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第二十三話 本拠地襲来

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――翌朝、主人公達が泊まったホテルにて。

「よーし! 皆居るか? ホテルを出るぞ」

1階ロビー。狩人隊員たち全員が帰る支度をしていた。

「!」

主人公が何かに気付く。

「スマシさーん! ちょっと、時間下さい!」

遠目から爆破に頼み込む。

「ん? 何だツトム。5分以内にしろよ」

「はーい!」

爆破に返す主人公。そのまま、お土産コーナーに立ち寄った。

(……これにしよう!)

主人公はタコ焼きさんと言うタコ焼きをモチーフにしたキャラクターのキーホルダーを購入した。

「すみませんでしたー」

走って玄関まで来る主人公。

「何かと思えば、お土産か、ツトム。誰にあげるんだ?」

爆破が問う。

「えへへ、内緒です」

主人公は答えなかった。

「ファアアン!」

新幹線は行く。大阪からK県へ向け、ひた走る。



――数日後、狩人ラボにて。主人公がいつものように認証キーを入り口で使い、ラボに入った。手には大阪でのお土産を握りしめている。

「ウィ――ン」

とある部屋へ辿り着いた。研究室である。

「お疲れ様です」

主人公は研究員に挨拶する。

「ああ、お疲れ」

研究員は挨拶を返す。主人公は部屋の奥、ガラス張りの場所へと歩いていく。

「あ! ツトム君!」

尾坦子が気付く。

「尾坦子さん! こんにちは!」

「こんにちは」

二人は挨拶を交わす。

「今日は、渡したい物があって……」

手にしていたお土産の袋を開ける主人公。

「何かしら?」

尾坦子は興味津々の様だ。

「じゃじゃーん! キーホルダー! この前、大阪に行ってきて、そこで買ったんだ」

タコ焼きさんを見せる主人公。

「ふふ! カワイイ! ……でも、この中に入れられないよ? あと、私が手にしたら、溶けちゃうかも知れないし……」

少し表情を濁らせる尾坦子。

「ふっふっふ。そこでね」

ガサガサとカバンから何か取り出す主人公。

「これ! メタルフック」

百均の小さなフックを取り出す主人公。

「あら!」

驚く尾坦子。

「これをガラスに付けて、と……こうすれば、飾ることができるでしょ!」

主人公はフックをガラスに張り付けて、尾坦子に見えるようにタコ焼きさんをフックに吊るした。

「わぁ……ナイスアイデア!」

尾坦子は上機嫌の様だ。

「研究員の方、ここにコレを飾ってても大丈夫ですか?」

主人公は研究員に問う。

「ああ、内部に影響が無い様だからいいよ」

「ありがとうございます!」

主人公は研究員に返す。

「ありがと、ツトム君」

主人公に礼を言う尾坦子。

「喜んでくれて、嬉しいよ」

「またどこか行ったら、何か買って来てね!」

「ははは……(結構欲しがりなんだ、尾坦子さん……)」

少しばかりたじろぐ、主人公であった。



大阪の戦いから数カ月が経ち――、冬。

クリスマスや大晦日、お正月など、主人公達に束の間の休息となった年末年始となった。そして一月、二月と日本でのゾムビーの発生事例は減り、狩人の活動も穏やかになっていた。まるで何かが起こる前触れの静けさの様に。



宇宙――。

『愚カナル人間共メ。マズハ日本トイウ小国カラ、潰シテイクトスルカ。ヤツラノ本拠地ヲ、制圧スル』

ゾムビーの親玉は何かを起こす為、日本に潜んでいるゾムビーに呼び掛ける。

『我ガ同胞達ヨ……石ノチカラヲ……全力デ使ッテモ構ワナイ! イケ!! 同胞達ヨ!!!!』



そして四月が過ぎようとしていた頃――、

狩人ラボ、とある廊下。狩人隊員がケースの様なモノを運んでいる。

(例の宝石、こんなに持って次の実験室に移動……か。研究の成果とやらはでるのかねぇ)

隊員の一人が、心の中で愚痴をこぼしている。

「っと、なーんか気になっちまうな。おい、ちょっとここで、中身がしっかりあるか確認するぞ」

「了解。手短にな」

成り行きでケースの中身を確認する事となった。

「パカ……」

中身を確認する。

「1個、2個……よし、全部あるな。それにしても……良く光ってら、不気味なもんだぜ」

何の気なしに宝石を手に取る。

(これを他の石から離してみれば光らなくなるんだよな)

そう思っていたその時、



「ストン! カッカッ……カラン!」



宝石は隊員の手からするりと落ち、跳ねたあと廊下の溝に入っていった。

「いっけね!」

「おい、何をしているんだ! 上にバレたら懲罰モノだぞ」

「悪い悪い、すぐ見つけるから、内密に、な」

「……全く」

宝石を落とした隊員は、溝に手をやる。

(この辺か? ……)

溝は思いの外深く、なかなか手が届かない。

「おい、早くしろ」

「まぁまぁ、そう怒るなよ。今に見つかるって」

ゴソゴソと手を動かす。



「ピチャ」



「ぴちゃ?」

手に湿った何かが触れた。瞬間、





「ゾゾォオオ‼」





「緊急警報! 緊急警報! ゾムビーが発生しました。発生区域は……ここ、狩人ラボです! 第4研究室付近を中心に、ゾムビーが現れたと見られます」



爆破自室。手を顔の前で組んでいる爆破。

「本拠地襲来とは、随分と派手な真似を」

ふと、窓の外に目が行く。

「! 何だと……外にも……そして、この数は……!」

「ゾゾォ」

「ゾム」

「ゾゾゾ」

ラボの外ではラボに向かう数十のゾムビー達が。



「緊急警報! 緊急警報! ゾムビーを新たに確認! 数十体のゾムビー達が、ここ狩人ラボに向かってきています!」



抜刀、逃隠、そして主人公へと爆破から連絡が入る。

「緊急の招集命令だ。招集場所はここ、狩人ラボ。ゾムビーが、我々の本拠地である狩人ラボに、わざわざ出向いてくれたようだ」

爆破の表情は決して冷静ではなかった。

「はい、分かりました」

「ピッ」

携帯を切り、狩人ラボに向かう主人公。

(どうなるんだろう? 狩人ラボが襲われるなんて、過去にあったんだろうか……!)

ハッとなる主人公。

(ラボには、……尾坦子さんも!)



――狩人ラボ内、爆破が指示を出している。

「非戦闘員は武器庫へ避難しろ!」

(マズいな……第4研究室付近以外に、外からも敵が……。研究室付近だけでも、恐らく隊員の射的能力を持ったゾムビーが居るため厄介なのに……)



「隊長!」



身体が現れた。

「只今参りました! 前線へ出てゾムビーと対処致しましょうか!?」

「いや……」

爆破は申し出を拒否する。

「副隊長は主力の隊員の中でもこのラボの造りを良く知っている。その為安全な場所が頭に入っているはずだ。非戦闘員の非難の補助を頼む」

「ハッ!! 分かりました!!」

爆破の指示を受け入れる身体。

「研究室付近のゾムビーは私が駆除する! 戦闘員の半分は正面入り口前の群集に対処してくれ!」

「ラジャー」

狩人は戦闘態勢に入った。



――、

「ツカ……ツカ……ツカ!」

爆破は第4研究室に続く廊下に辿り着いた。

「やはり、――か」

爆破の前には銃器を持ったゾムビーが4体、立ちふさがっていた。

(隊員が数名やられたか。と、いう事は……)

銃器を構える2体のゾムビー。



「カチャ」



「すっ」

爆破は左手を差し伸べる。



「タタタタタタタタ!」



「バチン!」

ゾムビーの発砲と共に指を弾く爆破。



「ボッ! ボッ! ボッ!」



(もちろん、銃器を使ってくるな)

銃弾は爆破によって爆破された。

「……お返しだ、バースト!!」





「ボボンッ!!!!」
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