上 下
53 / 225
第3章「果てしなき世界へ」

旅立ち

しおりを挟む



 夜が明けて、旅立ちの日がやってきた。
 未知は、ふと三年前の入学式を思い出した。同級生は小学校の持ち上がりで知っている人ばかりだったが、中学校の厳かな雰囲気に緊張して、尻込みしたものだった。小学校は私服で、中学生になってから初めて制服を着た。ばりっとした着古していない制服だ。あの日のように、今日も制服――旅人の装いといえば良いのだろうか――を着ている。

「未知、下を見てごらん」

 未知は、五日前と同じように、アーサーとエルスタンの三人で神魔羅殿の前に立っていた。

「あんたさんは神殿に入る前にこれを見ていたね」

 覚えている。この石畳には、方位が刻まれ、東西南北に合わせて四体の動物が彫られている。

「私は、昨日あんたさんに旅立ちなさいと言った。あの時は、あんたさんに旅の目的を告げなかった。今、これを間近で見て、肝に銘じてほしいと思ってね」

 昨晩考えていた道中の不安、どこに向かえば良いのか。旅の目的がようやく明かされる。

「ここに四体の聖獣せいじゅうが描いてある」

 聖なる獣。五日前に初めてこの石畳を見た時から密かに気になっていた。

「東の方角に描いてある一角獣はユニコーン、南の鳥はフェニックス、西の龍はポセラドル、北の獣をグリフォンという」

 神話に出てくる獣達もこのような名前だっただろうか。中には初めて耳にする名前もある。しかし、方角ごとに位置付けられているという話は聞いたことがなかった。

「彼らは『四聖獣よんせいじゅう』といい、光の女神リュークの加護を受け、世界を守護しておる。太古に世界を救った勇者は、四聖獣の力を借りて魔王に立ち向かったという」

 動物の彫られた石畳の左上に悪魔の紋章が見える。先日、エルスタンが立って扉を開けた場所だ。

「サレプスは我々がこうしている間にも、己の全ての封印を解こうと画策しておる。このまま奴が完全に復活し、世界を征服させてたまるかい! 神に選ばれし者――未知、あんたさんにはやるべきことがある」

 未知は、耳の裏が熱くなるのが分かった。無意識のうちに、直立不動の姿勢になる。

「世界を巡り、四聖獣の力を借りよ。その身に、剣に加護を受けるのじゃ」

 背中には、鞘に収めた剣がベルトに固定してある。何となくリュックサックを背負っている感覚と似ている。

「未知、あんたさんはここから西にワットリー山脈を越えた所にあるニャッカ王国に向かう。そして、東の四聖獣ユニコーンに会うのじゃ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...