1 / 12
第一節 死後の嗜み
しおりを挟む
ここは――、宇宙――。
宇宙の果て、太陽系の惑星から程遠い、無限の世界。その無限の宇宙の中に、二人、腰を据えて談笑している者が――。
「ははは!」
「カカカッ! そーいうこってぇ」
爆破スマシと、抜刀セツナである。
「いやぁ、酒が進むな。こうも任務や戦闘が少ないと、存分に酒を楽しむ事ができる。ところで、セツナ。お前は酒を飲んでいい歳なのか? フリーターをやっていると聞いたが……」
「大丈夫、大丈夫っスよ! 人間、18過ぎりゃあ大学生だろうが社会人だろうが酒の一つや二つ、嗜むのが今の常識ってモンだ!」
「はは、そうか……それにしてもセツナ」
「?」
「お前は二章の途中で出遅れて出てきて、四章にはもう離脱してしまったな。出番が少なすぎやしないか?」
カラン、
と抜刀はグラスを爆破の方へ置いた。
(おや、癇に障ったのか?)
「俺を殺した張本人が、どの口下げてんなコトぬかしやがんだ、あーん?」
抜刀は超能力の刀を発現させ、爆破へ突き付けた。
「ははは、済まない。酒が進み過ぎて、悪ノリが過ぎた様だ」
「……」
(ぬ、ダメか)
フーと溜め息をつき、抜刀は爆破へ向けた刀を肩に担いだ。
「勘弁してくださいよー隊長。いつから俺はそんな扱いになったんでぃ。まぁ、人生短く太く! 長くてもヒョロヒョロじゃあ、箔がつかないっつーもんよ! これだ!! 人生短く太く!」
「なぜ二回も言う? お前は本当に面白い奴だな」
「そっすかぁ?」
「ふー、それにしてもアレだな」
「?」
「大阪でたこ焼きを食べ、酒を酌み交わし、カニを嗜んでいた私達だったが、今やゾムビー達の餌食になり、狩人の連中と離れ離れだ」
「……」
「命を懸けてゾムビー達と戦うのが本分だったが、ああして食事を楽しむ時間が、本当の意味での私達の、狩人の時間だったのかも知れないと、たまに思うよ」
「……まっ」
「?」
「辛気臭ぇ話は無しにして、今日は飲みましょうや」
「はは、“今日も”だろ? まぁ、無限の世界に居るのだから、昨日も今日も無いのだがな……」
『ハハハ、ソウダナ』
「!!」
「!?」
二人が振り向くとそこにはゾムビーの親玉が居た。
「テメェはっ!!」
「よせ! セツナ!!」
抜刀は爆破の言葉も耳に入れず、超能力の刀で親玉を切りに行った。
しかし――、
「スカッ」
「あり?」
抜刀の刀は親玉に届かず、いや、厳密には当たっているのだけれど透過して空振りに終わった。
「!?」
爆破も身構えた。しかし――、
『ハッハッハ。オ互イ死ンダ者同士、モウ実体ナドナイ。ココハ一ツ、私モ呑ミニ参加サセテモラオウジャナイカ』
「仕方ないな、セツナ」
「しゃーねぇな。だが少しでも妙な真似でもしてみろ。ただじゃ置かねぇぞ」
『ハハ、流石ハ石ノゾムビーヲ倒ス実力者ハ言ウ事ガ違ウナ』
「一つ良いか?」
爆破は手を上げて親玉に問う。
『ナンダ?』
「他のゾムビー達はどうした? 何故お前だけが魂として存在している?」
『ソウカ、ソレガ気掛カリカ?』
コクリと頷く爆破。
『ソウダナ……アノ石ヲ覚エテイルカ?』
「石!?」
「!!」
抜刀と爆破は思いを巡らせる。
『ソウダ。我ラノ能力ヲ上ゲル石ダ。アレハ本来、我ラ同胞達ニトッテ重要ナ存在デナ。アノ石ガ傍ニナイト同胞達ハ不完全ナ存在トナッテシマウ。ソシテ、アノ少年ガ石ノ全テヲ破壊シテシマッタ』
「ツトム……」
「ああ」
抜刀と爆破は相槌を打つ。
『ソノ為、同胞達ハ自我ヲ保テナクナッテシマッタ。ソシテ生キ残レタノガ……』
「ゾムビーの親玉、お前ひとりと言う訳か?」
『ソウダ。アノ少年ニハ、トンダ煮エ湯ヲ飲マサレテシマッタヨ』
「親玉、お前に復讐するという気は無いのか?」
爆破が切り込んだ。
『マア、シヨウニモコノ体デハ何モ出来マイ。私ハモウ諦メテイルヨ』
目を合わせ、ふ――と、溜め息をつく二人。不意に、親玉は口を開く。
『シカシ――』
「!!」
「!?」
『爆破……ト言ッタカ……オ前ハ和解ノ道ヲ選ンデイタノデハ無イノカ? 宇宙ト地球、ソレゾレノ住処デ、争ウコトヲ止メ、共存シテイク――、ソレヲオ前ハ目指シテイタノデハ無イノカ?』
「……」
爆破は暫く黙り込んだ。
「お、おい。こんな奴の言うコトなんて……」
「気が変わった!」
爆破は心配する抜刀の声を遮るように言った。
『!?』
「確かに私はゾムビーとの和解、共存の道を進もうとしていた。ゾムビーと人類の戦いが始まったのも、我々人間側が先に手を出したからだ。そこは重々反省している。しかしツトムは、あの少年はゾムビー達との戦いで命を落とした私達を想ってくれていた。死を、悲しんでくれていた。だから、ゾムビー達にとどめを刺したのだろう」
『……』
「その想いを受け止め、ゾムビー達を全て倒すという道も、全否定はできないのではないかと今は考えている!」
『……』
「……」
「……」
三人は黙り込んだ。そこへ――、
「やっ、何だか重苦しそうな話、しているね」
「誰だテメェ!?」
『誰ダテメェ!?』
「お前は……好実……?」
宇宙の果て、太陽系の惑星から程遠い、無限の世界。その無限の宇宙の中に、二人、腰を据えて談笑している者が――。
「ははは!」
「カカカッ! そーいうこってぇ」
爆破スマシと、抜刀セツナである。
「いやぁ、酒が進むな。こうも任務や戦闘が少ないと、存分に酒を楽しむ事ができる。ところで、セツナ。お前は酒を飲んでいい歳なのか? フリーターをやっていると聞いたが……」
「大丈夫、大丈夫っスよ! 人間、18過ぎりゃあ大学生だろうが社会人だろうが酒の一つや二つ、嗜むのが今の常識ってモンだ!」
「はは、そうか……それにしてもセツナ」
「?」
「お前は二章の途中で出遅れて出てきて、四章にはもう離脱してしまったな。出番が少なすぎやしないか?」
カラン、
と抜刀はグラスを爆破の方へ置いた。
(おや、癇に障ったのか?)
「俺を殺した張本人が、どの口下げてんなコトぬかしやがんだ、あーん?」
抜刀は超能力の刀を発現させ、爆破へ突き付けた。
「ははは、済まない。酒が進み過ぎて、悪ノリが過ぎた様だ」
「……」
(ぬ、ダメか)
フーと溜め息をつき、抜刀は爆破へ向けた刀を肩に担いだ。
「勘弁してくださいよー隊長。いつから俺はそんな扱いになったんでぃ。まぁ、人生短く太く! 長くてもヒョロヒョロじゃあ、箔がつかないっつーもんよ! これだ!! 人生短く太く!」
「なぜ二回も言う? お前は本当に面白い奴だな」
「そっすかぁ?」
「ふー、それにしてもアレだな」
「?」
「大阪でたこ焼きを食べ、酒を酌み交わし、カニを嗜んでいた私達だったが、今やゾムビー達の餌食になり、狩人の連中と離れ離れだ」
「……」
「命を懸けてゾムビー達と戦うのが本分だったが、ああして食事を楽しむ時間が、本当の意味での私達の、狩人の時間だったのかも知れないと、たまに思うよ」
「……まっ」
「?」
「辛気臭ぇ話は無しにして、今日は飲みましょうや」
「はは、“今日も”だろ? まぁ、無限の世界に居るのだから、昨日も今日も無いのだがな……」
『ハハハ、ソウダナ』
「!!」
「!?」
二人が振り向くとそこにはゾムビーの親玉が居た。
「テメェはっ!!」
「よせ! セツナ!!」
抜刀は爆破の言葉も耳に入れず、超能力の刀で親玉を切りに行った。
しかし――、
「スカッ」
「あり?」
抜刀の刀は親玉に届かず、いや、厳密には当たっているのだけれど透過して空振りに終わった。
「!?」
爆破も身構えた。しかし――、
『ハッハッハ。オ互イ死ンダ者同士、モウ実体ナドナイ。ココハ一ツ、私モ呑ミニ参加サセテモラオウジャナイカ』
「仕方ないな、セツナ」
「しゃーねぇな。だが少しでも妙な真似でもしてみろ。ただじゃ置かねぇぞ」
『ハハ、流石ハ石ノゾムビーヲ倒ス実力者ハ言ウ事ガ違ウナ』
「一つ良いか?」
爆破は手を上げて親玉に問う。
『ナンダ?』
「他のゾムビー達はどうした? 何故お前だけが魂として存在している?」
『ソウカ、ソレガ気掛カリカ?』
コクリと頷く爆破。
『ソウダナ……アノ石ヲ覚エテイルカ?』
「石!?」
「!!」
抜刀と爆破は思いを巡らせる。
『ソウダ。我ラノ能力ヲ上ゲル石ダ。アレハ本来、我ラ同胞達ニトッテ重要ナ存在デナ。アノ石ガ傍ニナイト同胞達ハ不完全ナ存在トナッテシマウ。ソシテ、アノ少年ガ石ノ全テヲ破壊シテシマッタ』
「ツトム……」
「ああ」
抜刀と爆破は相槌を打つ。
『ソノ為、同胞達ハ自我ヲ保テナクナッテシマッタ。ソシテ生キ残レタノガ……』
「ゾムビーの親玉、お前ひとりと言う訳か?」
『ソウダ。アノ少年ニハ、トンダ煮エ湯ヲ飲マサレテシマッタヨ』
「親玉、お前に復讐するという気は無いのか?」
爆破が切り込んだ。
『マア、シヨウニモコノ体デハ何モ出来マイ。私ハモウ諦メテイルヨ』
目を合わせ、ふ――と、溜め息をつく二人。不意に、親玉は口を開く。
『シカシ――』
「!!」
「!?」
『爆破……ト言ッタカ……オ前ハ和解ノ道ヲ選ンデイタノデハ無イノカ? 宇宙ト地球、ソレゾレノ住処デ、争ウコトヲ止メ、共存シテイク――、ソレヲオ前ハ目指シテイタノデハ無イノカ?』
「……」
爆破は暫く黙り込んだ。
「お、おい。こんな奴の言うコトなんて……」
「気が変わった!」
爆破は心配する抜刀の声を遮るように言った。
『!?』
「確かに私はゾムビーとの和解、共存の道を進もうとしていた。ゾムビーと人類の戦いが始まったのも、我々人間側が先に手を出したからだ。そこは重々反省している。しかしツトムは、あの少年はゾムビー達との戦いで命を落とした私達を想ってくれていた。死を、悲しんでくれていた。だから、ゾムビー達にとどめを刺したのだろう」
『……』
「その想いを受け止め、ゾムビー達を全て倒すという道も、全否定はできないのではないかと今は考えている!」
『……』
「……」
「……」
三人は黙り込んだ。そこへ――、
「やっ、何だか重苦しそうな話、しているね」
「誰だテメェ!?」
『誰ダテメェ!?』
「お前は……好実……?」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
回避とサイコとツトム_第三章 旅先珍道中
いぶさん
SF
ゾムビーの能力を高める『石』……。狩人達がそれを手に入れてから、ゾムビー側にある異変が。そんな中、狩人・関西支部からとある電話が掛かってくる。また、主人公達、中学生にとってのビッグイベント、クリスマスや修学旅行の季節も訪れる。
大阪や修学旅行先で主人公を待ち受けているモノとは!? クリスマスを通じての主人公の恋の行方は?
爆破スマシという女
いぶさん
SF
『回避とサイコとツトム』にて、一際目立った活躍を見せ殉職した女、爆破スマシ。
彼女の生い立ちや、最初で最後の恋、ゾムビーとの因縁。これは爆破がまだ狩人を立ち上げる前の、少女時代の彼女を描いた物語である。
回避とサイコとツトム_第六章 終幕
いぶさん
SF
狩人は、はるかに大切なものを失った。失意の底に打ちひしがれる隊員達。そんな中、見つかる一枚の遺書。爆破が記した、『和解』の道。
そしてゾムビーの親玉を前にした主人公が出す、最後の答えとは……?
全六章の壮大な物語が、幕を閉じる。
回避とサイコとツトム_第五章 殺戮の終焉
いぶさん
SF
「ツトム! 私だ‼ アメリカへ飛ぶぞ‼‼‼」
爆破の一声から始まった、アメリカ渡航。未踏の地で主人公を待ち受けていた戦いとは……? そしてここで、一つの命が奪われ、大量殺戮が終焉を迎える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる