死が二人を分かつまで

異種格闘技トーナメント篇

【動き出す本物たち】

　新宿歌舞伎町は、どんな夜でも眩く輝いている。


　人間が元来持つ欲望ーーーー食欲・色欲・傲慢さ･･････その全てが、この街では手に入る。


　無論、金さえあれば･･････という大前提があるが。


「佐々木さん。今晩は御協力、感謝いたします」


　制服姿の警官が、私服刑事に敬礼をしていた。


　見てくれは･･････高校入学初日？


　顔が幼く、小さくて色白。


　目がクリンとしており、肌はモチモチしている。



「いえいえ。本官としても、噂には聞いていた半グレグループの逮捕に力を貸すことができて良かったです」


　そんなガキンチョのような刑事の後ろには･･････死屍累々。


　首・手首・足首・腰などを特殊警棒で強かに叩かれた悪漢共が、ごろりと路上で倒れている。


「流石は機動隊の中でも選りすぐりの達人･･････『示現流じげんりゅうの佐々木』の異名は流石のひと言に尽きますね！」


「いやいやそんな･･････おだてないで下さい」


　なんて言っているが、片手に持っている警棒を器用にくるくるっと回すと、腰のベルトに差し込んだ。


　この警棒一本で、半グレひとつを潰してしまったのだ。


　しかもひとりで。


「驚きましたよ！　突入の時に楯も防具もなしで一気に突撃したんですから！」


「ははは･･････出しゃばりました」


「いえいえ！　そんで私たちがようやく追いつくと、半グレ全員が無力化されてるじゃないですか！！　信じられない光景でしたよ！！」


「褒められると、むず痒いですよ･･････」


「アレを見て褒めるなって方が無理ですよ！！　天下一ですね！！」


「そこら辺で勘弁して下さい･･････」



　こげ茶色のジャケットを羽織ると、佐々木は制服の警官たちに後片付けを任せた。



「では、よろしくお願いします」


「何度も言いますが、今回の大捕物、御協力ありがとうございました！！」


「またなにかありましたら、よろしくお願いいたします」