死が二人を分かつまで

KAI

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”VS最強編”

【新年の抱負】

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「今年もよろしくお願いいたします」



 芥川は深く礼をしていた。



 正面には、セツナと・・・・・・新樹が。



 三が日明けの、四日。



 今日から、稽古が始まる。



「新樹さん。足は大丈夫ですか?」


「はいっ! 完全に治りました!!」


「よろしい・・・・・・」



 今年初めての稽古とは何をするのか・・・・・・?



「テレビで・・・・・・白真会の寒中稽古が報じられてましたねぇ」


「はい・・・・・・相変わらず、真冬の海に向かって正拳突きしながら・・・・・・」



 まさか・・・・・・それを!?



「白真会の真似をするつもりはありません」


「・・・・・・じゃあ、なにを?」


「ふむ。今年の抱負として・・・・・・護ってもらいたいことがあるのです」


「はあ・・・・・・」



 どんな金言が出てくるんだ!?



 それを待っていた。



 だが・・・・・・



「お二人とも、スマートフォンを持ってきて下さい」


「は・・・・・・い」「・・・・・・(コクリ)」



 二人はペットボトルとタオルと共に置かれている、スマホを持ってきた。



「では・・・・・・そうですね~・・・・・・話しに出てきましたし、『空手』と検索してみてください」



 意図が分からないが・・・・・・とりあえず、二人は『』と検索欄に入力する。



「いかがですか?」


「近くの・・・・・・道場の情報が出ましたけど・・・・・・」


「検索欄のサジェスト・・・・・・すなわち『予測検索』欄を読んでご覧なさい」


「ええっと・・・・・・」



『空手 道場』



『空手 



『空手 流派』



「こんな感じです」


「・・・・・・どう思います?」


「え・・・・・・?」


「お二人は去年、空手道白真会四段 沼田氏の生の姿を見ましたね?」


「はい」


「さて・・・・・・弱いと思いました?」


「いいや・・・・・・めちゃくちゃ強いと・・・・・・」


「ですが・・・・・・大勢はそうとは思っていない」



 芥川は続ける。



「では・・・・・・合気道と検索してみてください」



 ピッピ・・・・・・



『合気道 道場』



『合気道 



『合気道 女性』



「また出てきたでしょう・・・・・・質問です。私がチラリとお見せした、合気術・・・・・・弱かったです?」


「いえいえ・・・・・・」


「宇嶋先生にいたっては・・・・・・途方もないですよ」



 次は・・・・・・



「柔道・・・・・・と」



『柔道 怪我』



『柔道 



『柔道 試合』



「どうです? 柔道の黒帯と相対して・・・・・・弱いと感じると思います?」


「いや・・・・・・それはないんじゃ・・・・・・」


「そろそろ飽きてきたでしょうから、本題に・・・・・・強い弱い・・・・・・そんなものは外の人間には分かるわけない」



 芥川が微笑みながら・・・・・・



「日本の国技『相撲』ですら、弱いと言われる・・・・・・サジェストに出てくるということは、大勢の人間がそう検索しているという証拠です」


「そうですね」


「その二つの文字で・・・・・・がいる」


「逃す?」


「たとえば、自宅近くに空手の道場がある・・・・・・強くなりたい・・・・・・そう願い、何の気なしにググってみる・・・・・・するとこう出る。弱い、と」


「はあ」


「大勢から『』と断じられている・・・・・・判断が揺らぐ・・・・・・人生も変わる」



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