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第四節 思い出話

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「覚えているか? 好実」

「?」

宇宙のどこかで、爆破が杉田に話し掛ける。

「お前がゾムビー化した時の事だ。あれは2014年の事だっただろうか? あれからもうすぐ16年経ち、2030年を迎える事になるな。私は約束通り、お前より長生きして、お前を苦しめたりはしなかったぞ」

「はは、そうだったね」

「しかし私は、お前を亡くして随分と苦しんだんだぞ? 今日日会えるまで、ずっとお前に会いたかった。ずっと待っていたんだぞ?」

「それは俺もだよ」

「!?」

「人間、死ねばそれまでで、何も残らないと思っていた。でも、魂は残り、ココロだけは生き続ける。もしかしたらスマシに会えるかもしれない。そう希望をもってここに居たよ。それに、忘れちゃったのかい?」

「!」



(回想)



『やあ。手こずってるね、スマシ』



どこからともなく、声が聞こえてきた。

「この声は……好実……?」

(回想終了)



「あ……あの時……」

ニッと杉田は笑顔になった。



(回想)

「何で……? 好実……! 好実なのか……!?」

『彼女がピンチなんだ。彼氏が助けに来て、当然だろ?』

そして次第にうっすらと杉田の姿が、爆破の目に映ってきた。

「! 好実!!」

爆破は杉田に触れたかった。手を握り、抱きしめたかった。口づけをしたかった。ゾムビーさえ居なければ――。



目には涙が溢れていた。

『おっと、泣いていたら敵は倒せないよ、スマシ』

「あ……ああ、分かった」

涙を拭う。

『あの海でのコトを思いだすんだ……初めてゾムビー狩りに行った、あの海でのコトを――』

「! あの日……あの海……」

『スマシ……』

杉田は爆破の左手に、手を重ねた。

『呼吸を、落ち着かせて……』

爆破は呼吸を整える。

『相手を、よく見て……今までよりも、より力を込めて……』

「ゾゾ……」

近付いて来るゾムビー。

『今だ!!』





「バースト!!」







「ボッガァアア!!」







大爆発が起きた。ゾムビーは大破し、そこには地面に焦げた跡だけが残った。

「ッハァ……ハァ……好実、やったぞ!」

『さっすがスマシちゃんだ。それと、助けられて良かった』

「好実……」

『おっと、時間だ。もう行かなきゃ……今日の日の事を覚えておいてよ、スマシ。多分、これっきりしか会えない。サヨナラだ。じゃあ……』

「好実! 待って……!!」

(回想終了)



「た……確かに、16年ずっと待っていた訳ではなかったな。あの時は助けてもらった。感謝している」

「だろ? 俺の会いたいっていう気持ちはそれだけ強かったんだよ」

「! ……」

爆破は少し顔を赤くした。そしてすぐ冷静になり、口を開いた。

「それなら、以前好きだった者とも会えたのか?」

「うーん、会ったと言えば会ったかな」

「! 何か話でもしたのか!?」

「まぁそうがっつくなよ。今はスマシが一番大好きだから、心配しなくてもだいじょーぶだよ」

「別に! 心配などしていない!!」

「じゃあ嫉妬している?」

「嫉妬もしていない!!」

「はは、そっか。まあ会って、とりとめのない話をしてすぐに別れたよ。元気そうだったね。それに、昔の気持ちも伝えなかった」

「はぁー」

安心し、溜め息をつく爆破。

「安心したかい?」

「馬鹿者! 何も安心などしていないわ!!」

ニッと笑って杉田は続ける。

「それにしても、こっちの時間と、人間の時間は差があってね、気付いたかもしれないけど、生きている時間の何倍も死んだ後の体感時間は長く感じるんだ。そう思えば、こっちの方がスマシを待っていたコトになるね。離れ離れになって俺を苦しめないと約束していたのに、結果的に俺の方が我慢することになっちゃったよ」

「それは死んでみないと分からん事だったから仕方なかろう!」

「はは、まぁそうだね。それにしても――、」



「?」



「また会えて、本当に良かった……」

「! ……」

顔を赤らめる爆破。そこへ――、

「へーい、隊長!」

『人間ヨ……』

抜刀とゾムビーの親玉が一升瓶を持って近付いて来た。



「!?」

「!!」



抜刀が完全に泥酔状態で話し掛けてくる。

「コイツが意外とイケる口でよう。酒が進んで滝の様に飲んじまったぜぇー。ひっく」

『酒トイウノカ……コノ飲ミ物ハ……奇妙ダガ癖ニナルナ……』





(なんか打ち解けちまってるんですけど――!)





爆破と杉田は驚愕した。



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