら会話をするのではないだろうか?」
「いつもながら、素晴らしい考察です」
身体は爆破に称賛の言葉を発する。
「なぁに、それ程の事では無いさ」
爆破はあっけらかんとしていた。
(なるほど! 少し難しい話だったけど、的を射る、面白い話だ……! 今回の旅ではこんな形で色々な話が聞けるかも知れない!)
「流石だい! 隊長‼(サッパリだったけど、副隊長が褒めているんだから正しい話のハズだい!)」
主人公は理解し、興味を持った。
逃隠は理解せず、お世辞を並べた。
「おっと、話している内に食べるのが遅くなってしまっているな。ここからは話を止めて、食べる方に集中だ」
一行はそれぞれに食事に集中し、全員が食事をし終わった。
「隊長、腹ごしらえが済んだので、ツトムとサケルに仮眠を摂らせようと思うのですが、いかがでしょうか?」
「そうだな、仮眠を摂らせる事としよう」
身体の申し出に答える爆破。
(あー良かった。9時間もどう過ごすのかと思ってたよ)
安堵の表情を見せる主人公。
「待てよ」
「ゴソゴソ」
爆破が持っていたポーチから何かを持ち出す。
「あった。これだ」
それはアイマスクだった。
「人数分用意してある。各々で使え」
さらりと言う爆破。
(準備良すぎでしょ、スマシさん……。てか、全部あのポーチに入れるとか……中身どうなっているんだろうか……?)
主人公は疑問に思う。一行は全員、アイマスクを付けて仮眠を摂り始めた。7時間が過ぎただろうか――、爆破は目を覚ました。
(周りに寝ている客もいるな。それなら……)
爆破は隣にいる隊員や主人公達をゆすって起こした。そして、起きたら自分の隣に居る隊員を起こす様指示を出した。そうこうしているうちに、狩人一行は全員目を覚ました。
「よし、二度目の食事を済ましたら、着陸の準備をするように!」
爆破は指示を出す。
「ラジャー」
隊員達も答える。二度目の食事を摂る一行。
「USA! USA!」
ノリノリな逃隠。
(ああ、あと数時間でアメリカに……この旅って一体どうなってしまうんだろうか……)
一人、不安に喘ぐ、主人公であった。
「ツトム、ところであの女性との仲はどうなんだ?」
爆破が話をふる。
「え……まぁ、上手くやってます。そうだ、連絡しておこう」
急な展開に驚くが、淡々と返す主人公。尾坦子に何か連絡する様だ。
「急でゴメン、狩人の任務で、アメリカに行きます、と」
「ツトム」
「ハッ!!」
急に近づく爆破。
「馬鹿正直は馬鹿を見るぞ」
「えっ?」
「それと、カッコつけないと格好悪いんだ」
「は……ハイ。覚えておきます」
知らぬ間に離陸していた飛行機は、アメリカ・サンフランシスコへ飛ぶ。
「本日はこの飛行機をご利用いただき、誠にありがとうございます」
機内アナウンスが聞こえる。
(ああ、日本が離れていく。本当にアメリカへ行くんだ……)
頭を抱える主人公。
「おオ! 雲より上にいるんだい‼」
逃隠が叫ぶ。
「サケル君、修学旅行の時と同じことを……」
主人公は軽くツッコむ。
「ハハ、サケルは元気が良いな。私や副隊長は任務で乗る事も多いので、もう慣れている」
爆破は機嫌良く話す。
「さて、ここでもう一つ」
「?」
「?」
爆破の突然の言葉に虚を突かれる主人公と逃隠。
「世間は狭くて、世界は広いんだ」
『せっ……世間? 世界?』
主人公と逃隠は声をそろえて問う。
「そうだ。世間は人で、世界はモノだ。この前、とある日の夜に、コンビニでセツナに似た人物に出会ってな。その時思ったんだ。この国でもまだ行った事の無い場所がある。しかしそんな場所でも、似たような人間に出くわすのかもな、と……もっとも、この国の外にだって行った事の無い場所で溢れていて、どの様な出会いが待っているかも分からないのだがな」
「アイつ……」
「セツナさん……」
感傷に浸る逃隠と主人公。続けて爆破は言う。
「なぁツトム。人は忘れてしまう動物か、若しくは忘れることができる動物なのか、どちらだと思う?」
「えっと、それは……」
動揺する主人公。
「私は後者だと思う」
「!」
爆破の言葉に、反応する主人公。
「お通夜等で親族が死んだのに大人たちが笑いながら酒を飲んでいるのは恐らく、その人が死んでしまったという悲しみを忘れて、楽しかった時だけを思い出せているからなのだと、私は考える」
「な、なるほど!(そんなコト、考えもしなかった。この旅で、得るものは大きいかも……)」
主人公は静かに思う。
「あ、アイつとの楽しかった思い出なんて、無いんだい!」
強がる逃隠。優しく笑いながら爆破は言う。
「そうか? 大阪で一緒に呑んだ時は、二人は楽しそうだったぞ?」
「ソ……そんなコト無いんだい!」
更に強がる逃隠。
「そうか……それにしても、副隊長は一言も話さんな。具合でも悪いのか……?」
どーんと構える身体。それを見る一同。
「ぷっ、ふふ」
「ハハ!」
「あはハ!」
「ハハハハハハハ‼」
主人公、爆破、逃隠と順に笑い、笑いに包まれる一同。腕を組みながら身体は言う。
「特に、体調に不具合はありません」
「ハハ! もう、よせ! 副隊長は相変わらず堅物だな」
「フ、副隊長、腹筋が痛いんだい!」
爆破、逃隠は言いながら笑う。
「はは……」
主人公もつられて笑う。
誰もがこの時は知らなかった。この旅が、どんなモノになるかなど――。
暫くして爆破が口を開く。
「さて、今回の旅についてだが、――危ない橋と言った具合になりそうだな。果たして渡り切れるだろうか……」
「え……?」
主人公は呆気に取られる。
「スマシさん。今、何て?」
「いや、悪い。何でもない」
明らかに動揺している爆破。それを見る身体は思う。
(隊長……もしもの事があれば――私が……)
一行は食事を始めた。身体は魚を食べていた。それに気付く爆破。
「ほう、副隊長は魚を選んだんだな」
「はい……肉よりも好きでして……」
爆破に返す身体。ここで爆破が話を始めた。
「ここで小話でもするかな。肉や魚になぜ筋や骨があるのか、食事というキーワードを基にひも解いてみよう」
「え?」
「何だ何ダ?」
虚を突かれる主人公と逃隠。話を続ける爆破。
「それら筋や骨が入っていたら取り除かなければ食べられない。そこで箸が止まる。高級レストランでは箸が止まらない。何故なら、出てくる料理は最初から筋や骨が取り除いているからだ。そこでだ、老舗の料理店ではたまに筋や骨を料理に残している場合がある。何故か分かるか?」
「はーいはーイ!」
逃隠が手を上げる。
「サケル、分かったのか?」
「意味が分からないんだい!」
「……」
「……」
「まぁいい、話を続けるぞ」
気を取り直して話を続ける爆破。
「何度も言うが、それら筋や骨を取り除いている時に箸が止まる。それは、箸が止まるようにしている理由が、会話をするためだからではないだろうか?」
「あ!」
「!」
「高級料理店では筋や骨を取り除く時間はないが、同時に会話している時間も少ない。しかし、先ほど言った様な老舗の料理店ではそれら二つを取り除く時間があり、箸が止まった分、会話する時間が生まれる。そして人は食事を摂りながら会話をするのではないだろうか?」
「いつもながら、素晴らしい考察です」
身体は爆破に称賛の言葉を発する。
「なぁに、それ程の事では無いさ」
爆破はあっけらかんとしていた。
(なるほど! 少し難しい話だったけど、的を射る、面白い話だ……! 今回の旅ではこんな形で色々な話が聞けるかも知れない!)
「流石だい! 隊長‼(サッパリだったけど、副隊長が褒めているんだから正しい話のハズだい!)」
主人公は理解し、興味を持った。
逃隠は理解せず、お世辞を並べた。
「おっと、話している内に食べるのが遅くなってしまっているな。ここからは話を止めて、食べる方に集中だ」
一行はそれぞれに食事に集中し、全員が食事をし終わった。
「隊長、腹ごしらえが済んだので、ツトムとサケルに仮眠を摂らせようと思うのですが、いかがでしょうか?」
「そうだな、仮眠を摂らせる事としよう」
身体の申し出に答える爆破。
(あー良かった。9時間もどう過ごすのかと思ってたよ)
安堵の表情を見せる主人公。
「待てよ」
「ゴソゴソ」
爆破が持っていたポーチから何かを持ち出す。
「あった。これだ」
それはアイマスクだった。
「人数分用意してある。各々で使え」
さらりと言う爆破。
(準備良すぎでしょ、スマシさん……。てか、全部あのポーチに入れるとか……中身どうなっているんだろうか……?)
主人公は疑問に思う。一行は全員、アイマスクを付けて仮眠を摂り始めた。7時間が過ぎただろうか――、爆破は目を覚ました。
(周りに寝ている客もいるな。それなら……)
爆破は隣にいる隊員や主人公達をゆすって起こした。そして、起きたら自分の隣に居る隊員を起こす様指示を出した。そうこうしているうちに、狩人一行は全員目を覚ました。
「よし、二度目の食事を済ましたら、着陸の準備をするように!」
爆破は指示を出す。
「ラジャー」
隊員達も答える。二度目の食事を摂る一行。
「USA! USA!」
ノリノリな逃隠。
(ああ、あと数時間でアメリカに……この旅って一体どうなってしまうんだろうか……)
一人、不安に喘ぐ、主人公であった。
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