死が二人を分かつまで

”アイドル篇”

【閻魔の威力】

　床が波打っている･･････



　子供の頃、遊びに連れて行ってもらった、巨大なトランポリンの上のようだ。



　安定しない。



　地震！？



　ふらつき･･････尻から地面に落ちた。



　目の前の芥川は･･････霞んで見えている。



　靄がかかっているかのようだ。



　どうなってる！？



　自分の身体！？



「落ち着いて･･････目を閉じて、深呼吸してください」



　言われた通りにした･･････



　少しすると、波打っていたはずの地面が、硬い板張りに戻り、立つことができた。



「な、何をされたんですか？」


「この拳の形を見てください」



　ふと見ると･･････普通の握り拳じゃない。



　折り畳まれた人差し指・中指の上に覆い被さっているはずの親指が･･････クワガタのアゴのように尖って飛び出している。



「コレ。覚えてくださいね」


「何なんですか？」


「親指の関節で、顔の上部にある痛点を突きました」



　芥川が自分の頭をコツコツとつついている。



「目尻の後ろ、しかしこめかみの数ミリ前･･････骨と神経の狭間･･････そこにピンポイントに当てる」


「するとどうなるんです？」


「鋭い痛み＋視神経の異常を来すツボでしてね。両側から突く･･････すると、痛みと痺れで反射的に顔面の筋肉が硬直する･･････その顔相がまさしく『閻魔えんま』のようなので名付けました」


「なるほど･･････」


「で･･････これで終わりじゃない。この痛点を極めるとフラッシュバン･･････閃光手榴弾を喰らったのとほぼ同じ現象が起こります」


「フラッシュバン？」


「強烈な閃光を浴びると人間はどうなるのか･･････反射的に前屈みになってしまうのです」


「･･････？」


「こればかりはどうしようもない･･････どれほど鍛えようとも、痛みに強かろうとも･･････人体の反射は止めようがないのです」


「で･･････？」


「自然とめちゃくちゃ塩梅の良い位置に、顔面がセットされますので、膝を思い切りめり込ませなさい」


「！？」


「さすればゲームセット･･････これが『閻魔』の全てです」