死が二人を分かつまで

”芥川 月の誕生”

【死がふたりを分かつまで】

「私ね･･････今、本当に幸せ･･････」


「･･････ッッ！！」


「だって私には･･････あなたがいる」



　彼女はゆっくりと、足音を立てずに近寄ってきた。



　そして･･････



　芥川の胸に、顔を押し当てる。



　ヌチャ･･････とした、血の感触。



「うふふ･･････心臓がドクドクしてる♪」


「こんな･･････こんなことを･･････」


「愛してるわ･･････んっ･･････」



　キスをした。



　事件現場とは思えないほど、情熱的で煽情的な口づけ。



　舌を絡ませ･･････



　唾液を交換し･･････



　糸を引きながら、口を離す。



「ねえ･･････どうする？」


「･･････？」


「私と一緒に行かない？　もっと･･････もっと！！　狂いましょう！！」



　嗚呼･･････もう救えないのだ･･････



　芥川の目には、涙が溜まり流れ出ていた。



「何を泣いてるの？　哀しことでもあった？」


「･･････ッッ！！　冬紀ィィィ！！！！」



　バシュッッ！！



　鉄板すらも貫通する、貫手ぬきてーーーー



　どこを狙えばいいのか、幾度も教えられていたーーーー



　万が一にも、外すことはないッッ！！



　･･････



　･･････



　･･････



「･･････殺さないの？」


「･･････」



　彼女の豊満な胸の前で、手が止まってしまった。



　絶好のチャンスを･･････自らの手で潰した。



「･･････できない･･････」


「ふ～ん･･････だったら･･････」



　彼女に殺されるのか･･････



　それもよし･･････



　さあ･･････ヤレ･･････



　冬紀は、紅色の唇を芥川の耳元に持ってきた。



「だったら、あなたが死ぬまで、ずぅっと付き纏ってあげる･･････」


「なに･･････？」


「結婚したとき･･････一緒に誓ったじゃない･･････『死が二人を分かつまで』･･････」



　ぺろり･･････



　耳の中まで、舐められた･･････



　獲物の味を確かめる･･････獣のようだった。



「じゃあね♪　月君♪」



　タッタッタ･･････



　残された芥川は、ただ立っていただけだった。



　何もできなかった。



　･･････止めることも･･････殺すことも･･････



「ゴボッ･･････ゴプッ･･････」


「･･････！！　先生！！」