【実録!! ~裏社会の瞳~】

KAI

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【幻獣ヤクザを知った】

『始まりの初まり』

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 カラオケ店で働いていたのは、前述した。



 意識してみると、店の周りに暗い雰囲気の男性が立っていることが分かった。



 調べてみるとその人物はやはりヤクザで、違法な風俗店への客引き目的に立っているのであった。



 このように、私の仕事場はヤクザの情報を集めるには格好の場所だった。



 さらに、学生時代に知り合った弁護士の先生に「麻薬の取引に関する裁判が行われる」などの、暴力団がらみの情報をもらえば、積極的に傍聴席に座った。



 傍聴席に行くために法廷の扉を開けた瞬間に、紫色のシャツを着たパンチパーマの男性が座っており、私たちを睨みつけてきたことがあった。



 裁判後に弁護士に聞いてみたところ、



「途中、暴力団関係者が覚醒剤の売買に関して証言者として呼ばれてたでしょう? その組員が口を滑らせないかどうかの、目付役だね。よく居るよ~」



 と、のほほんと答えられたこともある。



 裁判を見てきて思ったことは、司法の『ナチュラル』が『全くナチュラルではない』ことだった。



 まず、出廷した証言者が裁判官から氏名・年齢・職業などを質問する。



 すると・・・・・・



「○○。四五才。ヤクザです」



 こう答える。



 いやいや・・・・・・職業なのか、と・・・・・・



「原告との関係性は?」


「覚醒剤を売りました」



 いやいや・・・・・・その場で逮捕しろと・・・・・・



 日本の伝統というのか・・・・・・なかなかに諸外国からは理解が得られないであろう場面に出くわすことが多い。



 最たる例のひとつに『三社さんじゃ祭り』があるであろう。



 神社を抜けた瞬間に、男も女も法被を脱ぎ捨て、刺青の華が路上にいっぱいに咲き誇る。



 私はカメラを片手に、おずおずと、龍を背負った御方に声をかけて写真の許可を求めた。



 すると・・・・・・



「おお!! ええぞ!! おーいお前ら!!」



 なんとOKしてくれただけではなく、他の関係者を呼んでくれた。



 厳つい人間たちが(男女)集まり、その光景をパシャリと撮る。



「ありがとうございました。最高の写真が撮れました」


「いいんだよ!! 俺らも今日くらいしか写真に写ることもないからな!! あとは逮捕されたときか!! ガハハ!!」



 こう言って顔をクシャッとしながら笑っていた。



 その姿は、犯罪者集団というよりも、タトゥーアーティストの集団のような雰囲気で陽気であった。



 さて、なぜ私が極道などを中心に物を書くようになったのかの核心が、あった。



 それは、パンデミックの序盤。



 二〇二〇年五月中旬。



 東京都知事がテレビ会見で『感染拡大を防止するためには、飲食店、カラオケ店などーーーー』と口にしたその瞬間から客が来なくなった。



 延々とバックヤードで待ち続けても、常連客すらひとりも来ない。



 一日、三組も来れば御の字だった。



 店長も他の店にヘッドハンティングされていた身だったので、変なテンションになり、



「もうチャイムが鳴るまでずっと休憩でいいよ~働いていることにしてあげるし~」



 という状態になっていた。



 この店も、もう風前の灯火ーーーー



 そんな諦めが充満した休憩室で、タバコを吸いながら物思いに耽っていた。



 と、



 ピンポーン♪



 お客様だ。



 休憩中なので、店長が応対をしていた。



 だが、



「ちょっと一端入ってくれない? 久々に団体客で」



 と、呼ばれたのだ。



 私もヒマなのはあまり好きではないので、制服を着て応援に駆けつけた。



 本当に久し振りの一〇人単位の団体で、酒の単品注文が極端に多かった。



 これは忙しくなるぞ・・・・・・



 そう思っていた。



 しかし、グラスを両手で一〇個持ってボックスに行ったとき・・・・・・



「ご注文のお品、お持ちしました~」


「おう。店員さんここに置いといて」


「かしこまり・・・・・・」



 手前の、団体の代表であろう人物の手を見てギョッとした。



 指がない。



 それも、小指は根元までなく、薬指と中指もスッパリ切断されていた。



 私の視線が伝わってしまったのだろう。



 男性が歌っている他の客に気を遣って、小声で、



「ヤンチャは若いうち。年取ってからのヘマはあかんで」



 と耳打ちしてきた。



 ボックスの扉が閉まった途端に、汗が止まらなかった。



 そしてそのことを店長に伝えると、



「あ~そう。アルバイトの子たちには行かせないで、僕たちで応対しよう」



 こう言われた。



 そして、コレが最後の出勤日になった。



 次の日には会社から書類が一枚だけ送られ、一時的な臨時休業。



 それが完全な閉店となることは、店長のラインからでも充分に分かっていた。



 最後の客がヤクザ。



 このことが私に、極道を書くという天啓を与えてくれたのだと信じている。



 ただ『カッコイイ』



 ただ『悪が好き』



 ただ『アングラに興味がある』



 そんな覚悟ではない。



 それが伝われば、充分だ。







 ちなみに最後の最後で意味のある情報かどうか迷うのだが、ここで豆知識。



 カラオケ店で働いていて分かったことなのだが・・・・・・



『ヤクザは歌がめちゃくちゃ上手い』



 以上。
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みんなの感想(1件)

メロンパン
2023.08.23 メロンパン

はーちゃん恐い

解除

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