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潔癖

05

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シリウスの手は俺の服を捲り上げ刻印された胸が露わになる。ささやかな筋肉と肌を撫で上げていた手が乳首を掠めた。
『ひっ…』



思わず声を上げた俺にシリウスは目を細めた。






「・・・・お前アドニスじゃないな?誰だ?」

ガツン、と頭を強く殴られたかのような衝撃。今シリウスはなんて言った?

シリウスの口から吐き出されたものとは思えないほど低く冷たい声量で放たれた言葉。言葉自体は理解出来た。

でも何て返せばいい?ゲームのアドニスじゃないとばれてしまったのか。急に何を…もしかして以前のアドニスは乳首でめっちゃ感じちゃうとか‥‥。


まさかこの世界はゲームで俺がお前達を生み出した、とでも言えばいいのか?惚けて誤魔化せるのか?

早く返事をしなければと焦れば焦るほど、思考がまとまらない。脳味噌が拒絶反応を起こしている。口を開いても言葉がでない。

『……なにっ、いって』

やっと口から出た言葉。


仇でも見るような目で俺を見るシリウスを見たくないと目を瞑ると、額をすっと撫でられる。子供をあやすような撫で方に恐る恐るつぶった目を開けば切るような鋭い視線はなくなっていた。

『シリウス……』

「アドニス、お前悪魔に乗っ取られてるぞ」

『えっ…だって………そんな…今まで普通だったし』

シリウスの言葉に安堵する。あの言葉は俺に対してではなく、悪魔に乗っ取られた俺に対することばだったのだ。乗っ取られていることはそれはそれで問題だけど。あの冷たい声と視線をもう見たくないと思う自分がいた。


「おそらく視界を盗み見られている」

『……じゃあ、さっき』

「悪魔に見られていた」

『なんでわかったんだよ……』

「気配でわかる。シャワーを浴びていたら急にお前の気配が妙になってな」

『気配………』

シリウスにそう言われてもいまいち理解できない。すごしていて変な違和感はなかったし、シリウスの口ぶりだと視界が盗み見られたのは初めてじゃないように聞こえた。

「嘘ではないぞ」

『…………じゃあ、いったいどうしたらいい。俺はそんなの悪魔に乗っ取られているとかわからない』

「…………」

途方に暮れてシリウスを見上げれば、すっと表情を無くしジッと俺を見つめてきた。でたーシリウスの視線攻撃。

ジッと見つめ返せば瞳が何か考えるように左右に動き、そして瞼はとじられた。金色の長い睫毛がとじられた瞼を縁取っている。瞼はすぐにひらかれ、何かを決心したかのようにシリウスの口が開いた。

「やはり、聖痕を付けるぞ。アドニス」

『えっ…でも………………それってセックスしないといけないってことだろ?俺には無理…』

「無理でも、やらないといけない」










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