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2度目の告白

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今は大抵の生徒が授業を受けている時間。

音楽の授業か、かすかにピアノの音が聞こえる。

二人の間に流れる静寂に気まずさを感じていた。

そんな沈黙を破ったのはグレイヴだった。

「そういえば、名前ユリウスっていうのか」

「ああ、俺の名前教えてなかったな」

初めて会話した時は逃げ帰ってしまったし、次にあったのがさっきで俺はまともに会話出来る状態じゃなかった。

タイミングがなかったわけでもないが、すっかり失念していた。

「改めて、リーン・ユリウスだ」

「いい名前だな」

「……ありがとう」

名前を褒められる事なんかあまりないから少し照れくさい。

またしばらくの静けさが訪れ、寮のロビーに着いた。

「ユリウス」

名前を呼ばれてグレイヴの方に向くと、グレイヴは真っ直ぐこちらを見つめていた。

俺は少しだけ昨晩のことを思い出した。

「改めて言うが、俺は君に一目惚れした。出来れば番になることを前提に付き合って欲しいと思う」

その目から真剣さが伺えた。

「けれど俺たちはまだ知り合って日も浅い。だから、お互いを知るところから始めよう」

この誠実さに応えたいと思った。けど、

「……そう、だな。俺もよく知らない奴の恋人にはなれない」 

知り合って二日で恋人になるような、そんな大胆な人間に俺はなれない。

「まず、友達から」

αはΩのことを見下してるような奴ばかりだ。だけど、グレイヴはきっとそんな奴じゃない。

「ああ、今度ランチを一緒に食べよう」

怖がりな俺をずっと待ってくれるような奴なんだと思う。

「そうだな」

「……はあ、良かった。やり直し出来た」

グレイヴは安堵の表情を浮かべていた。

「やり直し?」

「ああ、昨夜は焦って性急な行動に出てしまっただろう?」

あれには驚いたな。

「それがずっと気がかりだったんだ」

つくづく真面目なやつ。

「じゃあ、俺はここで」

「ありがとう。助けてくれて」

俺に優しさを教えてくれて。

「当たり前のことをしたまでだよ」

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