死が二人を分かつまで

KAI

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”日常その弐”

【天才は青竹】

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「はぁ~」



 芥川は袴から着替え終わると、作務衣姿で頭を抱えていた。



「どうして・・・・・・怒鳴ったりしちゃったんでしょう・・・・・・自分が嫌になる・・・・・・」



 ここは『宇嶋流 合気道 身守りの会』の本部道場。



 たった今、少年部の稽古が終わり、一般部の稽古が始まるところだった。



「スポンジのようなあのだ・・・・・・いらぬ物まで吸い取る危険性を、もっと早く気がつくべきでした・・・・・・はぁ・・・・・・」



 ポンッ・・・・・・



 ロッカーから出てきた芥川の肩を、誰かが叩く。



「どうしたのじゃ? そんな塩をかけられたナメクジみたくなりおって」


「宇嶋先生ぃ・・・・・・」





 かくかくしかじか~~~~





「・・・・・・うむ。お主が悪い」


「ですよねぇ・・・・・・」


「まったく・・・・・・悪食にしたくなかったら、己自ら良質な物を与えんかい」


「仰るとおりです・・・・・・」



 二人は、道場の奥にある、茶室で話し合っていた。



 というか・・・・・・芥川が怒られている。



「てか、先生にセツナさんの才能について初めてお話ししたのに驚かないのですね」


「当たり前じゃ。お主の二倍生きておるんじゃぞ? 驚くことのほうが少ないわい」


「流石です」


「はぁ・・・・・・十年にひとりはおるのじゃ。そういう『天才』がの。そう考えるとワシはこれまで八人は見てきた」


「なるほど・・・・・・」


「よいか? 天賦の才を持つ者は、たしかに上達が早い。他者が嫉妬し、師が負い目を感じるほどにの。しかし『』という言葉がある」


「はい」


「どんなに上達が早うても、正しく真っ直ぐでなければ、良い竹にはなれぬ。太陽を浴びさせ、栄養を与え、水をやり・・・・・・そうして大切に大切に育ててやっと・・・・・・立派な青竹が天を貫くのじゃ」


「はい・・・・・・」


「成長が早い分、むしろそれが足枷となる。想像してみよ・・・・・・一年で三歳年をとる人間がいたとして、時間を無駄にすると思うか?」


「あり得ませんね」


「毒はすぐに吐き出させ、善を食べさせよ。そうでなければグニャグニャに曲がった大木になってしまうぞ?」


「はい・・・・・・」


「曲がってしまった木を正すこと容易くはない・・・・・・そうまさに・・・・・・」



 その時だーーーー



「うわー!!」



 ドンッ!



「おいおい!! こんな低レベで護身なんてできるのかよ!!」



 道場の方から、騒がしい声が聞こえてきた。



「・・・・・・まさに、これから会う愚物のようにな・・・・・・よく見ておけ芥川よ」


「はい」

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