DANCING・JAEGER

KAI

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第1章

【墜ちた正義の味方】

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「なんで? ワシが殺したのも怪我させたのも捕まったのも、みーんな人間やないか」


「川田組が『シャドゥ』のジュネルの傘下に入ろうとしていた情報は、こっちも掴んでいる」



 そういえば、柴田の叔父貴の情報源もサツやったなぁ・・・・・・と、龍敏は思い出した。



「なるほどなぁ・・・・・・川田組をこれ以上掘り返したくないってわけか・・・・・・」



 龍敏がパイプ椅子を軋ませながら、ズイッと前へつんのめる。



「桜田門の代紋(警察)が・・・・・・エルフなんぞの顔色うかがうたぁ・・・・・・墜ちたモンやな」


「・・・・・・俺だって、いつまでも『』でいたくはないんだ」



 苦虫を噛み潰したような顔になる巡査部長・・・・・・いや、未来の警部様。



「出世のオマケ付きか・・・・・・」


「娘がな・・・・・・大学受験を控えていて金がいるんだ・・・・・・定年まで安月給でお前らヤクザの汚え尻を追うなんざ・・・・・・まっぴらごめん、なんだよ」



 警官として真相ではなく己の利益を優先した自分に嫌気がさしたかのごとき、梅雨の雨空のようなひと言だった。



 長年この国家の安全に尽くしてきたのだ。



 多少は甘い汁を吸っても良いと、自分に言い聞かせている彼の背中を、龍敏は哀れみを帯びた目でジィッと眺める。



(・・・・・・一度吸うたら、やめられんで・・・・・・)



 社会の暗部の樹液は、一度味わった者を離すことはしない。



 一生ついてまわるスティグマのような、悪魔の取引。



 それを一回でもすれば、二度とは逃げられない。そのことを一番よく知っているのは龍敏だ。



 だが、何も言わずにおいた。



 それだけが、目の前の明るい未来だけを見つめている男への、せめてもの選別というわけだ・・・・・・いずれ、後悔するその日が来ることを知りながら・・・・・・



「・・・・・・分かったわ。控訴はせん。これまで迷惑かけた分、アンタの顔を立てますわ」


「助かる・・・・・・じゃあ、八年間、頑張ってくれ」


「塀の中は寝込みを襲われる心配のない、天下一の寝床や。ゆっくりと過ごさせていただくわ」


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