101 / 270
”日常その弐”
【宇嶋流 合気術】
しおりを挟むとーーーー
スッ・・・・・・
宇嶋が両腕を前へかざした。
手は開き、上下に正中線に沿って構えている・・・・・・
「!?」
この刹那・・・・・・レックス・谷が見た物は枯れ葉のような老人じゃなかった。
人間サイズの・・・・・・『ウニ』
鋭利で頑丈なトゲが全方位へ伸び、危険極まりない鎧で護られている。
「えぇ・・・・・・?」
一本一本のトゲが見えるぞ・・・・・・
もしも・・・・・・殴ったら・・・・・・手に風穴が開く。
蹴ったら・・・・・・足はもう使えない・・・・・・
殺す気じゃない・・・・・・倒すつもりもない・・・・・・まさしく『身を守る術』だ・・・・・・
仕掛ける気力すら奪われる。
「・・・・・・っと!! ちょっと!! 谷さん!!」
「えっ・・・・・・?」
「早くやっちゃってくださいよ!! 煽りコメがドンドン来てますよ!!」
「あ・・・・・・ああ!!」
もう後戻りできない・・・・・・笑いものになんてなって・・・・・・たまるか!!
「ちくしょぉぉぉ!!」
殴る蹴るもできない・・・・・・
咄嗟の判断。
緊急避難的な一手・・・・・・
ガシッ!!
トゲの隙間を縫って、着物の襟を掴んだ。
「あ・・・・・・終わった」
生徒の誰かが言った。
武術家の襟を握る・・・・・・その真の意味を知る者にとって、当然のコメントだった。
スリ・・・・・・
カサついた骨と皮しかない宇嶋の指が二本・・・・・・レックス・谷の手首にひっかけられた。
ぎゅるんっっ!!!!
!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
天地が・・・・・・地面と天井が・・・・・・自分たちを囲んでいる人々が・・・・・・
ジェットコースターかのように急回転してぐるぐるとーーーー
ドウッッ・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
「ーーーーであるから、体の大小は関係ないのじゃ。非力ならば力を借りればいい。何の『力』かじゃと? 何でもイイじゃないか・・・・・・『重力』に、相手の『腕力』に、『作用する力』などなど・・・・・・なぁんでも使えばええ」
!!
天井を見上げている・・・・・・
てことは・・・・・・
寝ている・・・・・・?
何でだっけ・・・・・・
嗚呼・・・・・・そうだ・・・・・・道場破りに来て・・・・・・そんで・・・・・・なんだっけ?
柔道・拳法・合気道・・・・・・その他の武術の全てに通じるのが『投げ』の威力。
地球人である以上は抗えない重力・自分の体重・遠心力・・・・・・それらで地面に叩きつけられる。
一度経験すれば理解できるが・・・・・・息を吸うのも苦しくなる。
このまま起き上がりたくない。
横になったまま、誰かが運んでくれないかぁ・・・・・・
そんな気分にさせるほどの『威力』だ。
すなわち『心』までもを投げられるのである。
回復には時間がかかる。
「谷さん!」
「あ・・・・・・?」
「マジで祭りです!!」
お祭り?
いいなぁ・・・・・・屋台の焼きそばが美味しくって・・・・・・
・・・・・・?
・・・・・・違う。
「まつ・・・・・・り?」
「そりゃぁもう!! 二〇〇〇〇人見てますよ!! しかも祭り状態です!!」
「!?」
ネット用語で『祭り』・・・・・・話題のネタにガソリンをぶっかけて咥えタバコをしながら踊り狂うかのように便乗して騒ぐ、現象。それが『祭り』である。
なんで?
「谷さん・・・・・・とにかく起き上がって通用してないアピールして下さい!! じゃないと・・・・・・」
カメラマンが虫を噛んだような顔になり、一点を見つめる。
・・・・・・どこを?
そう言えば・・・・・・さっきから温かい・・・・・・
威勢良くタンクトップに半パンなんかで外出しちまったからなぁ・・・・・・寒くって・・・・・・
・・・・・・?
・・・・・・!!
「ああっ!!」
気がついたときにはもう遅い。
レックス・谷の股間は濡れ、シミになり、そして床に水たまりを作っていたのだ。
し・・・・・・失禁ッッ・・・・・・
二八歳にもなる・・・・・・大の大人が!?
そりゃぁ・・・・・・祭りにもなるわ・・・・・・
初めてじゃね・・・・・・?
全世界発信のネット生配信中に、オシッコを漏らす・・・・・・
大ニュース間違いなし・・・・・・
名声は地に墜ちた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
女児霊といっしょに。シリーズ
黒糖はるる
キャラ文芸
ノスタルジー:オカルト(しばらく毎日16時、22時更新)
怪異の存在が公になっている世界。
浄霊を生業とする“対霊処あまみや”の跡継ぎ「天宮駆郎」は初仕事で母校の小学校で語られる七不思議の解決を任される。
しかし仕事前に、偶然記憶喪失の女児霊「なな」に出会ったことで、彼女と一緒に仕事をするハメに……。
しかも、この女児霊……ウザい。
感性は小学三年生。成長途中で時が止まった、かわいさとウザさが同居したそんなお年頃の霊。
女心に疎い駆け出しの駆郎と天真爛漫無邪気一直線のななのバディ、ここに爆誕!
※この作品では本筋の物語以外にも様々な謎が散りばめられています。
その謎を集めるとこの世界に関するとある法則が見えてくるかも……?
※エブリスタ、カクヨムでも公開中。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ステュムパーリデスの鳥 〜あるいは宮廷の悪い鳥の物語〜
ましら佳
キャラ文芸
若き女宰相・孔雀。
「皇帝の一番近くに侍《はべ》り囀《さえず》る、願いを叶える優雅で悪い鳥」と呼ばれる家令という特殊な集団。
鳥の名前を戴き、内政はおろか外交にも干渉し、戦争にまで関わって生きて死ぬ家令。
皇帝の半身として宮廷で采配を振るうべく総家令を拝命したのは、齢十五の孔雀。
寵姫宰相と揶揄されながらも、宮宰として皇帝翡翠に仕えるようになる。
かつてない程優雅な総家令、最後の総家令、悪魔の王〈ルシファー〉、魔法使い、詐欺師とも呼ばれるようになる彼女の物語。
「兄弟姉妹が距離を越えて時間を越えて常に在る事を忘れないように。最後の血の一滴まで燃やして生きなさい」
家令のその掟に則って、召し上げられた少女。
いくつかの陰謀、混乱、動乱を越えて、孔雀が語り紡ぐ物語。
カナリアが輝くとき
makikasuga
キャラ文芸
四年前に都内で発生した一家殺傷事件。
裁判も終わり、被告は刑期を終えたというのに、何者かがその情報を閲覧していることが判明する。
裏社会の情報屋のレイが作った人工知能システムレイを一時的に乗っ取ったクラッカー「カナリア」は、四年前の事件の被害者であり、ある重要な秘密を握っていた。
追憶のquietの続編になりますが、単独で読めます。
・創作BLversion(セルフ二次)は個人サイト(外部URL参照)あり。事件内容は同じですが、諸々異なります。
正義の味方は野獣!?彼の腕力には敵わない!?
すずなり。
恋愛
ある日、仲のいい友達とショッピングモールに遊びに来ていた私は、付き合ってる彼氏の浮気現場を目撃する。
美悠「これはどういうこと!?」
彼氏「俺はもっとか弱い子がいいんだ!別れるからな!」
私は・・・「か弱い子」じゃない。
幼い頃から格闘技をならっていたけど・・・それにはワケがあるのに・・・。
美悠「許せない・・・。」
そう思って私は彼氏に向かって拳を突き出した。
雄飛「おっと・・・させるかよ・・!」
そう言って私のパンチを止めたのは警察官だった・・・!
美悠「邪魔しないで!」
雄飛「キミ、強いな・・・!」
もう二度と会うこともないと思ってたのに、まさかの再会。
会う回数を重ねていくたびに、気持ちや行動に余裕をもつ『大人』な彼に惹かれ始めて・・・
美悠「とっ・・・年下とか・・ダメ・・かな・・?」
※お話はすべて想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。メンタルが薄氷なんです・・・。代わりにお気に入り登録をしていただけたら嬉しいです!
※誤字脱字、表現不足などはご容赦ください。日々精進してまいります・・・。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。すずなり。
護堂先生と神様のごはん 護堂教授の霊界食堂
栗槙ひので
キャラ文芸
考古学者の護堂友和は、気が付くと死んでいた。
彼には死んだ時の記憶がなく、死神のリストにも名前が無かった。予定外に早く死んでしまった友和は、未だ修行が足りていないと、閻魔大王から特命を授かる。
それは、霊界で働く者達の食堂メニューを考える事と、自身の死の真相を探る事。活動しやすいように若返らせて貰う筈が、どういう訳か中学生の姿にまで戻ってしまう。
自分は何故死んだのか、神々を満足させる料理とはどんなものなのか。
食いしん坊の神様、幽霊の料理人、幽体離脱癖のある警察官に、御使の天狐、迷子の妖怪少年や河童まで現れて……風変わりな神や妖怪達と織りなす、霊界ファンタジー。
「護堂先生と神様のごはん」もう一つの物語。
2019.12.2 現代ファンタジー日別ランキング一位獲得
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる