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青春イベント盛り合わせ(9月)

ツワブキ親子のイヤイヤ期(※)

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「いや!」
「嫌じゃないの、まーちゃん、お家に入ろう?」
「いや!」
「どうして?もうすぐまーちゃんの好きなワンワンのテレビ始まるよ?」
「いや!」
「まーちゃん…もう、はい、パパとおてて繋いで…!」
「いやあぁぁぁぁぁぁ!」

 自宅まであと数メートル、エレベーターの前で拓海は怪獣と化した茉莉と格闘していた。何故か茉莉が座り込んで動かない。そして頑なに拓海の言葉を拒否する。

 今、茉莉は俗に言う「イヤイヤ期」の真っ只中で、これは茉莉の自我の芽生えで成長の証だと拓海は頭では分かっていても中々苦労していた。

「まーちゃん!行くよ!」
「いやあぁぁぁぁぁぁ!いらなーーー!」
「いい加減にぃ……。」
「やあぁぁぁぁ!」

 重たい荷物を全て片手で持ち、茉莉の手を引っ張って立ち上がらせようと拓海は力を入れるが、茉莉の抵抗も強かった。
 そんな攻防をしていると、エレベーターが開いて見知った顔が出てきた。


「石蕗さん?何してんの?」
「あらあらあら……。」
「あ、こんにちはぁ…。」
「やあぁああ!うあぁぁぁぁ!いやあぁぁ!」

 隣の松田家の次男・智之トモユキと母親だった。松田母はこの修羅場の原因を即座に察した。

「智之、アンタ荷物持って先に帰ってな。」
「うえ⁉︎重いんだけどぉ!」
「ガタガタ言わない!」
「はいはーい。」

 智之は嫌々母の言う通りに動いて、両手が空いた母が茉莉を抱きかかえた。

「はーい、まーちゃん、ばぁばの家でお兄ちゃんたちと遊びましょーね♪」
「やぁあぁぁぁぁぁぁ!」
「やだねー、でもね、もうみんなお家に帰る時間よ?廊下さんにバイバイしようねー。」
「うう…うわーあぁぁ!」

 泣きわめき暴れる茉莉をしっかり抱っこして松田母はズカズカと進む。そして拓海の方を見て笑う。

「石蕗さん、とりあえず荷物片したらウチにいらっしゃい。茉莉ちゃんは先に預かっとくから、ゆっくりでいいわよ。」
「あ……すいません。」

 ずっと泣きわめく茉莉を上手いことあやしながら、松田母は松田家に入っていった。
 拓海は急いで荷物を持って、自宅に帰っていく。


***


 それから買い物の荷物を冷蔵庫などに片付けたら急いで松田家に向かった。インターホンを押すと、智之がドアを開けてくれ、それと同時に中から茉莉の楽しげな声が聞こえてきた。

「茉莉ちゃんのとーちゃん、なんか疲れてる?」
「う、ううん、大丈夫だよ。」
「顔色悪いぞ?」

 さすが智裕の弟、拓海の少しの変化によく気がつく。智裕も人をよく見ているのか体調面にはよく気がつくが、自分に向けられる気持ちや好意にはとことん鈍感だ。

 いつものダイニングテーブルの所へ行くと、帰宅したばかりだろう松田父が仕事着のまま(松田父は電気工事士)茉莉と遊んでいた。茉莉は何故か少し古いグローブを手にして、それを嗅いでは「くちゃーい!」と言うのを繰り返して楽しんでいる。

「うえぇぇ…それにーちゃんの昔のグローブじゃん!そんなのよく嗅げるなぁ茉莉ちゃん。」
「くちゃーい!」

 拓海は最近、茉莉が食べ物で遊んだり、散らかし放題にしたり、しっかり躾けなければいけないから叱って泣かせて「いやいや」と言われ、こんなに楽しそうな茉莉を見るのが久しぶりだった。
 そして同時に親としての自信が無くなって俯いてしまった。

「石蕗さん、ちょっと疲れてるわね。」
「あ……そんなこと。」

 横から松田母が声をかけてきたので否定したが、松田母は拓海の背中をさすって明朗に笑う。

「この年の子供は例外なく怪獣よ、疲れない方がおかしいわ。明日の日曜日はお休み?」
「はい……。」
「今日明日、茉莉ちゃんはうちで預かるから、たまには1人でのんびりと羽を伸ばしなさい。いつもお仕事だったり付き合いだったりで預かることはあるけど…それじゃあパパは休めないものね。」
「そんな、ご迷惑じゃ……。」
「いいのよ、育児も仕事も息抜きが必要、でしょ?」

 拓海はその優しさに胸が一杯になった。そして、「ありがとうございます。」と笑った。


***


 午後8時、拓海は簡単に夕飯を済ませてお風呂も入って、久々にすることもなくソファに座ってテレビを眺めていた。

(何だろう……1人って何すればいいのかな?)

 静寂が不自然で、そのままソファに横たわった。すると充電しているスマートフォンが振動しだした。ゆっくりと起き上がってスマートフォンを手に取ると、智裕からの着信だった。すぐに応対すると電話口から賑やかな子供の声がする。

『あー!茉莉ちゃん!ちょ、ちょっと!』
『とーと!とーと!』
『茉莉ちゃん!そんなきったねぇ部屋入ったらばっちいぞ!』
『テメーの部屋よりマシなんだよ!』
『だってにーちゃんの部屋、エロ本あるもん。』
『黙れクソガキ!やんのか!』
『とーと!もちもーち!』
『あ?何してんの茉莉ちゃ……あ、これ、た…茉莉ちゃんのお父さんに電話かけてっし!ちょ、智之!茉莉ちゃん、親父んとこ連れてけ!』
『はぁ?いいじゃん1回切れば。』
『きゃーん!じじー!』

 兄弟喧嘩と茉莉の暴走を呆気にとられて拓海はずっと聞いてしまっていた。静かになって数秒、智裕が「はぁ」とため息をついてやっと電話で話を始めた。

『た、拓海さん?』
「あ、えっと……ど、どうしたの?」
『あー、オフクロから話聞いて拓海さんに電話かけようとしたら、茉莉ちゃんが部屋に入ってきて追いかけた智之もずっと部屋から出なくて、そしたら茉莉ちゃんが通話開始のボタン押しちゃってたみたいで……ごめん、うるさかった?』
「うるさくはないけど……ご、ごめんね、まーちゃんが……。」

(智裕くんにまで…あーもう、やだ……怒ったって意味ないの分かってるんだけど……甘えすぎだよ俺……。)

 またも自己嫌悪に陥り、拓海は黙り込んでしまった。その異変を察知したらしい智裕が、優しく声をかける。

『拓海さん、そっち行こうか?』
「……え…で、でも、智裕くん明日も部活とか練習で朝早いでしょ?俺も久し振りに1人を満喫してるから大丈夫だよ。」
『そう?でも声が大丈夫そうじゃないけど。』

 こういう時の智裕は本当に鋭い。拓海はこれ以上の嘘が思いつかなくなった。


、玄関の鍵開けてて。すぐ行くから。』


***


 何分も経たないうちに智裕は石蕗家のドアを開けた。

「ん……はぁ、ん……っ。」
「拓海……ん…。」
「や……こ、こ……げん、か……あぅ……っ。」

 智裕はサンダルを脱いで一歩家に上がると、すぐに拓海を押し倒した。唇へのキスをしながら、拓海の服の裾から手を侵入させてきめ細やかな肌に触れる。

「やだぁ……ここ、ドア……声…んん…っ!」
「だめ、さっき嘘ついたお仕置き……。」
「う、うそじゃ……な、い……もん……。」
「……………あっそう。」

 拓海の反抗するような言葉をのみ込んだ智裕はあっさりと手を引いて拓海を解放した。

「え……。」
「だって、すっげー寂しそうな声してたから心配になったのに、大丈夫ーとか言われてさ、もういいよ。」

 わかりやすく智裕は拗ねると立ち上がって帰ろうとした。拓海は考えるより先に手を伸ばして智裕を引き止める。

「やだ!やだやだ!帰らないで……やだぁ……。」

 拓海はショックだったのか、甘えん坊モードのスイッチが入ってうるうると泣き出した。智裕はそんな拓海の顔を覗き込んで、いつものような困った笑顔を向けた。

「拓海、何したいの?」
「うぅ……智裕くんに…ぎゅーってして…ちゅーして……。」
「ぎゅーと、ちゅーと…だけ?」

 また意地悪にわざと問いかけた。拓海は智裕に抱きつき、顔をグリグリと智裕の胸板に埋めると耳を真っ赤にした。


「えっち……したい……。」


 そのオネダリができた拓海のコメカミに智裕がご褒美のキスを落とす。

「ベッド行く?」
「うん……。」

 智裕はそのまま拓海を横抱きにして慣れた寝室に運んでいった。


***


「智裕くん……。」

 拗ねた智裕に少しばかり怯えた拓海はベッドに横たえられると少しだけ震えた。智裕は拓海のTシャツを脱がせて自分もTシャツだけ脱ぐと、そのまま拓海の隣に寝っ転がり、そっと拓海を抱き寄せた。

「ふえ…?」
「あーホントだ……拓海、疲れてるね。」

 智裕は拓海の頬に手を添えて、労わるようにフニフニと触る。その感触が拓海には心地よくて、猫のように自然と智裕に甘える。

「茉莉ちゃん、何でもヤダヤダの時期かぁ……そういや、宮西んトコの双子もそんな時期あったな。」
「え、何で智裕くんが宮西くんのこと知ってるの?」
「俺と優里と大竹とヨーコさんも双子の子育て巻き添えにされたんだよ。マジで宮西のかーちゃん容赦ねぇからさ……あれは悪魔だったわ。」

 苦い過去を思い出して乾いたように笑うと、拓海をギュッと抱きしめて拓海の額やツムジに軽くキスをした。

「大丈夫、拓海はいつも頑張ってる。というより頑張りすぎ。拓海が倒れちゃったらもっと大変でしょ?」
「うん……。」
「だからこうして…俺が甘やかしてあげるから、ね?」

 甘い、甘い、キスを拓海の顔中に降らせる。

「拓海、どこ触って欲しい?」
「ん……えっと……わかん、ない…。」

 戸惑う拓海の滑らかな肌をスルスルと撫でながら、何度も唇にキスをして、智裕が拓海を組み敷く体勢になる。

「わかんないって言われるとさ、俺もどうすればいいか分かんないんだけど。」
「そんなの……って……。」


(わかんないよ……僕も……。)


***


 由比ゆい壮亮ソウスケが四高にやって来た騒ぎの日、増田から送られてきた動画を見てから、拓海はずっとモヤモヤしていた。

 2人は真摯に練習に取り組んでいるのだろうが、由比と智裕の密着度や手の位置、智裕を見つめる由比の眼が、拓海を不安にさせる。


(智裕くん、由比投手が神様だって…会えるってわかっただけであんなに緊張してて…。)


 そして夜、パソコンで何気に由比壮亮を検索したが、これが間違いだった。
 「由比壮亮」のあとに続く検索ワードが「東の松田」。恐る恐るそれを選んで、出てきた動画は由比がスポーツコーナーを解説している番組だった。


『今日の“ゆいすけチェック”はこちら!…“東の松田”・神奈川県第四高校エースの松田智裕投手です。まずはこちらをご覧ください。』

 流れる智裕の映像、解説する由比から拓海が知らなかったことばかり伝わる。
 そして一通りの解説が終わると、締めのコメントを始めた。

『これから松田智裕くんを指導して彼の技術を向上させることが僕は楽しみです。もっともっと彼は進化すると思います。なので“天才サウスポー”の成長をファンの皆様も見守って下さい。松田くん、また早く会いたいな。』


 その由比の眼差しは、増田から送られてきた動画以上の熱を帯びているようで、拓海はモヤモヤしていた気持ちの正体が不安と怒りだと認識した。


 そんな気持ちも抱えている中で、茉莉のイヤイヤが酷くなっていた。智裕への恋慕は自分勝手なものだから茉莉の前では押し殺すことを努めた。


***


(人は限界になると……こんなどす黒くなっちゃうんだね…心が……だから、わからない。どうしたら……どんなエッチをしたら、どう触れてもらえたら、安心出来るのか……。)


「わか、ん……ないぃ……っ!」
「ん?」

 拓海が戸惑っている間に、智裕はまた荒れ出した手で拓海に愛撫し、今は可愛らしく主張を始めた乳頭をチロチロと舐めて、食んで、チュウと吸っている。拓海は腕で顔を隠して悶える。

「んん……そこ、吸っちゃやだぁ……。」
「ん?やだ?」
「ん…。」

 コクコクと頷く。心臓の音を智裕には聞かれたくない。

「じゃ、ここ?」

 智裕の手は拓海の穿いてるスウェットの中を侵入した。

「ひゃうぅ…!」
「拓海の太もも…やわくて、細い……。」
「あ、あぁ……だめ……ん…っ。」
「ここも、だめ?」
「あ、うぅ……。」

 智裕はわざと困ったような顔をしながら拓海の衣服を全て剥ぎ取った。

「じゃ、ここは?」

 既に濡れていたソコを智裕が触れると、拓海は身体を震わせた。

「んはぁ…っ!や、だめぇ…。」
「んー……。」

 智裕は否定の言葉を並べる拓海から手を離した。そして何故か穿いていたハーフパンツとボクサーパンツを脱いで拓海に跨り見下ろすだけ。

「拓海のイヤなことしたくないから、俺ここでオナニーするわ。」
「へ……?」

(な、なんで……何でぇ……⁉︎)

 拓海は一瞬で頭が真っ白になったが、智裕は御構い無しにいつものように1人の慰めを始めた。切なそうに顰める表情や吐息が異常なまでに色っぽく拓海に映った。

「…抜いたら、帰るか、ら……くっ!」
「や…な、なんでぇ……。」
「だって、拓海が嫌がんの、ヤだし……ね?」

 智裕は優しい顔で拓海を見下げる。その優しい顔が拓海を追い詰める。

「いや、いやだぁ……いや…ごめんなさいぃ……。」

 拓海は感情の限界がきて泣き出してしまった。その涙を、智裕は拭わなかった。


(ごめん……拓海、さん……なんか……。)


「じゃあ、舐めろよ。」

 まるで侮蔑するような酷く冷たい声が降ってきた。拓海は許しの手段が出来たと思って、恍惚な表情で「はい。」と素直に返事し。
 膝立ちしてる智裕はそのままゆったりと腰をおろした。そして拓海は四つん這いになって、智裕の股間に顔を埋めてそのままそそり勃つ智裕のソレを躊躇いなく咥えた。

「ん……んぅ…はふぅ……。」
「なぁ、そのまま自分のシゴけよ。」
「ふへ?え……。」

 驚いた拓海は不安そうな顔で智裕を見上げた。智裕の先端と拓海の舌先は透明の糸が繋がっている様子に智裕の下半身は更に血が巡る。

「だって、俺の咥えながらさ……こんな。」
「あぁっ!」

 拓海の興奮した屹立は智裕の足のつま先で遊ばれる。全く知らない快感に拓海は全身を小さく震わせる。

「いいよ、俺へのフェラをオカズにオナニーして。」
「や、いやぁ……出来ない…。」
「もしかして拓海もイヤイヤ期?じゃあもう拓海とエッチしないけど。」
「やだやだ!するからぁ……ん、んん……。」

 拓海は再び智裕に舌で愛撫する。口内への圧迫と広がる雄の匂いと味が安心する。苦しいはずなのに、満たされる。そして震える利き手で自分のモノにも触れた。
 熱くて、酷く熱くて、智裕に興奮していることがわかる。

(やっべ……拓海さん、やっぱめっちゃ綺麗……なのに俺、こんなことさせてる……。)

(これで、僕でいっぱいになって…僕のことだけ、好きになってよ…智裕くん……他の人、見ちゃいやだ……由比さん、とか…水上みずかみくんとか…井川いがわさん、とか……やだ……僕だけ、見て。)

「ふ、ふはふ……ひ、ん……。」
「拓海、イく?」
「ん、いふうぅ……んんん……っ!」

 拓海は自分を慰める速度が速くなる。そして喉の奥まで智裕を咥えこんだ刹那、達した。達した拍子にズッと吸い上げると智裕も欲を吐き出した。拓海は出来うる限りに呑み込もうとするが、むせて咳込んだ。

「ゴホッ!ゴホッ!……はぅ…ご、ごめん……なさい…。」

(やだ…こんな、出来なかった……ぼく、ぼく……。)

 不安な目をして智裕を見ると、智裕は呆けた顔をしていた。

「え……っと……うわっ!お、俺、何を……ごめ、ごめん拓海さん!」

 泣き崩れそうになっていた拓海は慌てた智裕に優しく抱きしめられた。そして智裕の唇はチュッチュと拓海のコメカミや頸に触れる。

「んん…はう……ともひろ、くん……も、やだぁ……いじわる、しないでぇ。」
「ごめんって……なんか、また変なスイッチ入った…っぽい。」
「ふうぅ……ん…こわ、かったぁ。」
「ん、ごめんね。もうしないから、ね?拓海は疲れて甘えたいのにね…俺、ごめんね。」

 智裕は拓海を自分の脚に乗せて、まるでお姫様抱っこのように横抱きにし身体を左手で支えると、右手を唾液で濡らして拓海の秘部を丁寧に開いていく。拓海は智裕の首にしがみついて震える。

「んん、あ……はぁ……おしり…んん…。」
「まだ1本だよ…すっごい柔らかい……。」
「や、やだぁ…言わない、で…んん……っ。」

 長くて荒い指が慣れたように拓海の感じる部分に触れる。クニクニと潰されると、声を抑えることは不可能だった。

「んやあぁぁっ!そ、そこ…いやぁ…っ!」
「いや?いい、じゃないの?」
「はうぅ……ん、やぁ…だってぇ……あたま、びりびり、しちゃ……。」
「どうする?やめる?」
「やだぁ…いや、するぅ……。」

 甘えるように拓海からキスをすると、智裕は2本目の指を挿入する。拓海の声は智裕に呑まれて篭る。

「ふぅ、あうぅ…んん。」
「はぁ……拓海、指でイってみる?」
「やらぁ……いっしょ、なの……ぼくだけ、はぁ…いやぁ……っ!」

 涙を流しながら拗ねる拓海に容赦なく3本目を与えて、襞を丁寧に暴くように擦ると、拓海は全身を痙攣させて。

「あ、あ、らめぇ!きちゃ、あああぁぁぁっ!」

 ドプドプと先端から溢れ出る拓海の欲はお腹、股間、腿を伝って智裕の脚を汚す。落ちないようにと智裕に震えながらしがみ付く拓海が可愛らしい。

「挿れるよ……。」

 熱っぽく拓海に宣告すると、智裕は拓海をそのままいつもの後ろから抱きしめるような体勢をとって、天を向いた智裕の自身を拓海の秘部に挿入する。

「はああぁ……おく、はい、るぅ……っ。」
「拓海の綺麗な背中とお尻……すっご……。」

 智裕は拓海の脚を広げさせると、動かなくなった。

「拓海の好きなように動いてよ。」
「へ……え…?」
「拓海の好きにしていいから。」
「や、そんな……やだぁ……。」
「またやだ?ほんと、親子揃ってイヤイヤだね。」
「ん……きらい、ならない?」

(いやらしくて、はしたないって、幻滅されたくないのに…。)

 そう不安な視線で振り返ると、智裕は雄の笑みを浮かべていた。


「むしろもっと好きになる。」


 そして智裕の眼前には、拓海が好きなように腰を上下、前後に揺らして本能のままに交わろうとする艶やかな姿が現れた。

 パチュ、クチュ、という肌と体液がのぶつかる淫靡な音。そして拓海の喘ぎ声。

「は、あ、あ、や、きも、ち、いぃ…?ん、あぁ、と、もひろ、く…あぁっ!」
「すっげ、気持ちい…もってかれそう……。」
「もっと、うごいて、いい?」
「いいよ。好きにしなよ。」

 拓海は前に手をついて腰を更に振った。しなやかな動きが淫らで愛らしい。智裕はそっと手を伸ばして、可愛らしく主張する乳首を捏ねた。

「んあぁ!ちう、び…あ、らめぇ…ああっ!」
「好きでしょ?」
「しゅきぃ…すきぃ!いたいの、びりびり、すきぃ!」

 夏休みのセックスで発覚した、拓海は少しだけの痛みは快感になるらしい。勿論、智裕が与えるもの限定で。その証拠に、乳首を強くつねるとナカが智裕を締めてくる。

「ふぅ…うぅ……ともひろくん……うごいてぇ…。」
「どうして?」
「イケないのぉ……ともひろくんに、ぱんぱんってしてもらわないと、イケなくなったのぉ……。」
「じゃあ、もうイヤって言わない?」

 繋がったまま前のめりになり、拓海を四つん這いにさせながら智裕は訊ねた。拓海は顔だけを智裕に向ける。

「いわないからぁ……。」
「イヤ、じゃなくて、なんて言うの?」
「ん…きも、ちいい……ってゆう…。」
「よく出来ました。」

 猫のように拓海の輪郭を撫でて、その手はするりと胸に這う。そして手加減のない抽送を開始する。拓海の腰を支えるついでにそそり勃つ拓海のソレをそっと握る。
 秘部、ソレ、乳首の3点を同時に攻められて、拓海のナカは切なくキュンと智裕を象る。

「あ、あ、ん、い、いい、きもち、いいよぉ…!」
「やっばい、もう、出…そ…っ。いい?出して、いい?」
「ちょ、だいぃ…ん、あ、も、い、くぅ…っ!」
「俺も、ぐあぁっ…。」
「ひぅっ、あ、やあぁあっ!」

 ほぼ同時に吐精をして、拓海はぐったりと倒れながら智裕を見た。

(ともひろ、くん……すきで、いて……ぼくだけ、みて…。)


***


 拓海が起きたら、外は明るくなっていた。

「んにゃ……ん……。」

 拓海は全裸だったはずなのに、ちゃんと部屋着を纏っていて、シーツも新しく替えられているようだった。
 重い身体を起こしてベッドから降りて部屋を出る。玄関に目を落とすと、智裕のサンダルはなかった。

 誰もいないダイニング。テーブルにはコンビニのオニギリとカップ味噌汁が置かれていて、ベランダの窓が開いていたのでそこに目をやると洗濯物が干されていた。


 _拓海さん、おはよう。今日は由比コーチの野球教室の手伝いと練習があるからもう出るね。茉莉ちゃんは夕方までかーちゃんが預かるってことだからゆっくりしてね。


 雑な字で置き手紙が置かれてた。そして最後に。


 _大好き


 その3文字に拓海は心が跳ねた。だけど。


(由比コーチに会うんだ……もやもや、またしちゃう……。)


「イヤだ、なぁ……。」


***


 夕方、松田家から茉莉を引き取ると、茉莉は今日行ってきたらしいキャラクターショーのカンムリを被って上機嫌だった。

「何から何まですいません。」
「いいのよお、ゆっくり出来た?」
「はい、お陰様で。本当にありがとうございました。」

 拓海は松田母に何度も何度も頭を下げた。

「あーと!」
「はいよく言えましたねぇ。」
「……まーちゃん…ごめんね。」

 拓海は茉莉を抱き上げて茉莉の顔にコツンとオデコをあてた。

「パパ、最近まーちゃん怒ってばかりだったね。ごめんね。」
「なーいない。」
「うん、ないない、だね。」
「でも怒るのは親の仕事だから仕方ないわよ。石蕗さん、また何か困ったことがあったら遠慮なく、ね?」

 松田母は少し小さめの声になると。

「うちのバカの面倒見てくれてるんだし、お互い様。もう家族みたいなモンだからね。」
「松田さん……。」

 茉莉が松田母に「ばいばーい」と手を振って、拓海も会釈をして自分の家に戻ろうとした時だった。

「とーと!」

 茉莉が下を指して、そう言うから、拓海は「どうしたの?」と覗き込むように下を見た。
 団地には不相応な高級スポーツカーが停車していて、右側のドアが開いて出てきたのは私服の智裕で、左側からは黒髪の背の高い男性が出てきた。


(あ……由比、壮亮……。)


 楽しげに2人が笑う声が聞こえてきて、拓海は見ていられなくて家に入った。


「ぱぱ、ないないよー。」
「うん、ないない、ね。」

 泣きそうな拓海を茉莉が慰めてくれた。拓海は茉莉をギュッと抱きしめて、柔らかな体温に安心を求めた。


(大丈夫、大丈夫……だって、大好きって……でも……でも……。)


「やっぱり、イヤだよ……。」

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