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夏が始まる
ホシノ先生の獣(※)
しおりを挟む裕紀はごくごく普通の3階建てのアパートに住んでいた。アパートの目の前にある駐車場から部屋に着くまでに、裕紀と一起は全身ビショ濡れになるくらいに雨は酷かった。
ドアを閉めて、鍵をかけて、薄暗い部屋に靴を脱いで上がると、どちらからともなく視線が交わると熱情を察知して何度も啄ばむような口づけをする。リップ音を立てて、何度も何度も口付けて、裕紀は一起のワイシャツのボタンを外す。
「先生…慣れて、る?」
「35歳バツイチだからな。」
「俺……どうすれば、いいですか?」
「何もしなくていい……とりあえず、ベッド行くぞ。」
一起の心境など構わないという強制力のある誘い。優しく手を引かれて十数歩でダブルベッドの上に腰をかけていた。
(間取りは1DK…かな……先生デカいくせにこんな狭いとこで寛げてんのか?)
「真面目の江川くん、そのタンクトップ脱げ。ジジイ臭ぇぞ。」
裕紀が指摘すると、一起はまた顔が赤くなる。脱ぐのに手間取っていたら、目の前で裕紀がポロシャツを脱ぎ捨てて、逞しく美しい身体を露わにしていた。
「………ダビデ像。」
一起は裕紀の身体を見るのは、去年のクラス対抗競泳の時以来2回目だ。しかしその時と今とは心境が違う。
「ふ、お前…去年も同じこと言ってたぞ。」
「え?……いや、覚えてない…ですけど。」
「他の連中は五●丸だの、ミスターサ●ケだの言うのに混じってダビデ像は破壊力凄かったぞ。」
「変ですか?」
拗ねたように訊ねる一起の隣に裕紀は腰を下ろして、一起の少しだけ細っこい身体を抱き寄せた。
「すっげー可愛い。」
ドクン ドクン ドクン ドクン
こんなに大きく鼓動が鳴るのは初めてだった。
一起はモテないことはない。女子からは「カッコいい。」だの「好きです。」だの言われる機会も多い。「可愛い。」なんてクラスの男子たちの揶揄い以外で言われたことはなかった。腹が立つ形容詞のはずなのに、一起は照れるほどに喜びを感じていた。
「………一起。」
「は……い……っ。」
名前を呼ばれて、返事をして、キス。今度は一起にとって初めての感覚。裕紀の舌を、本能的に受け入れて、絡ませて。
「ん……ふぁ……ふぅ、んん……。」
呼吸が迷子になるようだった。喘ぎのような声が漏れることが恥ずかしいが、こうしないと酸素が取り込めなかった。それ程までに裕紀に与えられるキスは激しくて深い。
ベッドに押し倒されて、うっすらと視界を開けると、裕紀の黒髪と天井がぼやける。恥ずかしくなった一起はまたギュッと目を閉じる。クチュ、クチュ、と唾液の音が聴覚を支配する。
「………一起…マジで、エロすぎ。」
「はぁ…あ……エロい、の…せんせ……です…。」
裕紀は親指で一起の口端から溢れた唾液を拭う。一起の目は熱を帯びて潤んで、それに見つめられるだけで裕紀は反応する。
一起の唇、頬、首筋、鎖骨を順番にキスをすると、ツンと主張した突起をいきなり口に含んだ。驚きよりも快感が一起を襲う。
「はぁあ……ん…だめ……なに、して……ふあぁ……っ!」
唇で食むようにチュッチュ、と愛して、口に含んだら舌先でイジメて、もう片方も摘まれたり押しつぶされたり、感じたことのない触覚に一起は戸惑う。
「あ…んぁ……乳首、だめ……。」
「気持ちいいか?」
「わ、わかんない、です……はぁんっ!」
「分かんない割に感じてる……な、ココも。」
「はぁ…んっ!」
スラックスと下着越しなのに、一起の熱を持って硬くなったソレは裕紀の手の平の熱を感じた。一起は心臓と同時にソコの血脈のドクドクという音が脳内に響きそうになる。スリスリ、と布越しに擦られるだけのもどかしさで一起は鳥肌が立つ。
「はぁ…あぁ……や、やだぁ……先生……やめて…っ!も、自分で……やる、から…っ!」
「我慢出来なくなったか?」
「もう、出そう…だから………触らせて、下さい…ん…っ!」
「んー……だめだな。」
「え……。」
裕紀は泣きそうな顔で訴えた一起を否定すると、器用に一起のベルトを外し、スラックスのチャックを下ろして、流れで一気に下着ごと脱がす。スニーカーソックスも脱がされて、一起は生まれたままの姿になった。
「や…っ!やだ…見ないでくださいぃ……。」
羞恥で一起は両腕で顔を隠し、足も固く閉じようとした。
「一起って意外と毛薄いんだな。」
「言わないでくださいよ……クラスで1番薄いの気にしてるんですからぁ……。」
「へぇ……初耳。」
裕紀は強引に足を開かせ、マジマジと一起の恥部を見つめる。
「何か、あいつらが一起の身体知ってんのかと思うと妬けるな。」
「え……。」
「でも…全部知るのは俺だけ、だろ?」
突然耳元で色っぽい音で囁かれる恥ずかしすぎる好意に、一起の脳内はまた甘く麻痺する。その隙を、裕紀は捕らえた。
「ココをこうして…触るのも、俺だけだ…。」
「ひゃああぁ……や、だめ、汚い……先生、離し…ああっ!」
裕紀の右手が興奮した一起を包み、一起がいつも処理する動きをしている。自慰行為とは比べものにならない快楽は一瞬で一起を堕とした。
「すっげ……溜まってんな…。」
「や、だめだめ……出ちゃ……あ、ああぁ、ああああっ!」
一起の我慢が爆発し、一起の腹と腿と裕紀の掌がソレで塗れた。一起は大きく呼吸をして酸素を求める。
「はぁ…はぁ……あぁ……。」
一起の自身はまだ先端からダラダラと出している。裕紀は枕元にあったティッシュボックスに手を伸ばして、一起の吐き出したソレらを拭う。そして今度は自分のスラックスと下着を脱いで、裕紀も一起と同じように一糸纏わぬ姿になった。
露わになる裕紀の自身は、散々見せられた一起の痴態に興奮しきっていた。一起はチラリと見てしまった。
「………先生の…やばい。」
「あ?」
「な、何でもない……です。」
また顔を背けるが首筋や耳は赤い。裕紀はクスッと笑うと、一起の輪郭を掴み、捕食するようなキスをする。また一起を襲う正体不明の甘い痺れ。全身、触れる裕紀の皮膚が熱い。
裕紀は枕元に手を伸ばし、ベッドサイドの引き出しに忍ばせていた箱とボトルを取り出す。
「そんな…の……持ってるんですか?」
「男のエチケットだろ。」
「……覚えて、おきます。」
ひんやりとした温度が、一起の秘部に塗られる。そして徐々に侵入しようとするのは無骨な指。入り口をグリグリといじられるだけで、吐いたことで萎れていた一起の自身がまた興奮する。
「あ、あ…指……変なの……んん…。」
「おいおい、ゆっくりしてんだからあんま煽るなよ。」
「あおって…ない……ふぅ……ん…。」
裕紀が左手で持っている一起の腿は微弱の痙攣をしている。快感の逃げどころがわからない、とでも訴えているようだった。そして入り口から先が中々進まない。裕紀は左手で復活しだした一起のソレを扱く。
「ああぁっ!やだ、そんな…あ、はぁあ…っ!」
「力、抜けるだろ?」
「ふぅ…あ、あ、そんな、きもち、いいの……おかしくなる…あぁっ!」
「俺の前だけなら、おかしくなっちまえよ。」
ズプッ、侵入を許したら簡単だった。未知の感覚に襲われる一起は抗う方法を知らずに流される。
「や、だめ、またイ…ああぁ、出る、出る…っ!」
「いいぞ…何回でもイケよ。」
達しそうな敏感な身体に対して、裕紀はもう1本指を侵入させる。潤滑油で滑りやすくなっているソコに指を何度も出し入れする。
「あ、あ、も、だめ、あ、あぁあぁああっ!」
嬌声をあげながらまた勢いよく一起は白濁を吐き出した。絶頂で力の抜けたソコにもう1本、指を。
「んんん……せんせ、苦しい、です……はぁ…あ…。」
「悪いけど、これくらいほぐさねぇと…俺の挿れらんねーよ。」
「あ…あぁ……だめ…また……なんかくる……先生……。」
パチュ、ズチュ、妖しい水音と2人の荒くなる呼吸、そして一起の額にはジワリと汗が流れる。湿度もそれを手伝っている。裕紀は指を抜くとコンドームを取り出して、興奮しきったそれに手早く装着する。
「一起、出来るだけゆっくりする……保証は出来ないけど。」
「あ……先生……。」
裕紀の熱が、一起を侵食する。
(あ、やばい……俺、先生に食べられてる……。)
ズン、ズン、太く硬さのある興奮が一起の奥を目指す。狭いナカに象られた裕紀も体温が上昇し汗が一起の皮膚に落ちる。
「はぁ……ああぁ……せんせ、くるし……あぁ…っ!」
苦痛なのに、裕紀が最奥に到達した瞬間に、また一起は甘い痺れに襲われる。
「ああぁぁっ!な、に…これぇ……。」
「あぁ……一起はこの奥が好きなのか…。」
裕紀は器用に先端で一起の弱い部分を突く。一起はペニスに触れる以上に性的な快楽があるのだと初めて知る。ビクンッと身体が跳ねる。
「あ、だめ、あぁ…つかない、で……も、頭、へん……あぁっ!」
裕紀も一起の内壁の吸い付きで、限界が近かった。
「一起…動くぞ……っ!」
一起の両腿を持って、腰を徐々に激しく揺らす。一起は擦られる度に頭を振り回す。喘ぎ声は止まらない。グチュグチュと卑猥な水音とパンパンと卑猥なリズム。
「あ、あ、せんせ、怖い…あ、だめ、あぁっ!」
「一起…大丈夫……俺も、持っていかれそうだ…。」
「わっけ、わかんないぃ……あ、あ、せんせぇ、助けてぇぇ…!」
一起は涙を流して両手を裕紀の方に伸ばした。裕紀は起こしていた上体を倒し、一起を包むように抱きしめる。一起は足は裕紀の腰に巻きつけ手は背中に回してしがみつくよう。裕紀の皮膚に一起の爪が食い込む、その甘い痛みが裕紀の悦びになる。
「おしり、へん…あ、あ、だめ…気持ち、いい…っ!」
「だから…もう何も言うなっつの…っ!」
「せんせ、俺、も…イく……出る……あ、あ、あっ!」
密着した裕紀の腹筋に擦られた一起の自身はまた限界を迎えた。収縮したナカに締め付けられた裕紀も、低く呻きながら欲望を吐いた。
***
裕紀が簡単に身体を拭うが、全裸のまま一起はベッドで脱力していた。裕紀は下着とスウェットを穿いて火照った身体を缶ビールで冷やし、タバコを咥えてベッドに腰をかけていた。
テレビをつけても外の豪雨の音がまだ大きかった。
「ケツ、痛い……。」
「悪いな、手加減出来なかった。」
「中年のくせに元気ですね。」
「お前が淡白過ぎたんだよ、お子ちゃま。」
「……俺が肉食系とか、絶対引かれるし…。」
「確かに。」
一起はゴロゴロと裕紀のそばに寄る。すると目の前にあった首筋からの匂いが鼻腔をくすぐる。
「タバコくさい。」
「うるせー。つーか可愛いことしてんじゃねーよ。」
床に置いた灰皿にタバコを潰すと、後ろを振り向き一起にキスをする。一起は突然のキスも驚くことはなく、受け入れた。そして味わった。
「スースーする。」
「メンソール系だからな。」
文句を垂れても、もう一度キスをする。
「……先生、教師って大変?」
「なんだよいきなり。」
「別に……。」
「大変以外の何物でもないの、わかるだろ?」
「先生でも大変なんですね。」
「喧嘩売ってんのかてめー。」
「売ってませんよ。俺買い専ですから。」
「………お前さ、なんか武道とかやってた?」
「いや、護身術程度の合気道を母さんから教わっただけです。」
(それで屈強な野球部を半殺しにしちまうのかよ……。)
「夕飯、出前でいいか?この辺だとピザと中華しかねーけど。」
「はい……なんかさっぱり系がいいです。」
「りょーかい。」
「先生。」
「なんだ?」
「これから先生に会いたくなったらどうすればいいですか?」
裕紀はビールを一口飲んだ。そして煙草に火をつけて煙を吐くと答えた。
「とりあえず携帯の番号とチャットのアドレス交換するか。」
一起は決して口にしないが、すっかり裕紀に潜む獣に捕まってしまっていた。
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