死が二人を分かつまで

KAI

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”芥川 月の誕生”

【空術の復活】

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「ゴボッ・・・・・・ゴプッ・・・・・・」


「・・・・・・!! 先生!!」



 まだ息があった!!



 駆け寄り、師匠の体を抱きかかえる。



 ・・・・・・知っている人間の重さじゃない。



 軽すぎる・・・・・・



 だって・・・・・・



「先生ィィィ!!」



 四肢が・・・・・・牛に引かれたかのように千切られていたからだ。



 根元から、力づくで引っこ抜いた・・・・・・



 そのような・・・・・・傷とも言えない・・・・・・手足があった跡地・・・・・・



「ゴホ・・・・・・にして、ぽいっ・・・・・・かぁ・・・・・・」



 病院に・・・・・・救急車・・・・・・



 ダメだ・・・・・・間に合わない・・・・・・



「あっぱれ・・・・・・ヒヒヒ・・・・・・ヒャハハハ!!!!」



 スイッチが入ったように笑い出すと同時に、カタカタと痙攣を始めた。



「手足がない!! 寒くなってきた!! 面白い感覚だぁ!! ヒャハハハ!!!!」


「先生!! 安静に・・・・・・」


「完成だ・・・・・・殺人術『空術』の・・・・・・復活ッッ!!」



 天にも昇りそうなほど蕩けた顔。



「コレでいい・・・・・・コレじゃないとダメ・・・・・・」


「先生・・・・・・冬紀は・・・・・・」


「・・・・・・ありがとう。芥川君」



 十年以上の付き合いだったが、初めてかも知れない。



 こんなに優しい目で、人を見ることができるのか・・・・・・



「君の愛情のおかげで、あの子は開花した!! お礼を言っても、足りないよねぇ!!」


「先生・・・・・・」


「・・・・・・卒業試験・・・・・・」


「え・・・・・・?」


「最後の最後・・・・・・だね・・・・・・私の心臓の位置、分かるでしょ?」


「ダメだ・・・・・・それだけは・・・・・・」


「なら、君は半人前・・・・・・卒業は認められないよ?」


「・・・・・・ええ。結構ですとも」



 芥川の目には、決意がみなぎっていた。



「私は私のやり方で、『武』を貫く・・・・・・そして、冬紀を止める」


「面白いこと言うねぇ・・・・・・あの子に勝てるとでも?」


「強くなります」


「フフフ・・・・・・楽しそうだねぇ・・・・・・是非見てみたいけど・・・・・・もう死ぬからねぇ・・・・・・」


「・・・・・・先生、最後に何か、言い残したいことは?」


「・・・・・・ないよ。芥川君」



 ニッコリと笑った。



「人を殺すすべを教えてるんだから、いつでも死ぬ覚悟はできてる。当たり前だよね・・・・・・だけど、どうせ殺されるなら、君か冬紀か・・・・・・どっちかがよかったけど、願いが叶ったよ」


「・・・・・・」


「まあ・・・・・・多分、私地獄行きだからさ、一瞬になっちゃうだろうけど・・・・・・君の親御さんに謝ってくるから。息子さんは元気に育ちましたって、報告したら、大人しく阿鼻叫喚にでも墜ちるからね」


「・・・・・・はいっ」


「さようなら・・・・・・芥川君」



 ガクッ・・・・・・



 ・・・・・・



 ・・・・・・



 ・・・・・・



 そこからの、芥川の行動は血が通っていないのではないかと思えるほど、冷静なものだった。



 警察に通報。



 事情聴取。



 冬紀の犯行の目撃者として証言。



 主がいなくなった道場の、解体手続きまで、ベルトコンベアのごとく流れるように行った。



 冬紀は、実の父親を殺害した『殺人事件重要参考人』として、全国に指名手配された。



 芥川は、いつの間にか冬重に振り込まれていた多額の資金を元手に、自身の道場を設立。



 修練を積むと同時に、警察・ヤクザ・武道関係者たちとのパイプを構築して、情報収集に明け暮れることとなった。



 あの日に・・・・・・愛情を置いてきたのか?



 ・・・・・・それは答えが出ない。



 が・・・・・・冬紀を止めることができるのは、自分しかいない。



 武術家 芥川 月の誕生だった。


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