4 / 12
第四節 思い出話
しおりを挟む
「覚えているか? 好実」
「?」
宇宙のどこかで、爆破が杉田に話し掛ける。
「お前がゾムビー化した時の事だ。あれは2014年の事だっただろうか? あれからもうすぐ16年経ち、2030年を迎える事になるな。私は約束通り、お前より長生きして、お前を苦しめたりはしなかったぞ」
「はは、そうだったね」
「しかし私は、お前を亡くして随分と苦しんだんだぞ? 今日日会えるまで、ずっとお前に会いたかった。ずっと待っていたんだぞ?」
「それは俺もだよ」
「!?」
「人間、死ねばそれまでで、何も残らないと思っていた。でも、魂は残り、ココロだけは生き続ける。もしかしたらスマシに会えるかもしれない。そう希望をもってここに居たよ。それに、忘れちゃったのかい?」
「!」
(回想)
『やあ。手こずってるね、スマシ』
どこからともなく、声が聞こえてきた。
「この声は……好実……?」
(回想終了)
「あ……あの時……」
ニッと杉田は笑顔になった。
(回想)
「何で……? 好実……! 好実なのか……!?」
『彼女がピンチなんだ。彼氏が助けに来て、当然だろ?』
そして次第にうっすらと杉田の姿が、爆破の目に映ってきた。
「! 好実!!」
爆破は杉田に触れたかった。手を握り、抱きしめたかった。口づけをしたかった。ゾムビーさえ居なければ――。
目には涙が溢れていた。
『おっと、泣いていたら敵は倒せないよ、スマシ』
「あ……ああ、分かった」
涙を拭う。
『あの海でのコトを思いだすんだ……初めてゾムビー狩りに行った、あの海でのコトを――』
「! あの日……あの海……」
『スマシ……』
杉田は爆破の左手に、手を重ねた。
『呼吸を、落ち着かせて……』
爆破は呼吸を整える。
『相手を、よく見て……今までよりも、より力を込めて……』
「ゾゾ……」
近付いて来るゾムビー。
『今だ!!』
「バースト!!」
「ボッガァアア!!」
大爆発が起きた。ゾムビーは大破し、そこには地面に焦げた跡だけが残った。
「ッハァ……ハァ……好実、やったぞ!」
『さっすがスマシちゃんだ。それと、助けられて良かった』
「好実……」
『おっと、時間だ。もう行かなきゃ……今日の日の事を覚えておいてよ、スマシ。多分、これっきりしか会えない。サヨナラだ。じゃあ……』
「好実! 待って……!!」
(回想終了)
「た……確かに、16年ずっと待っていた訳ではなかったな。あの時は助けてもらった。感謝している」
「だろ? 俺の会いたいっていう気持ちはそれだけ強かったんだよ」
「! ……」
爆破は少し顔を赤くした。そしてすぐ冷静になり、口を開いた。
「それなら、以前好きだった者とも会えたのか?」
「うーん、会ったと言えば会ったかな」
「! 何か話でもしたのか!?」
「まぁそうがっつくなよ。今はスマシが一番大好きだから、心配しなくてもだいじょーぶだよ」
「別に! 心配などしていない!!」
「じゃあ嫉妬している?」
「嫉妬もしていない!!」
「はは、そっか。まあ会って、とりとめのない話をしてすぐに別れたよ。元気そうだったね。それに、昔の気持ちも伝えなかった」
「はぁー」
安心し、溜め息をつく爆破。
「安心したかい?」
「馬鹿者! 何も安心などしていないわ!!」
ニッと笑って杉田は続ける。
「それにしても、こっちの時間と、人間の時間は差があってね、気付いたかもしれないけど、生きている時間の何倍も死んだ後の体感時間は長く感じるんだ。そう思えば、こっちの方がスマシを待っていたコトになるね。離れ離れになって俺を苦しめないと約束していたのに、結果的に俺の方が我慢することになっちゃったよ」
「それは死んでみないと分からん事だったから仕方なかろう!」
「はは、まぁそうだね。それにしても――、」
「?」
「また会えて、本当に良かった……」
「! ……」
顔を赤らめる爆破。そこへ――、
「へーい、隊長!」
『人間ヨ……』
抜刀とゾムビーの親玉が一升瓶を持って近付いて来た。
「!?」
「!!」
抜刀が完全に泥酔状態で話し掛けてくる。
「コイツが意外とイケる口でよう。酒が進んで滝の様に飲んじまったぜぇー。ひっく」
『酒トイウノカ……コノ飲ミ物ハ……奇妙ダガ癖ニナルナ……』
(なんか打ち解けちまってるんですけど――!)
爆破と杉田は驚愕した。
「?」
宇宙のどこかで、爆破が杉田に話し掛ける。
「お前がゾムビー化した時の事だ。あれは2014年の事だっただろうか? あれからもうすぐ16年経ち、2030年を迎える事になるな。私は約束通り、お前より長生きして、お前を苦しめたりはしなかったぞ」
「はは、そうだったね」
「しかし私は、お前を亡くして随分と苦しんだんだぞ? 今日日会えるまで、ずっとお前に会いたかった。ずっと待っていたんだぞ?」
「それは俺もだよ」
「!?」
「人間、死ねばそれまでで、何も残らないと思っていた。でも、魂は残り、ココロだけは生き続ける。もしかしたらスマシに会えるかもしれない。そう希望をもってここに居たよ。それに、忘れちゃったのかい?」
「!」
(回想)
『やあ。手こずってるね、スマシ』
どこからともなく、声が聞こえてきた。
「この声は……好実……?」
(回想終了)
「あ……あの時……」
ニッと杉田は笑顔になった。
(回想)
「何で……? 好実……! 好実なのか……!?」
『彼女がピンチなんだ。彼氏が助けに来て、当然だろ?』
そして次第にうっすらと杉田の姿が、爆破の目に映ってきた。
「! 好実!!」
爆破は杉田に触れたかった。手を握り、抱きしめたかった。口づけをしたかった。ゾムビーさえ居なければ――。
目には涙が溢れていた。
『おっと、泣いていたら敵は倒せないよ、スマシ』
「あ……ああ、分かった」
涙を拭う。
『あの海でのコトを思いだすんだ……初めてゾムビー狩りに行った、あの海でのコトを――』
「! あの日……あの海……」
『スマシ……』
杉田は爆破の左手に、手を重ねた。
『呼吸を、落ち着かせて……』
爆破は呼吸を整える。
『相手を、よく見て……今までよりも、より力を込めて……』
「ゾゾ……」
近付いて来るゾムビー。
『今だ!!』
「バースト!!」
「ボッガァアア!!」
大爆発が起きた。ゾムビーは大破し、そこには地面に焦げた跡だけが残った。
「ッハァ……ハァ……好実、やったぞ!」
『さっすがスマシちゃんだ。それと、助けられて良かった』
「好実……」
『おっと、時間だ。もう行かなきゃ……今日の日の事を覚えておいてよ、スマシ。多分、これっきりしか会えない。サヨナラだ。じゃあ……』
「好実! 待って……!!」
(回想終了)
「た……確かに、16年ずっと待っていた訳ではなかったな。あの時は助けてもらった。感謝している」
「だろ? 俺の会いたいっていう気持ちはそれだけ強かったんだよ」
「! ……」
爆破は少し顔を赤くした。そしてすぐ冷静になり、口を開いた。
「それなら、以前好きだった者とも会えたのか?」
「うーん、会ったと言えば会ったかな」
「! 何か話でもしたのか!?」
「まぁそうがっつくなよ。今はスマシが一番大好きだから、心配しなくてもだいじょーぶだよ」
「別に! 心配などしていない!!」
「じゃあ嫉妬している?」
「嫉妬もしていない!!」
「はは、そっか。まあ会って、とりとめのない話をしてすぐに別れたよ。元気そうだったね。それに、昔の気持ちも伝えなかった」
「はぁー」
安心し、溜め息をつく爆破。
「安心したかい?」
「馬鹿者! 何も安心などしていないわ!!」
ニッと笑って杉田は続ける。
「それにしても、こっちの時間と、人間の時間は差があってね、気付いたかもしれないけど、生きている時間の何倍も死んだ後の体感時間は長く感じるんだ。そう思えば、こっちの方がスマシを待っていたコトになるね。離れ離れになって俺を苦しめないと約束していたのに、結果的に俺の方が我慢することになっちゃったよ」
「それは死んでみないと分からん事だったから仕方なかろう!」
「はは、まぁそうだね。それにしても――、」
「?」
「また会えて、本当に良かった……」
「! ……」
顔を赤らめる爆破。そこへ――、
「へーい、隊長!」
『人間ヨ……』
抜刀とゾムビーの親玉が一升瓶を持って近付いて来た。
「!?」
「!!」
抜刀が完全に泥酔状態で話し掛けてくる。
「コイツが意外とイケる口でよう。酒が進んで滝の様に飲んじまったぜぇー。ひっく」
『酒トイウノカ……コノ飲ミ物ハ……奇妙ダガ癖ニナルナ……』
(なんか打ち解けちまってるんですけど――!)
爆破と杉田は驚愕した。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
エッチな方程式
放射朗
SF
燃料をぎりぎりしか積んでいない宇宙船で、密航者が見つかる。
密航者の分、総質量が重くなった船は加速が足りずにワープ領域に入れないから、密航者はただちに船外に追放することになっていた。
密航して見つかった主人公は、どうにかして助かる方法を探す。
170≧の生命の歴史
輪島ライ
SF
「私、身長が170センチない人とはお付き合いしたくないんです。」 そう言われて交際を断られた男の屈辱から、新たな生命の歴史が始まる。
※この作品は「小説家になろう」「アルファポリス」「カクヨム」「エブリスタ」に投稿しています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる