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第一の封印

極寒の大地

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 決して雪が解けることのない極寒の大地。
 俺の故郷であるアレア王国からはるか北に位置するこの地域は、『ゴルサ』と呼ばれている。

 決して多くは無いが人間も各地に暮らしており、俺とセルデリカは彼らから話を聞きながら、この地にいにしえから存在するというを探していた。
 もちろん、語彙力不足のせいで情報らしい情報はなかなか手に入らず、極寒の中で苦戦を強いられているのだが。

「マジでここにアレはあるんだろうな?」
「あるよーっ! たぶん……」
「おいおい……」

 買ってやったマントで顔を隠しやがったセルデリカに、俺はため息を吐く。
 語彙力を取り戻す手がかりを知ってるのはお前だけなんだからしっかりしてくれよ……。まぁ、ここまで情報が手に入らないと自信が無くなってくる気持ちもわからなくはないけどな。

 と、そんな時だった。

「アレを探しとるというのは、あんたたちかね?」

 もはやローラー作戦で老若男女に片っ端からダンジョンの事を聞いて回っていた俺たちに、一人の老人が声をかけてきた。向こうから声をかけてきたということは、アレとはダンジョンを指しているに違いない。

「ああ、たぶん俺たちのことだ。それでアンタは?」
「ワシはここのアレじゃよ」
「アレってのは、アレか?」
「うむ。おそらくソレのことじゃ」

 ひどく遠回りな会話にもだいぶ慣れたものだ。さしずめこの威厳溢れる髭モジャの爺さんは村長とか長老ってところだろう。

「あんたたちにアレしたい。どうしてアレを探しておるのじゃ?」

 爺さんの質問に、俺はなんと答えるか迷った。『語彙力を取り戻すため』なんて答えたところで、アレとソレだらけの説明になって何一つ伝わらないのが目に見えていたからだ。

「もしアレを見つけたとしても、アレの中はアレだらけじゃ。もしアレやアレが目的なら悪いことは言わん。アレするがいい」
「アレの中がアレだらけって、おじいさんアレがどこにあるか知ってるのーっ?」

 セルデリカの質問に爺さんはこくりと頷く。

。ワシはアレじゃからな」

 俺とセルデリカは顔を見合わせた。



 やっと手がかりを見つけた!



 しかし、爺さんは俺たちを宝探しにきた盗賊か何かだと思っているらしい。この頑なな態度を見るに、簡単にはダンジョンの場所を教えてくれそうにない。
 ならば、と。俺は目的の代わりに、俺の素性を明かすことにした。

「爺さん。俺は勇者だ」

 本当はこんな風に『勇者』という肩書を使うのは嫌いなのだが、背に腹は代えられない。なによりこの一言の効果は絶大だ。

「なんとっ。まさかあんたが勇者だったとは……。なるほど、ではアレを探しておるというのも、あのこわーいヤツをアレするためにアレという訳か」

 髭モジャの爺さんが「こわーいヤツ」とか言うなよ……。いや、仕方ねぇけどさ……。おい、セルデリカも笑うな。お前の親父のことだぞ。

 けど、爺さんの言葉で俺はハッと気が付いた。
 誰に報告することもなく新しい旅に出てしまったので、俺が魔王を倒したことをまだ誰も知らないのだ。
 とはいえ、魔王討伐のためとあらば大抵の人間が力を貸してくれる。都合のいい勘違いをしてくれる分には何の問題もないので、俺は敢えて黙っておくことにした。
 語彙力を取り戻した後に、全部まとめて報告すればいいだろう。

「わかった。こわーいヤツをアレするためならば、コレを渡そう」

 そう言うと爺さんは懐から一枚の古い紙を取り出した。グルグル巻きにされたソレは、どうやら地図のようだ。
 セルデリカが受け取り、さっそく中を覗き始める。

「ソコにアレはある。だがくれぐれもアレせぬようにな。アレの奥には何がアレしておるかわからぬぞ」
「わかったーっ! おじいさんありがとっ」

 地図が示す場所にダンジョンはあるらしい。俺たちは一秒でも早くこの現状を解決するべく、さっそく地図の示す方向に足を向けた。

 爺さんは心配そうにしていたが、俺は魔王を倒した勇者だ。
 何が待っていようと俺の敵じゃないさ。
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