上 下
7 / 23

7.好き好き大嫌い

しおりを挟む
「しようか?」
テレビを観てたら、唐突に誘われた。
ちょっと面白い番組だったから、画面を観ながら、
「してもいいけど」
って答えたら、
「相変わらず、ムードないよなお前」
ってボヤかれた。
どう答えれば、甘やかな雰囲気になるのさ?
「修平だって。全然、ロマンチックに誘ってこないじゃん」
「はぁ? お前のどこにロマンを感じろっていうんだ?」
「ボクだって、修平が全然、ときめかせてくれないから、ムーディになんかなれないよ!」
これが、俗に言う、『売り言葉に買い言葉』なんだな、って頭の隅ではわかっていたけど、
ヒートアップしていく、言葉の応酬にストップをかけられなかった。






それで、結局、修平は仕事机が置いてある寝室に仕事をしに行って、
ボクはあからさまに「帰れよ」って言われたけど、そんなこと言われたら、意地でも帰るもんかと思って、ずっとテレビを観ることにした。
ちょっとヴォリュームをあげて、寝室の物音が聞こえないようにした。
全然、修平のことなんか気にもならないし―――― 。




そんなんで、4時間ぐらいたっていた。
もう、6時近くになっていて、
テレビもいい加減、飽きたなあと思ってたとき、
修平が、ばたんと寝室の部屋を乱暴に開けて、でてきた。
修平は無言でキッチンに向かっていった。
声もかけてこなかったし、ボクも修平のほうを全然見なかった。
これまでも、1回トイレに出てきたのと、1回冷蔵庫に飲み物を取りに来てたけど、その時も、全然、視線もくれてやらなかった。
ボクが座っているソファの後ろはもうすぐ、対面型キッチンで、
冷蔵庫をあける音や、食料ボードの扉を開ける音がしたから、
夕食の用意をし始めたのだろう。
いつもだったら、手伝うけど、
今日は絶対にしない。
ボクは意地でもテレビから目をはなさなかった。


今日は、夕食にリクエストをしていた。親子丼を。
修平がつくる親子丼は卵がふわっとしていて、おいしいから好きなんだ。
すぐ後ろのキッチンから、
醤油のにおいと甘いにおいがしはじめて、
卵を割る音がして、ボールで液体をシャカシャカ菜ばしでまぜる音がしはじめたから、
あ、親子丼、つくってくれるんだ、って思って。
ちょっとだけ、許してやってもいいかな、と思った。




「できたぞ」
ぶっきらぼうに声を掛けられたから、
ソファから立ち上がって、
修平が作った料理をテレビの前のガラステーブルに運んだ。
食事をするときは、
フローリングの上に敷いたラグにじかに座って、このガラステーブルをちゃぶ台のようにして使う。
ほかほかの親子丼はおそろいの漆塗りっぽいい大きめの器に盛られていた。
初めて見る食器だった。
いつもだと、ラーメン丼みたいなを使ってたのに。
それに、お揃いだ。
―――― もらいもの?
でも、
そういえば、なんだか、最近、
お揃いの食器が増えているような気がしていた。
ふつうの白い皿とか、味噌汁用のお椀とか、ちょっとした小鉢とか。
前は、修平の一人用の食器を2人でてんでばらばらに使ってたけど・・・。
―――― ボクの分、揃えてくれてる?




テレビがあってよかった。
やけにテンションの高い関西のお笑い芸人が司会するクイズ番組のおかげで、なんとか場が持っていた。
「おいしい」
一応、礼儀のつもりで、ボソっと言ったら、
「そうか」
ってだけ返事がきて、
また、2人無言で食べた。
本当に、卵がふわっとしていて、鶏肉もやわらかくて、お出汁もボクの好きな辛口でおいしかった。
お吸い物にも、ボクが好きで買ってきていた手まりふが入っているし。
そして、食器が見事なくらい同じものが二揃えだった。
この丼に、お吸い物のお椀、ほうれん草のおひたしの入った小皿。
どんな顔をして修平はこれらの食器を買いにいったんだろう?
ボクも誘ってくれればよかったのに、って思って、
少し、胸がくすぐったくなってた。
あとで、ごめんね、を言おうかな、と思った。






ベッドルームはカーテンが引かれて、セピア色の影が横たわっていた。
たった指一本でおかしくさせられてしまうボクの身体はどうかしている。
「ヤ、・・だ。 ィク、イきたい。ね、お願い、」
じれったくて、
「 ―――― もっと、・・・つ、強くがいい」
ぼろぼろと涙がこぼれた。
「もう少しだけ、な」
腰の動きをとめた修平に、胸の尖りをくじられた。
これ以上ないくらい、切ない声がでた。
ぶるぶると身体も、中もふるえている。
もどかしくて焦れて、頭がおかしくなりそうだった ―――― 。
ボクの耳を舌で舐めながら、修平が、言った。
「―――――――― って、言って」
すごく、
いやらしい言葉だった。
―――― 言えない。
首を横に振った。
「言ったら、凛一が好きなように、突くから」
やさしげな言葉。
だけど、全然、やさしくなんかない。
「ほら、」
ちょっとだけ、修平が深く挿ってきた。
「ぁ・・・んんっ―――― !」
それだけで、修平の動きに合わせるように腰がゆらめいた。
するどい光のような快感の一閃だった。
「―――― っ、」
教えられた言葉を少しだけ口にした。
また、深くえぐられて、
「―――― 、 ・・・――――――――っっ!」
その言葉を言うとごとに、修平の腰の激しさが増していった。




「―――― ヒドイ、」
息がととのったあと、そう言ったら、
「悦かっただろう」
修平が平然と言ってのけた。
「よ、悦くなんか、」
なかった、と続けそうになったけど、
さっきまでの、
自分の痴態を思い出すと、恥ずかしさに死にそうになって、何も言いかえせなかった。
修平の手が、また、さっきまで挿ってたところのふちをたどり始めた。
「―――― また?」
「凛一があんなに可愛くさそってくるから。何度でも激しく、したくなるだろう」
「だって修平が、色気全開でその気にさせたんじゃん」
夕食のあと、2人ならんで、シンクで食器を洗い終えたあとに、
そこで、キス、をして。
身体がとろんってなるようなことを言われたから、
修平の身体に、火照った身体をすり寄せて、
高ぶった気持ちをそのまま、修平の耳にささやいたんだ。
それだけなのに、
修平がすごく、興奮、して、ボクも同じくらい気分が高揚して・・・。2人で、もつれるようにしてベッドにダイブした。
あ、
ソコをゆっくりなでていた指が、
少しだけもぐりこんできた。
ゆるく出し入れされる。
「もう、いけそう?」
「ぁっ、・・・うん」
また、もう一本指がはいってきて、
じわ、っともどかしい感じが下半身に生まれる。
もうひとつの手はボクの尖りきったちくびをいじりだして、
くちびるは、ただやさしく、こめかみんところにキス。
「・・・・・・」
切ない声がでそうになったのを、
息をとめてやりすごした。
恥ずかしくて。
いつも、指だけでいいように、高められる。
「凛一の中に入りたい」
全身をくるまれるような吐息で言われて、
身体で返事をするように、修平を迎えるために両脚をもっと開いた。
「・・・修平が、欲しい」
言ったのと同時に、もうふちにあてがわれていた修平が深く一気に入り込んできた。
しびれるような充足感に目がくらみそうだった。
もう、声はがまんしなかった。






「ねぇ、修平、」
事後のけだるい余韻のまんま、甘い声でよびかけた。
「食器さぁ、」
「うん?」
「あれ、ボクのために揃えてくれてたの?」
「は?」
もう、そうやってとぼけるところも、なんか、可愛いな、と思った。
「食器が全部二揃えずつあったじゃん」
夕食のあとの片付けのときに、食器棚を確認したんだ。
そしたら、カレー皿とかふつうの小皿、めったにつかわないはずのワイングラスにスープ皿まで二つづつあった。そして、持ち手がハートになっているペアのマグカップも奥のほうに、見つけた ―――― いつ、だしてきてくれるかな、ってドキドキした。
全部、同じメーカーのじゃないのに、微妙に色調がそろってるから統一性があった。
こんなに買い揃えるには、あちこち見に行ったんじゃないかな、って想像できた。
それを見て、すごい、胸がいっぱいになって、
こころから、修平に「ごめんね」が言えたんだ。
ぺたっと修平に抱きついているボクの肩をなでながら、修平が、ああ、あれか、と言った。
「成田離婚したやつがいてさ。
せっかっく揃えたけど、捨てるっつうから、もらってきたんだ。
前の食器は学生時代から使ってて、新しいのにしようと思ってたから丁度よかったよ」



・・・・・・・・ばか。






( おわり )
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

番って10年目

アキアカネ
BL
αのヒデとΩのナギは同級生。 高校で番になってから10年、順調に愛を育んできた……はずなのに、結婚には踏み切れていなかった。 男のΩと結婚したくないのか 自分と番になったことを後悔しているのか ナギの不安はどんどん大きくなっていく-- 番外編(R18を含む) 次作「俺と番の10年の記録」   過去や本編の隙間の話などをまとめてます

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

俺の兄貴、俺の弟...

日向 ずい
BL
俺の兄貴、俺の弟... 登場人物 兄貴 成瀬 都和 (なるせ とわ) 27歳 身長 184cm 体重 67kg 弟 成瀬 尊 (なるせ たける) 17歳 身長167cm 体重 47kg 久我 子春 (くが こはる) 24歳 女性 都和の同僚で仕事仲間。 音海 恋 (おとみ れん) 18歳 男性 尊の同級生で腐れ縁。 阿澄 璃織 (あずみ りお) 17歳 女性 尊と恋と同じクラスの美女。 上城 志希 (かみじょう しき) 25歳 男性 都和の部下で頼れる友人。 物語内容 一言で言うとBLものです。 恋愛要素と笑い要素が入ったものになる予定ですが、言葉などは私の語彙力が足りないため少し見苦しいところが多々あると思いますが、良ければ読んでいただけるとありがたいです!

愛を知らない僕は死んじゃう前に愛を知りたい

しおりんごん
BL
「そうか、ぼくは18さいでしんじゃうんだ。」 僕、ルティアーヌ・モーリスは いわゆる異世界転生をした元日本人だった   前世の記憶をたどり、、、思い出したことは、、、 ここはBL小説の世界だった そして僕は、誰からも愛されていない 悪役令息 学園の卒業パーティーで主人公を暗殺しようとして失敗した後 自分の中の魔力が暴走して 耐えきれなくなり、、、 誰とも関わりを持たなかった彼は 誰にも知られずに森の中で一人で 死んでしまう。 誰も話してくれない 誰も助けてくれない 誰も愛してくれない 、、、、、、、、、。 まぁ、いいか、、、前世と同じだ 「でも、、、ほんの少しでいいから、、、        、、、愛されてみたい。」 ※虐待・暴力表現があります (第一章 第二章の所々) ※主人公がかなりネガティブで病んでいます(第一章 第二章の所々) ※それでも超超超溺愛のストーリーです ※固定カプは後々決まると思いますが 今現在は主人公総受けの状況です ※虐待・暴力表現など、いろいろなきついシーンがある話には※をつけておきます ※第三章あたりからコメディ要素強めです ※所々シリアス展開があります

伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。 実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので! おじいちゃんと孫じゃないよ!

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません

八神紫音
BL
 やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。  そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。

聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。 嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。 そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど?? 異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート ) 途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m 名前はどうか気にしないで下さい・・

処理中です...