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21.愛があふれて…

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「ボク、もう帰らないと」
部活のあと先輩の家に来て、ふたりっきりの時間をすごした。
夏休みも終わって、2学期が始まったけれど、夏の名残りはまだつづいていて、今日も外は蒸し暑い一日だった。
放課後の部活。体育館のバスケ部と卓球部のスペースを仕切る緑色のネットのカーテン越しに、
先輩と何度も目があった。
なんとなく先輩をさがして、ちらっとバスケ部のほうに目を向けると、
先輩もボクのことを見てて、
いつもだと、それだけでうれしくて、周りに気づかれないように、ココロのなかで、にっこりするけど、
今日は、ちがった。
先輩が、なんだかもの言いたげな視線を寄こしてくるから、
なんだろう? と思って、たびたび視線を向けていると、だんだんと激しい射すくめるような瞳で見てくるから、―――― なんだか、身体のおくのほうがじわっと熱くなって、
それで、
あんまり部活に集中できなかったんだからね、と先輩の部屋に入ってすぐにボクの服を脱がして背中に荒々しくキスしてくる先輩に文句を言った。






「シャワー先に浴びるね」
先輩はいつも一緒に浴びたがるけど、―――― それはまだちょっと抵抗がある。
呼吸も心臓の音も、ゆるやかなものに戻ったから、ベッドから起き上がろうとすると、先輩がおおいかぶさってきた。
「シャワーに行くんだってば」
身体がゆるん、となってるから、声も甘くなる。
「キスだけ。な、陸」
先輩の声も、静かで深い。
イイもダメも言ってないのに、もう、くちびるをくっつけてきた。
舌がぬるりと入ってくる。
あ、も、そんなんだと、また・・―――――――― 。
「ダメだよ」
顔をそらしながら言った。
「ボク、もう、帰んなきゃ」
今日は平日だし、明日も学校だから、先輩の家に泊るわけにはいかない。共働きでいつも帰宅が遅いっていっても、そのうち先輩のお父さんとお母さんも仕事から帰ってくるだろうし。
「じゃあ、最後に、も一回、キスをしような」
そう言うと手でボクの顔を動けないように固定して、顔を寄せてきた。
そんな甘い表情でそう言われると、ダメが言えなくなる、って先輩、本当は知ってるんじゃないかなあ、とか思ってしまう。
ボクは、先輩の肩に手を伸ばした。
「かるく、だよ」
「わかってる」
ウソ、わかってないクセに・・・。






時々、先輩のわけのわからない言動についていけないと思うこともあるけど、こんなふうな行為のあとは、
まぁそれでもいいかな、と思えたりするから不思議だ。
ボクって心が広いなぁと思いながら、
甘くてやわらかくなっている身体を起こして、はふっと息を吐いて、今度こそ、バスルームに行くために、ベッドに腰掛けて、床におちていたシャツをひろう合間にも、先輩が背中にキスしてくる。
やわらかく湿ってるものが背中をたどるから、そのまま、また、先輩に全部を預けたくなる。けど、本当に、もう、帰らないとヤバい。
「もォ、くすぐったい、ってば!」
と、身体をよじりると、
うしろで、先輩がベッドに立ち上がる気配がした。
それから、
ボクの頭に、へにょっと、
なんか、乗っかった。
あったかくて、やわらかくて、質量のある・・・、おでんのちくわみたいなのが・・・。
「・・・センパイ?」
「ほら、陸、“ ちょんまげ ”」




!!!




「うっわ、陸、もげる! もげるっ!!」
ィテテテテテーーっとうめきながら、
もうしない、ごめん、もうしないから、
って、
センパイは言うけどっ!


その台詞、もう聞き飽きたからっっ!!!






( おわり )




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