11 / 57
第1章
【幹部会】
しおりを挟む廊下の最奥。
面倒くさいので足で開けると、畳にあぐらをかいた十数人が詰めている。
もうもうとタバコの煙が立ち上り、空気がどんよりとしている。
全員が千石組の幹部たち・・・・・・と、名ばかりは立派だが、どの組も数十人程度。
実際、若だのなんだのと持ちあげられている若頭の龍敏でさえ、率いている若者は三〇人にも満たないのだった。
服も礼服を着ている者はほぼいない。
事情を知らない者が見たら、オッサンたちの寄り合い所であろう。
「おう。来たか龍敏」
机をいくつも繋げて一本の長机にしている。
その、一番奥の上座で日本茶を啜っている壮年の男。
千石組三代目組長『千石 重里』
構成員二〇〇名の千石組を率いる親分だ。
着物を召して、老眼鏡をかけている。
下ぶくれで、身体が丸いところなどは、信楽焼のタヌキのような印象を与えてくる。
到底、暴力団の組長には見えないのだった。
「まま、座れ座れ。今お茶を煎れさせているところだからな」
「あんなぁ・・・・・・親父ィ」
関西弁にシフトチェンジした龍敏は、ズカズカと重里へ近づき、ヤンキー座りをして顔をつきあわせる。
タバコに火を自分でつけて、紫煙を鼻から蒸気機関車のごとく吹き出す。
「ワシら茶ぁしばくために集まっとんのとちゃうぞ? 組がどう動くかの戦略会議や。こない緊張もクソもない会議はやってないも同じやで?」
「まぁ・・・・・・そりゃあ・・・・・・」
「若。まずは落ち着いて話しましょうや」
幹部のひとりが言った。
その男は幹部集の中でも強面で、スキンヘッド。
真っ赤なスーツに身を包み、葉巻を吸っている柴田組々長『柴田 紋次郎』千石組舎弟頭である。
千石組でもかなりの稼ぎ頭で、組が存続しているのも彼がいるからだ。
それゆえ、尻尾に火のついた虎のごとき気性の龍敏へも意見ができる。
「落ち着く? 柴田の叔父貴・・・・・・叔父貴ならワシが何を言いたいのか分かるんとちゃいまっか?」
「・・・・・・川田組のことで?」
「せや! 雁首揃えて茶を啜るヒマはありゃせん! 川田の外道がヤクを売ってシマ荒らししとる! すぐにでも対処せにゃ、ワシらヤクザの笑い者でっせ・・・・・・」
「若・・・・・・事実と違うでしょう。実際は『シラミ』のクインが川田組を後ろ盾に、売人にさばいてるんでしょう」
「・・・・・・クインはやらされてるだけや」
「その証拠は?」
「証拠もクソもあるかい!!」
バンッと龍敏が机を叩く。
「ワシはな、どいつよりもクインのこと知っとる。アイツがこない汚いシノギするわけがないわ!」
「若はそう思いたいんでしょうが・・・・・・」
「それに、後ろ盾だろうが勢力を拡大させてるのは川田組や! 川田の外道を叩き潰す!! コレしか解決策はありゃぁせん!!」
「まあまあ龍敏。落ち着くんだ」
「親父! ヤクザが売られたケンカ買わなくなったら渡世の終わりや!! なんやったら、ワシの『喧風一家』だけでもやったりま(す)」
「若・・・・・・親分・・・・・・イイ頃合いなので、お耳に入れたいことが」
1
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
羽村美海
恋愛
古式ゆかしき華道の家元のお嬢様である美桜は、ある事情から、家をもりたてる駒となれるよう厳しく育てられてきた。
とうとうその日を迎え、見合いのため格式高い高級料亭の一室に赴いていた美桜は貞操の危機に見舞われる。
そこに現れた男により救われた美桜だったが、それがきっかけで思いがけない展開にーー
住む世界が違い、交わることのなかったはずの尊の不器用な優しさに触れ惹かれていく美桜の行き着く先は……?
✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦
✧天澤美桜•20歳✧
古式ゆかしき華道の家元の世間知らずな鳥籠のお嬢様
✧九條 尊•30歳✧
誰もが知るIT企業の経営者だが、実は裏社会の皇帝として畏れられている日本最大の極道組織泣く子も黙る極心会の若頭
✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦
*西雲ササメ様より素敵な表紙をご提供頂きました✨
※TL小説です。設定上強引な展開もあるので閲覧にはご注意ください。
※設定や登場する人物、団体、グループの名称等全てフィクションです。
※随時概要含め本文の改稿や修正等をしています。
✧
✧連載期間22.4.29〜22.7.7 ✧
✧22.3.14 エブリスタ様にて先行公開✧
【第15回らぶドロップス恋愛小説コンテスト一次選考通過作品です。コンテストの結果が出たので再公開しました。※エブリスタ様限定でヤス視点のSS公開中】
声劇台本置き場
ツムギ
キャラ文芸
望本(もちもと)ツムギが作成したフリーの声劇台本を投稿する場所になります。使用報告は要りませんが、使用の際には、作者の名前を出して頂けたら嬉しいです。
台本は人数ごとで分けました。比率は男:女の順で記載しています。キャラクターの性別を変更しなければ、演じる方の声は男女問いません。詳細は本編内の上部に記載しており、登場人物、上演時間、あらすじなどを記載してあります。
詳しい注意事項に付きましては、【ご利用の際について】を一読して頂ければと思います。(書いてる内容は正直変わりません)
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
笛智荘の仲間たち
ジャン・幸田
キャラ文芸
田舎から都会に出てきた美優が不動産屋に紹介されてやってきたのは、通称「日本の九竜城」と呼ばれる怪しい雰囲気が漂うアパート笛智荘(ふえちそう)だった。そんな変なアパートに住む住民もまた不思議な人たちばかりだった。おかしな住民による非日常的な日常が今始まる!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる