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”日常その弐”
【強さへの欲求】
しおりを挟む戻って、新樹の部屋ーーーー
「ま、丹波さんなら納得できるよね~」
「・・・・・・(コクリ)」
「大人しく取り調べで済めばいいけど・・・・・・芥川先生も必要としてる存在だし」
「・・・・・・」
あ、ヤバ・・・・・・
さっきから芥川の名前出すと、明確に表情が沈む。
やめておいた方がいいな・・・・・・
でも・・・・・・二人の共通の話題と言えば芥川くらいしかない。
改めて、自分たちの関係性の浅さを痛感した。
「えっと・・・・・・」
「・・・・・・」
どうしよう・・・・・・
スッ・・・・・・
ホワイトボードを持ち、セツナがキュッキュッと書く。
『・・・・・・強くなれれば正義・・・・・・そう思っていた』
「え?」
『もっと強く・・・・・・あの女に会ったとき、全く歯が立たないと思った。敵わないなら、真似てみようと思った』
なるほど・・・・・・
『武』の視点に立ち返れば、納得できる物言いだ。
中国四〇〇〇年の歴史の中で・・・・・・
僧侶の防衛手段から始まった武術は、体系を変えて何百何千と分かれていった。
そして象形・・・・・・
すなわち、強い生物の動きを真似る拳法が発生した。
クマ・龍・カマキリ・鶴・虎・・・・・・様々な生き物の特徴を観察・実演し、そして研究の末に人間が真似る。
『蟷螂拳』・・・・・・カマキリ拳法なんかは今だに残っている。
そのことを踏まえれば、自分よりも格上の存在を見て真似るのは、理にかなっている。
京月 冬紀・・・・・・古今東西を見渡しても、いない強者だ。
彼女を真似れば、強さへの探究になること間違いなし。
だがしかし・・・・・・師である芥川はそれを許さなかった。
『・・・・・・認められたい』
「ん?」
『護られてばかりの人生なんて望んでいない。強くなって、ゲツに・・・・・・それだけじゃない。みんなに認められたい・・・・・・』
「・・・・・・分かるよ」
「・・・・・・?」
「僕だって・・・・・・認められたいんだ」
強いと思われたい。
強そうと見られたい。
誰にも文句は言わせない。
そんな、夢物語のような・・・・・・目標。
そこに向かって、全力で走る。
他の人間はベッドで眠っているかもしれない。
快適な部屋でゲームに興じているかもしれない。
漫画を読んで爆笑しているかも。
それでも・・・・・・強くなりたい!!
飽くなき欲求・・・・・・
強さへの欲求不満・・・・・・
恋い焦がれるこの想い・・・・・・
なかなか、同好の士はいない。
だが、目の前にいる。
僕ら二人は・・・・・・同じだ。
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