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第1章
【盃の重さ】
しおりを挟むクインは、逡巡した。
兄弟盃・・・・・・その重さは裏社会に生きる者としてよく知っている。
それを龍敏としたら、この地獄のような日々から逃れることができる。
仲間を、救うことができる。
だが、代償も伴う。
そもそも、エルフ擬きがヤクザになる時点で前例がない。
次に、自分を頼って集まったバラスたちが代紋を背負うことになる。
簡単に『YES/NO』と答えられるものじゃない。
どうするべきか・・・・・・天から降ってきた救いの手ではない。
地獄から這い出てきた悪魔の甘言とも形容できる。
「・・・・・・お前さんが迷うのもよお分かる。せやけど、ワシはオドレと争うつもりはないんや・・・・・・どうや? 色の良い返事、してくれんかいのぅ?」
「・・・・・・」
「このままやったらで? オドレら全員見えない鎖から、見える鎖に繋がれることになる。兄弟の仲間のためならワシがどんな手段を使うてでも阻止してみせる!!」
熱く語りかける龍敏に反して、クインの表情は読めない。
長い静寂を、しゃがれた龍敏の、顔色を窺うような声が破る。
「・・・・・・なんやったら、七・三でもええで・・・・・・兄貴と、呼ばせてもらいまひょ」
「・・・・・・五分(ごぶ:同等の意)でいい」
「せやったら・・・・・・ッッ!!」
「いいだろう。盃・・・・・・飲ませてもらう」
龍敏は興奮しているらしく、ピョンピョンと飛び跳ね、クインに抱きついてきた。
クインは内心、心臓が爆発しそうだったが、彼はそんなこと露も知らない。
「そうと決まりゃぁ早いことせにゃ・・・・・・時間がないんや!」
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