5 / 12
5
しおりを挟む「千崎侑李、25歳、G大学法学部卒、父親がαで財務省の官僚で母親はΩながらミセス誌の人気専属モデル。絵に描いたような優良物件じゃん。」
「これ逃したら本当に永遠の独身貴族よ、鷹倫くん。」
その日の夜、山崎と堀田に連れられて鷹倫は珍しく居酒屋で飲んだ。
庶民的な居酒屋で、αだけの3人は店内でもかなり目立っていた。鷹倫はこの目線が嫌で滅多に夜は出歩かないのだった。
鷹倫は2人から、「番」である千崎と今後どうするか、それより早く身を固めろと説教される。うんざりしつつ聞き流し、チビチビと芋焼酎を飲んでいると、賑やかな団体が入店してきた。
「ったくよー、さっさとクビにしちまえよな、あのババア!」
「まぁまぁ落ち着いて。」
「そうそう!ヤな事はぜーんぶビールで流しましょーよ!」
鷹倫は思わず芋焼酎をダラっと零した。その姿に山崎と堀田は驚き、堀田がおしぼりで鷹倫の口を拭った。
「松中⁉︎どした?」
「何急にぼーっとしちゃってるの?」
「……嘘だろ……。」
運命だ、と鷹倫は思った。
「あ。」
鷹倫が視線を送っていたら、向こうも鷹倫に気がついたようだった。
「昨日はどーも。」
「あ……あの……。」
「何、佐竹?知り合……うわぁぁぁぁ!超イケメンじゃん!」
「何々、イケメン⁉︎うっわ!すっげーイケメンじゃん!」
「何で佐竹が知り合い⁉︎マジで隠してんじゃないわよー!」
「違ぇよ!昨日エアコン取り付け行ったとこの客だよ!」
鷹倫が軽く会釈をしただけで、連れの人たちは群がって彼を問い詰めた。
「苳也くーん、お口が悪いでちゅよー。」
「やかましいわ!…つかアンタも何でこんな安居酒屋にいんの?」
「え、あぁ、今日は同僚に誘われて呑みに来ただけです。」
「へー、意外だな。αってこういうトコじゃ呑めねぇって思ってたし。あ、昨日の詫びだ、一緒に飲もうぜ。1杯奢る。」
苳也は豪快にニンマリと笑った。
ドクン ドクン ドクン
山崎と堀田は鷹倫から放出されるフェロモンを感じ取って飲んでいたものを吹き出しそうになった。
「ちょ、ちょっと、鷹倫くん?」
「まさか…あのちょっと小柄な人のこと好きなの⁉︎」
「……好き、なのかもしれない……。」
「いやいや!あの人βじゃん!」
「でも、今日、千崎にあった時より嬉しいんだ!」
「ちょっと……マジで?」
鷹倫は呆然とする2人を置いて、手招きしてくる苳也の方に駆け寄って行った。その背中を見ながら2人は困惑した。
「ちょっと……そんなん、無理だってば。」
「聞いたことないわよぉ…αがβに惹かれるなんて……女の子ならまだしも男の子だし……。」
「松中ぁ……それは無しだって。報われないんだぞ、βの男なんて……。」
24
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
エンシェントリリー
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。
なぜか大好きな親友に告白されました
結城なぎ
BL
ずっと好きだった親友、祐也に告白された智佳。祐也はなにか勘違いしてるみたいで…。お互いにお互いを好きだった2人が結ばれるお話。
ムーンライトノベルズのほうで投稿した話を短編にまとめたものになります。初投稿です。ムーンライトノベルズのほうでは攻めsideを投稿中です。
噛痕に思う
阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。
✿オメガバースもの掌編二本作。
(『ride』は2021年3月28日に追加します)
アルファとアルファの結婚準備
金剛@キット
BL
名家、鳥羽家の分家出身のアルファ十和(トワ)は、憧れのアルファ鳥羽家当主の冬騎(トウキ)に命令され… 十和は豊富な経験をいかし、結婚まじかの冬騎の息子、榛那(ハルナ)に男性オメガの抱き方を指導する。 😏ユルユル設定のオメガバースです。
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる