【実録!! ~裏社会の瞳~】

KAI

文字の大きさ
上 下
21 / 26

『極道のお・仕・事♪ 地上げ編 (後編)』

しおりを挟む
 しかし、もうひとりが手強かった。



 何代も家を受け継いでいるので、前者のような方法を使えない。おまけに悪知恵が働き、井手が出張っていっても法外な金額を提示される。



 最終的には警察を呼ぶ。弁護士を呼ぶ。そう言って追い返す。



「どうしよ井手さん」



 土地の権利者が、慌て始めた。



 そこで、井手はを取ることとなった。



「○○。お前、もう行政とはナシ(話し)ついとるンか?」


「そらまあ・・・・・・」


「なら、もう市に


「いや・・・・・・そうしたら地上げの意味が・・・・・・」


「すぐに撤去させるから少し待て言うとき」


「それはぁ・・・・・・」


「ならワシが話しつけるから、ともかく道路作っちまえ」


「それは無理・・・・・・」


「道理を引っ込ませンかい!! オドレも金が欲しいンやろうが!!」


「わ、分かった」



 こうして道路は完成した。



 いや・・・・・・してしまった。



 大きな道路の、ド真ん中に家がと残っているからだ。



 家主も恐ろしかっただろう。



 なにしろ、庭のすぐ脇をビュンビュン車が走り、排気ガスが充満。



 夜中でもクラクションの騒音で眠れない。



 それでもなお出て行かない。



 だが、井手にとっては想定内のことだった。



 ある日ーーーー



 ドッカーンッッ!!



 家に誰も居ない時間に、トラックが玄関をぶち破るほどの勢いでを起こした。



 トラックの側面には『N西』の文字が・・・・・・



 下手な地上げ屋のように日頃からの嫌がらせなどはしていない。家主が警察に地上げのせいだと言っても、運転手は「こんな道路の真ん中に建っているものだから仕方がない」と言って素知らぬ様子。



 証拠が少なく、警察も事件性ナシとして処理した。



 ほとほと困った家主。



 そんなところへ、井手が登場した。



 だ。



「出て行ってくれれば、もうこんなことはないでしょうな」



 家主は優しい語気の井手に丸め込まれ、もう抵抗するパワーもないと見えた。



 すんなりと金を受け取り、引っ越していった。



 家はすぐに解体され、ようやく道路が完璧に完成したのであった。



「ホンマにありがとう井手さん」



 土地の権利者はホクホク顔だった。



「これでしこりも取れて、ウハウハや」


「そりゃあよかったな」


「コレ、約束の取り半です」



 トランクケースを渡された・・・・・・が、



? なぁに言っとるンや?」


「へ?」


「必要経費がかなりかかってのぉ・・・・・・の間違いやろ」


「は、ハチ!?」


「土地買うて、立退料出して、トラックの修繕費もいるわなぁ・・・・・・おぉ?」


「そ、そんなの最初の話しとちゃうやないか!」


「じゃかしいンじゃいこのガキぁ!!」



 昼間の喫茶店にもかかわらず、激しい怒声を浴びせる井手。



「今からでもサツに自首してオノレも共犯としてパクってもろうてもええんやで!! どうじゃゴラァ!!」


「そないなことしたら、アンタも刑務所に・・・・・・」


「ヤクザがムショ恐がるわけないやろが!! アンタはどうや? 金惜しさに、臭いメシ食う覚悟あるンか!!」


「お、大声出さないで下さい・・・・・・」


「分かった。アンタも次の土地買う種金が必要やろ・・・・・・にしたるわ」


「ホンマでっか?」


「極道に二言はない」


「じゃあ、七・三で・・・・・・」



 ヤクザの迫力で脅された後に、割引されるとなぜか得した気分になる。



 不思議なものだ。



よろしゅう頼むで・・・・・・いつでも話し持ってこいや」


「は、はい・・・・・・よろしくお願いいたします・・・・・・」



 一度ヤクザを御利用した者は、一生涯、ヤクザに付き纏われる。



 それが、裏社会を使って甘い汁を吸おうとした者への因果だ。



 どんなにこんがらがった状況下でもどんな場面でも、最後に得をするのはヤクザ。



 それは時代が変わっても、変わらない構図である。



 ちなみに、井手氏は刑務所は恐いらしい。



 はったりも、時には使いようだ。




 完
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

旅日記 秩父にて 

銅原子@スタジオ バンドデシネ
エッセイ・ノンフィクション
 これは、実際に僕が旅した時のことを書いたエッセイです。

狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

羽村美海
恋愛
 古式ゆかしき華道の家元のお嬢様である美桜は、ある事情から、家をもりたてる駒となれるよう厳しく育てられてきた。  とうとうその日を迎え、見合いのため格式高い高級料亭の一室に赴いていた美桜は貞操の危機に見舞われる。  そこに現れた男により救われた美桜だったが、それがきっかけで思いがけない展開にーー  住む世界が違い、交わることのなかったはずの尊の不器用な優しさに触れ惹かれていく美桜の行き着く先は……? ✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦ ✧天澤美桜•20歳✧ 古式ゆかしき華道の家元の世間知らずな鳥籠のお嬢様 ✧九條 尊•30歳✧ 誰もが知るIT企業の経営者だが、実は裏社会の皇帝として畏れられている日本最大の極道組織泣く子も黙る極心会の若頭 ✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦ *西雲ササメ様より素敵な表紙をご提供頂きました✨ ※TL小説です。設定上強引な展開もあるので閲覧にはご注意ください。 ※設定や登場する人物、団体、グループの名称等全てフィクションです。 ※随時概要含め本文の改稿や修正等をしています。 ✧ ✧連載期間22.4.29〜22.7.7 ✧ ✧22.3.14 エブリスタ様にて先行公開✧ 【第15回らぶドロップス恋愛小説コンテスト一次選考通過作品です。コンテストの結果が出たので再公開しました。※エブリスタ様限定でヤス視点のSS公開中】

くろいやつのくろいつらつらですわ~

黒幸
エッセイ・ノンフィクション
くろいゆきという謎生物がつらつらとしたものを書き連ねていくだけですですわ~。 日記は三日坊主になるので不定期更新になると思われたら、毎日、更新してますわね。 不思議ですわ~。 6/4現在、何を思い立ったのか、急にお嬢様言葉で書き綴ることになりましてよ。 6/8現在、一話からお嬢様言葉に変換中ですわ~! そして、短編から長編に変えておきました。

発達障害の長男と母としての私

遥彼方
エッセイ・ノンフィクション
発達障害の長男と母としての私の関わり方の記録というか、私なりの子育てについて、語ろうと思います。 ただし、私は専門家でもなんでもありません。 私は私の息子の専門家なだけです。心理学とか、医学の知識もありません。きっと正しくないことも語るでしょう。 うちの子とは症状が違うから、参考になんてならない方も沢山いらっしゃるでしょう。というよりも、症状は一人一人違うのだから、違うのは当たり前です。 ですからあなたは、あなたのお子さんなり、ご家族の方の専門家になって下さい。 願わくば、その切っ掛けになりますよう。 ※私の実際の経験と、私の主観をつらつらと書くので、あまり纏まりがないエッセイかもしれません。 2018年現在、長男は中学3年、次男小6年、三男小4年です。 発達障害だと発覚した頃は、長男3歳、次男6カ月、三男はまだ産まれていません。 本作は2017年に、小説家になろうに掲載していたものを転記しました。 こちらでは、2018年10月10日に完結。

天空からのメッセージ vol.45 ~魂の旅路~

天空の愛
エッセイ・ノンフィクション
そのために、シナリオを描き そのために、親を選び そのために、命をいただき そのために、助けられて そのために、生かされ そのために、すべてに感謝し そのためを、全うする そのためは、すべて内側にある

時を越えた財宝:中古の家に眠る歴史的な富の物語

O.K
エッセイ・ノンフィクション
不動産市場で見つけた中古の家には、古びた押し入れの中に大量の歴史的な紙幣が隠されていた。その発見から始まる驚きの冒険で、専門家の査定によりその財宝は高額で取引され、私の人生に新たな可能性が広がった。古い家はだけでなく、未知の冒険の舞台となり、周囲の人々にも興奮をもたらした。これは不可思議な出来事がどれほど素晴らしいものに変わるかを実感した特別な瞬間である。

英語が苦手な大学受験生のための英語の基礎力を付ける方法

マーブル
エッセイ・ノンフィクション
私が大学の受験生の頃は、英語が苦手だったため浪人してしまったが、その原因は基礎力がなかったことが原因だった、 大学受験生だとしても英語が苦手な受験生には中学受験に穴がある場合が多いものである。 その克服方法と基礎力を付ける方法を英語が苦手だった私が独学で合格できたノウハウを伝えていきたい。 英語が苦手な受験生の少しでもお役に立てれば幸いです。

処理中です...