死が二人を分かつまで

KAI

文字の大きさ
上 下
55 / 263
”記憶に残る一日篇”

【一番弟子 新樹】

しおりを挟む

「っしゃあ!! 弱者は淘汰される! レックス・谷!! いっきま~す!!」



 最初に動いたのはレックス・谷だった。



 右ストレートを・・・・・・



 ガスン!!



「!!!?」



 レックス・谷の膝が曲がった。



 膝の皿に、新樹の足刀が置かれている。



「ぐわぁぁ!!」



 レックス・谷が倒れると、そのまま馬乗りになる新樹。



「決着は・・・・・・決めてなかったな」


「チィ・・・・・・!!」



 張り手をくり出すも、新樹が逆に腕を掴んだ。



 そして足を絡めて、肘を固定する。



 グイッ!



 新樹の足はクロスされた状態でレックス・谷の顔付近に伸ばされ、膝は肘に巻き付き、手は相手の手首をがっちりホールドしている。



・・・・・・痛いよ」



 ググッ・・・・・・



「ぎゃ!! ギブギブ!!」



 新樹の足をタップして、ギブアップした。



 新樹の・・・・・・だ。



 あまりにあっさりとした戦いに、セツナはポカンとしている。



 パチパチ・・・・・・



 パチパチ・・・・・・



「見事見事!」



 !?



 芥川の声だ。



 しかし、道場を見渡しても、芥川の姿はない。



 ミシミシ・・・・・・



 天井から、軋む音がする・・・・・・



 仰向けに倒れていたレックス・谷が、初めに気がついた。



「うわっ!」



 続けて新樹・セツナ・カメラマンが上を見上げる。



「いやはや。お強くなられましたねぇ~感心感心!」



 芥川が四メートルはある高さの天井に立っている・・・・・・



 言葉として正確ではないのかもしれないが、こう表現するしかない。



 芥川の頭が下にあり、重力を無視したように平然と足で天井の上に立っているのだ。



「せ、先生!!」


「新樹さん。確かに関節技に持っていったのは見事! ですが、手心を加えて緩く絞めましたね? ダメですよ~本気でやらなくちゃ~」



 逆さまのまま、賛辞と批評をしてくる。



「はい・・・・・・で、先生は何してるんですか?」


「さ、逆さまに!?」



 レックス・谷とカメラマンは驚きのあまり視線が外せないでいる。



「んん~? 教えたじゃないですか~」



 足の指がギシギシと鳴るほど天井を噛んでいた。



「『足噛そくごう』・・・・・・足で噛んでいるんです」


「・・・・・・で、理由は?」


「新樹さんの成長を間近で見たかったんですけど、私が現れるとそちらの方々が挑んできちゃうかなぁと思いまして、見つからないように天井に張り付いて見物させていただきました」



 よっと・・・・・・



 芥川は足の指を離すと、宙で一回転して、地面に着地する。



「さて・・・・・・お望み通り道場主が現れましたが・・・・・・いかがします?」



 レックス・谷は膝と肘に痛みがあるが、さほどのことはない。



 しかし、妖怪のようなこの作務衣の男が発しているオーラが、自分や過去に立ち会ってきた相手とは比べものにならない・・・・・・



「や、やめときます」


「ええ~楽しみにしてたんですけどねぇ」




 こうして、新樹の初陣は勝利で終わった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

女の子にされちゃう!?「……男の子やめる?」彼女は優しく撫でた。

広田こお
恋愛
少子解消のため日本は一夫多妻制に。が、若い女性が足りない……。独身男は女性化だ! 待て?僕、結婚相手いないけど、女の子にさせられてしまうの? 「安心して、いい夫なら離婚しないで、あ・げ・る。女の子になるのはイヤでしょ?」 国の決めた結婚相手となんとか結婚して女性化はなんとか免れた。どうなる僕の結婚生活。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

親戚のおじさんに犯された!嫌がる私の姿を見ながら胸を揉み・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
親戚のおじさんの家に住み、大学に通うことになった。 「おじさん、卒業するまで、どうぞよろしくお願いします」 「ああ、たっぷりとかわいがってあげるよ・・・」 「・・・?は、はい」 いやらしく私の目を見ながらニヤつく・・・ その夜。

処理中です...