死が二人を分かつまで

”各々の年越し”

【瞬殺】

『ルールはどうなっているの？』


『キックボクシングのルールでいいって、ブラインが了承したんだ･･････だけど、その記者会見でとんでもないことを言った』


『なんて？』


『『俺は、ボクシングしかしない』とだけ･･････つまりは、キックを使わないって宣言したんだよ』


『じゃあ不利ね』


『さぁどうかなぁ･･････でも、その宣言を聞いた北谷は『キックを舐めてる』ってブチ切れてたよ』


『怒りっぽいのね』



　さて･･････



　いよいよゴングが･･････



　！？



『おおっと！？　さっそく、北谷選手が得意の膝蹴りをーーーー』



　ガッ！



　北谷の鋭い膝を腕で抑え、至近距離に･･････



　そのままーーーー



　ガコンッッ！！



『ッッ！！　ブラインのダイナマイト・アッパーが炸裂ゥゥゥ！！！！』



　ダイナマイト･･････と形容するに遜色ないほどの威力。



　喰らった北谷選手は無理やり曲げた竹のようにしなり、戻ってきたかと思うと、そのまま突っ伏した。



『ダ･･････ダウゥゥゥン！！　開始十秒でダウン！！』



　レフェリーが微動だにしない北谷に近寄り、肩を揺すった。



　そして、首を横に振った･･････



　カンカンカーンッッ！！



『なんとなんと！！　十秒KOォォォ！！　強い！！　強すぎるぞジャック・ブライン！！』



　あっけなさ過ぎる･･････



　北谷も充分に積み上げてきた戦歴がある。



　証明の必要もない、名実ともにチャンピオン。



　その強者が、十秒で･･････しかも一発で失神した。



「･･････クックック」



　芥川が笑い始めた。



「強い･･････いやはや、アレは本物･･････」



　いまだに動けない北谷は担架で運び出され、ブラインがリング中央に立ち、スポンサーの社長と自分のオーナーが両脇に立った。



　スポンサーは笑顔でブラインと握手をし、そして『一〇〇〇万円』と書かれたプレートを贈ろうとする。



　がーーーー



　なんとブラインはグローブを外した手で、賞金の受け取りを拒否したのだ。