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第5章「ニャッカ王国珍道中」
森の中で
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†
壁の隙間から差し込む月明かりが床に落ちている埃を照らす。その部屋は閑散としていて、黴臭かった。
「ボス、大変だよ!」
沈黙を蹴破るようにして、小男が息を荒げて転がり込んできた。彼は、極秘の任務を遂行しているのか、両目を除いて顔をすっぽりと紺色の布で覆っている。その視線の先には、平机に両足を乗せ、椅子に深々と腰掛けている男がいた。
「極東の罠が壊されたんだ」
手下のいつもの報告に聞き飽きたといわんばかりに、男は微動だにしない。
「壊し方が尋常じゃないんですよ!」
手下の声はすっかり裏返っている。男は、尋常という言葉にぴくりと眉を上げるが、すぐにもとの調子に戻る。小男は必死になり、身振り手振りを交えて説明する。
「金具には傷が付いてなくて、石の色だけが変色していたんだ」
「変色だと?」
男は机を蹴り倒した。手下は驚いて一歩退いた。
石が刃物で斬られていたり、金づちで砕かれた痕跡は腐る程見てきたが、変色は初耳である。
「紫から緑に変化していたんですよ」
と言って、手下は男に向かって何かを投げた。
「これか」
男の手のひらには、翠緑色の玉が握られている。
「まるで、教会の絵で見たリューク様の瞳のようで……」
手下は状況を思い出しながら、うっとりしている。対して男は、仕掛けを解いた者が只者ではないと察した。
「面白い」
男はすっくと立ち上がる。
「それで、仕掛けを壊した奴を見たか?」
「えぇ、俺とあまり年が変わらないくらいの女で、髪は短くて、茶色だったよ。あぁ、ピンクのコートを着てたから、すぐに分かりやすよ」
暗闇で銀色の筒が月明かりを受けて閃く。
「女子供なんざ関係ねぇ。宵に加担する奴は、死に値する」
男は玉を真上に投げ、落ちてきたところを拳銃で撃ち抜いた。玉は弾丸に貫かれ、床に触れた瞬間、粉々に砕け散ったのだった。
壁の隙間から差し込む月明かりが床に落ちている埃を照らす。その部屋は閑散としていて、黴臭かった。
「ボス、大変だよ!」
沈黙を蹴破るようにして、小男が息を荒げて転がり込んできた。彼は、極秘の任務を遂行しているのか、両目を除いて顔をすっぽりと紺色の布で覆っている。その視線の先には、平机に両足を乗せ、椅子に深々と腰掛けている男がいた。
「極東の罠が壊されたんだ」
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「金具には傷が付いてなくて、石の色だけが変色していたんだ」
「変色だと?」
男は机を蹴り倒した。手下は驚いて一歩退いた。
石が刃物で斬られていたり、金づちで砕かれた痕跡は腐る程見てきたが、変色は初耳である。
「紫から緑に変化していたんですよ」
と言って、手下は男に向かって何かを投げた。
「これか」
男の手のひらには、翠緑色の玉が握られている。
「まるで、教会の絵で見たリューク様の瞳のようで……」
手下は状況を思い出しながら、うっとりしている。対して男は、仕掛けを解いた者が只者ではないと察した。
「面白い」
男はすっくと立ち上がる。
「それで、仕掛けを壊した奴を見たか?」
「えぇ、俺とあまり年が変わらないくらいの女で、髪は短くて、茶色だったよ。あぁ、ピンクのコートを着てたから、すぐに分かりやすよ」
暗闇で銀色の筒が月明かりを受けて閃く。
「女子供なんざ関係ねぇ。宵に加担する奴は、死に値する」
男は玉を真上に投げ、落ちてきたところを拳銃で撃ち抜いた。玉は弾丸に貫かれ、床に触れた瞬間、粉々に砕け散ったのだった。
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