死が二人を分かつまで

”各々の年越し”

【各々の年越し②】

　東京新宿区ーーーー



「オドレら！！　今日は無礼講じゃぁ！！」


「「「オオッー！！」」」



　大晦日の午前中から飲みまくっていた仁侠会会長　丹波　市郎が、酒瓶片手に宴会用の部屋で叫んでいる。



　暴対法施行後、ヤクザが組で宴会をしようと料亭を貸し切りにすることも減った。



　ゆえに、仁侠会は自分たちのビルに、一フロアぶち抜いて宴会場を作ったのだ。



　こうしてしまえば、カタギの目も警察の目も気にせずに騒げる。



「ギャハハ！！　明日のことなんぞ気にせんと飲みまくれぇ！！　ワシももっと飲むでぇ！！」


「親父。三日には本家での新年会がありますので、騒ぐのは今夜が最後にしたほうが･･････」


「ンなこと気にしとったら、湿気てまうで関ぃ！！　お前も飲まンかい！！」


「はいはい。では、お言葉に甘えて･･････」



　スーツ姿の関が、ドンっと彫刻のような形をしている不思議な酒瓶を置いた。



「ん？　なんやコレ？」


「最高級のブランデーです。お言葉に甘えて、組の経費から出させてもらいました」


「･･････いくらや？」


「そんなこと気にしてしまうと、味わいが変わってしまうじゃないですか」


「･･････ワシも飲んでええか？」


「ダメです。コレは俺のです」


「なんやて！？　会長命令や！！　ひと舐めくらい･･････」


「親父･･････『今日は無礼講』と言いましたよね？　極道に二言はないでしょうね？」


「うぐぐ･･････分かったわ！！　好きにしんしゃい！！」


「では･･････」



　パッ･･････



　関はさらに銀色の金属チューブを取り出した。



　そこから、葉巻を一本取り出すと、カッターで切り、火をつける･･････



「それは･･････？」


「俺の楽しみです。コニャックによく合う･･････」


「･･････いくらや？」



　上に戻るーーーー