死が二人を分かつまで

KAI

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”アイドル篇”

【閻魔の体得】

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 今度はゆっくりと、動作を確認しながら行う。



「こうです。挟みます」


「はい」


「で・・・・・・突く!」



 コツン!



「うぐっ!」



 また視界が真っ白に・・・・・・



 気がつけば、腹を痛めたかのように前屈みになっていた。



「あとは煮るなり焼くなり・・・・・・好きにできる」


「はい・・・・・・!」


「次は、私に技を使用しなさい」



 見よう見まねで・・・・・・コツン!



「違う違う・・・・・・あと少し目の近くです」


「はい・・・・・・」



 コツン!



「惜しいです・・・・・・押すと柔らかい部分があるので数ミリだけ動かしてください」


「分かりました・・・・・・数ミリ・・・・・・」



 コッ!!



「つぅ~!」



 芥川が皮ごとレモンをほおばったかのような、とんでもない顔になった。



 まさしく・・・・・・閻魔?



 やはり、芥川のネーミングセンスは形から入るタイプだと、弟子たちは思った。



 とにもかくにも・・・・・・彼が言った通りに、前屈みになった。



 カンは見逃さずに・・・・・・



 シュッ!



「おっと、危ない」



 受け止められた。



「って! 話しが違うじゃないですか!」


「目が見えずとも、来ると分かっていれば防ぐのは簡単です」



 自分でいくつかのツボを刺激して起こっている障害を取り除くと、芥川は話し始めた。



「相手は私よりももっと大きい。二メートルですからね。しかし、飛びついてでも当てなさい」


「はい」


「当てさえすれば勝ちです・・・・・・とは言ったものの、演技であって実戦ではないので理論上という前提になりますが、カメラにバッチリ映える大技になりますよ♪」


「はいっ!」


「あと三日・・・・・・他の技にプラスして『閻魔』を何十回も繰り返してもらいます。本番の撮影では、カッコよく魅せる動きを心がけて・・・・・・なんて、アイドルにこんな言葉は、釈迦に説法でしたか」


「いえ! ありがとうございます!!」


「では皆様お立ちになられてください! 各々稽古を再開! 一挙手一投足に入魂!!」


「「「はいっ!!」」」



 もう、最初の頃の脆弱なアイドルの姿はいない。



 立派な芥川一門は、稽古に明け暮れたーーーー


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