執愛

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友愛は憎悪へ

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混乱する俺にウィリアムは優しく話してくれた。

リンジーの浮気は今に始まったことではなく。俺以外は皆知っていることだと。そして俺の両親、リンジーと親は互いの祖父母が交わした契約を遂行するために何が何でも結婚させるつもりだということも…。

その契約は祖父母の代が会社で行ったインサイダー取引をお互いに絶対に秘密にするために曾孫を結婚させることだった。なぜ俺たちを結婚させるのが条件なのかわからない。家族になってしまえば、インサイダー取引が世間にばれたときに両社逃れられないからだろうか。

インサイダー取引は物的な証拠はないらしい。でもウィリアムが幼いころに祖父と俺の祖父がその取引のことを話しているのを盗み聞いたという。思え返せばその話をウィリアムが聞いた頃に互いの会社は事業をひろげ大きくなっている。


『なんてことだ』

「……」

もし、取引のことが外部に漏れたら刑罰もしくは罰金は免れない。周囲の目も含め、社会的制裁は厳しいものだろう。両親が捕まることは別にいい。でもうちの会社の社員へ、その家族に迷惑がかかる。うちの会社を退職したとしてもインサイダー取引した会社に勤めていたと知られれば、再就職は相当厳しいものになる。そうなればその家族は路頭に迷うことになってしまう。


「祖父には私からうまく言っておくよ。だから、心配しないで、悪いようにはしないから」

『……わかった。でも何て言うんだ?リンジーは何も言ってないのか?』

「結婚前に私の仕事を手伝ってもらっていると言ってある。リンジーは………」

そこでウィリアムが言いよどむ。

『リンジーが……なに?』

問い詰める。

間違いがないように家の者が見張っているから知っているのだがと言い、そして「写真とは別の男の家に入り浸ってる」と言った。

完全にリンジーと俺との間の友情が壊れたのを感じる。

ウィリアムはリンジーが尻軽ビッチだとみんな知っていたといった。大学の友人も俺以外は知っていることだと。

俺のずっと感じていた、愛しい人ではなく友達と結婚しなければいけないという苦悩。これはいったい何だったのか。親しくしていた友人は影で尻軽なリンジーとその尻軽ビッチのために貞節を守る俺を一体どう言う気持ちで見ていたのだろう。

楽しかった宝物のような思い出が壊れていく。そして家族と思っていたリンジーに対して抱く不信感。裏切られた気持ち。お互いに気持ちとは関係なく結婚しないといけないから、周囲から愛し合っていないと疑われないようにリンジーを大切にしてきた。誕生日には彼女が望むプレゼントを渡し、言われたら送り迎えをして、いい彼氏を演じてきたのだ。


その俺は周囲にどんな風に見えたのか?

イーサンの片思い。尻軽にいいようにつかわれる哀れなイーサン。

『どうしたらいいんだ……俺は、結婚したくない』

途方に暮れて思わず口から本音が零れる。

「イーサン………」
ウィリアムは俺の手を握り背中を擦る。

『俺はいったい今まで何をしてきたんだ……』

親の言いなりになって、両家のためにいい大学に進み仕事も会社のため寝る間も惜しんで頑張ってきた。それが今になっては何の意味がなかったのだ。リンジーと結婚する。そのために生きてきたのに…。


『結婚したくない…』

リンジーに対して沸き上がった嫌悪感に目をつぶって耐える。もう彼女と結婚するのは無理だった。それだけは耐えられない。


そう思っているうちに自分でも気づかぬ間に目から涙が零れていた。ウィリアムに強く抱きしめられる。彼の肩に涙があふれる顔を押し付け、俺は無意識にウィリアムの背中に腕を回していた。声もなく泣く俺の頭を撫で腰に回った彼の手は力強い。

ウィリアムからドクンドクンと少しはやい鼓動が聞こえる。

「こんなときに言うべきではないとわかっているが…………私はイーサンを心から愛している。何があっても君の味方だから」

『迷惑がかかる…』

「私は大丈夫だ。結婚したくないなら私が結婚しないですむようにしてやる」

『どうやって…?』

「いいから…リンジーのことは忘れなさい」

なだめる様に背中を撫でるウィリアムの手が心地いい。今思えばウィリアムはずっと俺のために傍にいてくれた。俺が自分の時間を作れるように外に連れ出してくれたし、なにより彼と一緒にいるときはありのままの自分でいられる。


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