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第1章
【焦がれる心】
しおりを挟む「龍敏か・・・・・・」
「クイン様・・・・・・私、首とってきます」
モルが懐からナイフを覗かせる。
「やめろ。無駄な争いには利益がない。ここは冷静に・・・・・・」
「ごめんやっしゃ・・・・・・」
現れたるは角刈りで顔面に大きな切創がある男。
ガラの悪いシャツに、真っ赤なジャージのズボン。サンダル。
何よりもただ者じゃない目つき。飢えた野犬のようだ。痩せているのに、素手で勝てる気配がない。
「何者だ?」
「俺は喧風一家若頭、鬼道です」
鬼道はポケットから何かを取り出そうとする。
その刹那にモルが鬼道の喉元に、いつぞやと同じくナイフを押しつけた。
しかし、ケンのような驚きもなければ、むしろ「どうぞ」とでも言いたげな鬼道。
「・・・・・・俺を殺しても結構ですけど・・・・・・手紙を届けるために喋らなきゃいけねえからよぉ・・・・・・腹ぁ刺してくれねえか?」
「モルやめるんだ・・・・・・言づてとはなんだ?」
「クインさん? 親父がアンタに会いたいって」
いつの間にやら敬語が抜けている。彼は知能レベルがそこまで高くないのだった。
「龍敏が俺に?」
「へい・・・・・・なんかヒミツの話しがあるとか・・・・・・場所はアンタらの仕切ってる工事現場で良いって。詳しいことはココに」
短い手紙を渡す。
「・・・・・・駅に喧風一家が集まっていることと関係が?」
「聞いたはずなんですけどぉ・・・・・・忘れたんで直接聞いて下さい」
「はぁ?」
「だーから忘れたっつってんだろ! ほんじゃ。俺はコレで」
最後まで鬼道はモルを睨みながら話していた。
そして、モルの肩を軽く突き飛ばしながら、肩で風を切って去って行く。
まさに龍敏の『息子』らしいのであった。
「どうします?」
「・・・・・・会う」
「本気ですか?」
「本気だ。それにあの工事現場ならこちらとしても安全だろう?」
ざわざわしている仲間たちに反比例して、クインは少し口角が上がっていて、ぷるぷるしながら我慢している。
龍敏との会合。
それが、今やクインの癒やしのひとときであることはすでに書いたが、期待せずにはいられない過去があるのだった。
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