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”日常その弐”
【仏の顔その弐】
しおりを挟むゆっくりと、汗だくヨダレまみれのレックス・谷が起き上がった。
「君も、延々とこんなことを続けてはいけない。誰かに注がれるのはもうやめにしなさい。満たされていない誰かに、水を注いであげるのじゃ・・・・・・よいな?」
「・・・・・・」
「・・・・・・ほれ」
ガコンッッ
ガコガコンッッ
手首・肩の関節が治された。
「大手を振って、帰るがいい・・・・・・君の人生はまだまだ長い。無駄に浪費する暇はないぞ?」
「・・・・・・つぅ・・・・・・」
くるり・・・・・・
宇嶋が門下生たちのほうへ、体を向けた。
「さて、ワシの演武はどうじゃった?」
パチ・・・・・・
パチ・・・・・・パチ・・・・・・
パチパチパチパチ!!
「うむ! これぞ合気じゃ!! カッカッカ!!」
ーーーー
ヌゥ!!
宇嶋の背後ーーーー
目がイッているレックス・谷が立ち上がった。
「う・・・・・・うがぁぁぁぁ!!!!」
両腕を拡げ、口を大きく開けて襲いかかる!!
シュッッ!!
黒い影が、神速で二人の間に割って入った。
「そろそろ寝なさい」
ガキョッッ!!
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
ドサッ・・・・・・
芥川だった。
目にも留まらぬ早さの蹴りを、垂直に放った。
レックス・谷のアゴに見事命中。
そのまま彼の意識は忘却の彼方へと飛んでいき、倒れたのであった。
「・・・・・・!!」
「カメラマンさん」
「は、はい・・・・・・」
「二度とこのような無礼はせぬように。あと・・・・・・そこ」
レックス・谷の作った水たまり。
「綺麗な雑巾で掃除しておきなさい。いいですね?」
「わ、分かりました!! い、以上で今日の配信は終了で~す!! みなさん、チャンネル登録高評価!! よ、よろしくお願いします!!」
ピッ!!
カメラの録画が終わると、即座に自分の着ていたブランド物のジャケットを手に巻き・・・・・・
「綺麗にします・・・・・・綺麗にします・・・・・・!」
取り憑かれたかのようにブツブツ言いながら、ジャケットで畳を拭き始めた。
「ふぅ・・・・・・」
「のぅ・・・・・・芥川」
「なんでしょう?」
「・・・・・・お主は~!」
パスン・・・・・・
力のこもっていない手で頭を叩かれた。
「ここは合気術を身につける道場じゃぞ!! なに蹴りで終わらせてくれるんじゃ!!」
「ああ・・・・・・すみません」
こうして、厄介者たちが立ち去ると、一般部の稽古が始まった。
ネットでは尋常ではない早さで、今日の出来事が拡散。
そして起こった奇跡的なほどの現象!!
『レックス・谷のぶっ飛ば~す チャンネル』なんと一日で五〇〇〇〇人の登録解除の嵐!!
彼の配信者としての人生は敗北を迎え、名声は地に落ちたのであった。
だが、もしも彼に救いの道があるとすれば、本物の『武』に二度も触れて尚、生きていること・・・・・・
その超幸運を、活かせるように願うばかりだーーーー
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