DANCING・JAEGER

KAI

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第1章

【幹部会】

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 廊下の最奥。


 面倒くさいので足で開けると、畳にあぐらをかいた十数人が詰めている。


 もうもうとタバコの煙が立ち上り、空気がどんよりとしている。


 全員が千石組の幹部たち・・・・・・と、名ばかりは立派だが、どの組も数十人程度。


 実際、若だのなんだのと持ちあげられている若頭の龍敏でさえ、率いている若者は三〇人にも満たないのだった。


 服も礼服を着ている者はほぼいない。


 事情を知らない者が見たら、オッサンたちの寄り合い所であろう。


「おう。来たか龍敏」


 机をいくつも繋げて一本の長机にしている。


 その、一番奥の上座で日本茶を啜っている壮年の男。


 千石組三代目組長『千石せんごく 重里しげさと


 構成員二〇〇名の千石組を率いる親分だ。


 着物を召して、老眼鏡をかけている。


 下ぶくれで、身体が丸いところなどは、信楽焼のタヌキのような印象を与えてくる。


 到底、暴力団の組長には見えないのだった。


「まま、座れ座れ。今お茶を煎れさせているところだからな」

「あんなぁ・・・・・・親父ィ」


 関西弁にシフトチェンジした龍敏は、ズカズカと重里へ近づき、ヤンキー座りをして顔をつきあわせる。


 タバコに火を自分でつけて、紫煙を鼻から蒸気機関車のごとく吹き出す。


「ワシら茶ぁしばくために集まっとんのとちゃうぞ? 組がどう動くかの戦略会議や。こない緊張もクソもない会議はやってないも同じやで?」

「まぁ・・・・・・そりゃあ・・・・・・」

「若。まずは落ち着いて話しましょうや」


 幹部のひとりが言った。


 その男は幹部集の中でも強面で、スキンヘッド。


 真っ赤なスーツに身を包み、葉巻を吸っている柴田組々長『柴田しばた 紋次郎もんじろう』千石組舎弟頭である。


 千石組でもかなりの稼ぎ頭で、組が存続しているのも彼がいるからだ。


 それゆえ、尻尾に火のついた虎のごとき気性の龍敏へも意見ができる。


「落ち着く? 柴田の叔父貴・・・・・・叔父貴ならワシが何を言いたいのか分かるんとちゃいまっか?」

「・・・・・・川田組のことで?」

「せや! 雁首がんくび揃えて茶を啜るヒマはありゃせん! 川田の外道がヤクを売ってシマ荒らししとる! すぐにでも対処せにゃ、ワシらヤクザの笑い者でっせ・・・・・・」

「若・・・・・・事実と違うでしょう。実際は『シラミ』のクインが川田組を後ろ盾に、売人にさばいてるんでしょう」

「・・・・・・クインはやらされてるだけや」

「その証拠は?」

「証拠もクソもあるかい!!」


 バンッと龍敏が机を叩く。


「ワシはな、どいつよりもクインのこと知っとる。アイツがこない汚いシノギするわけがないわ!」

「若はそう思いたいんでしょうが・・・・・・」

「それに、後ろ盾だろうが勢力を拡大させてるのは川田組や! 川田の外道を叩き潰す!! コレしか解決策はありゃぁせん!!」

「まあまあ龍敏。落ち着くんだ」

「親父! ヤクザが売られたケンカ買わなくなったら渡世の終わりや!! なんやったら、ワシの『喧風けんぷう一家』だけでもやったりま(す)」

「若・・・・・・親分・・・・・・イイ頃合いなので、お耳に入れたいことが」

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