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第1章 魔導学校入学
1-4 初等部一年生
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それから私は無事に魔導学校に入学して初等部の一年生から通うことになった。色々と予想外なことは起きたけど、私の下級魔導士計画はまだ順調なのでなによりだった。
この学校には十歳から入学できる初等部以外に中等部、高等部があり、それぞれの部の卒業後の試験で、下級、中級、上級の魔導士資格が取得できる。飛び級も留年もできるから、クラスの年齢層は本当にバラバラだけど、十六歳での私の初等部入学は珍しかったみたい。
最初、途中からの入学で注目を浴びたけど、同級生と色々と会話をして交流を増やしたら、知り合いも無事に増えて、今では数名の年下の女の子たちと一緒に行動して平穏に過ごしている。
私の制服姿は、すっかり周囲と馴染んでいた。
前世の子どものとき、私は魔導の習得だけ優先して、友人関係はバッサリと切り捨てていた。
当時、魔導の資質だけが全てだと考えていたから、自分より劣る人間に興味がなかったのよね。
残念ながら、昔は偏った考えでしか価値を測れない狭量な人間だった。
今は魔導だけにこだわってないし、人それぞれ素敵なところがあるって分かっている。
今日も昼休みに友人たちと一緒に食堂に来ていた。
制服姿の生徒たちで溢れ、その中に私たちも混ざっていた。
濃緑色のブレザーの上着と、同じ色を基調としたチェックのスカートが女子の制服姿だ。シャツの上にコルセットをつけている。
卒業生の制服が中古で売っていたからお財布的に助かったわ。ちょっと胸のサイズが合わなくて苦しいけどね。
学校の食堂は、関係者なら誰でも格安で利用できるようになっている。生徒たちに交じって先生たちの姿もたまに見かける。
吹き抜けの開放的な空間で、天井近くまで贅沢なガラス張りになっている。
今日みたいに天気がいい日だと、日がよく当たって明るかった。
大きめなテーブルが均等に並び、早いもの順で好きな場所に座れるようになっている。
私たちも固まって席を確保して、食事を始めている。
メニューはたくさんあるから、この時間は一日の楽しみの一つになっている。
サクスヘル校長も私から離れたテーブルで他の生徒たちと食事をしている。
彼は生徒の名前を憶えているようで、気さくに話しかけていた。
彼は毎朝学校の校門前で生徒たちを出迎え、長い休憩時間には校内を散策して生徒たちと触れ合っている。
特に新入生に対して、学校に馴染めるように気遣っているようで、廊下で彼をよく見かける。
すれ違いざまに好意的ではない、意味深な視線を向けられるけど。正直に言えよっていう、無言の圧力のようだった。
「あっ!」
突然、悲鳴とともにガチャンと食器が落ちる衝撃音が食堂内に響く。
振り返ればトレイから食事の皿を落とした生徒がいた。
床には食べ物が無惨に散らばっている。
落とした子は私と同級生の女の子だ。私と違って最少年の十歳で入学したのか、まだ小さな子どもだった。
惨状を見て泣きそうになっている。
酷い有様なので、片付けるにしても大変だよね。
手伝ったほうがいいのかなと思い、腰を浮かしかけたその時だ。
「大丈夫ですか? 火傷はしてませんか?」
素早く近寄って優しく声をかけたのは校長だ。
彼は女の子に何も汁がかかってないことを確認すると、魔導を使って素早く床の汚れを消し去った。
あっという間に何事もなかったかのようになる。
そんな彼の巧みな仕業を見て、周囲の生徒たちから「すごーい」と歓声が上がる。
「ここはもう大丈夫だから、もう一度食事を取りに行くといいですよ」
とても穏やかな声だった。彼は慈愛深い眼差しを生徒に向けていた。
この学校には十歳から入学できる初等部以外に中等部、高等部があり、それぞれの部の卒業後の試験で、下級、中級、上級の魔導士資格が取得できる。飛び級も留年もできるから、クラスの年齢層は本当にバラバラだけど、十六歳での私の初等部入学は珍しかったみたい。
最初、途中からの入学で注目を浴びたけど、同級生と色々と会話をして交流を増やしたら、知り合いも無事に増えて、今では数名の年下の女の子たちと一緒に行動して平穏に過ごしている。
私の制服姿は、すっかり周囲と馴染んでいた。
前世の子どものとき、私は魔導の習得だけ優先して、友人関係はバッサリと切り捨てていた。
当時、魔導の資質だけが全てだと考えていたから、自分より劣る人間に興味がなかったのよね。
残念ながら、昔は偏った考えでしか価値を測れない狭量な人間だった。
今は魔導だけにこだわってないし、人それぞれ素敵なところがあるって分かっている。
今日も昼休みに友人たちと一緒に食堂に来ていた。
制服姿の生徒たちで溢れ、その中に私たちも混ざっていた。
濃緑色のブレザーの上着と、同じ色を基調としたチェックのスカートが女子の制服姿だ。シャツの上にコルセットをつけている。
卒業生の制服が中古で売っていたからお財布的に助かったわ。ちょっと胸のサイズが合わなくて苦しいけどね。
学校の食堂は、関係者なら誰でも格安で利用できるようになっている。生徒たちに交じって先生たちの姿もたまに見かける。
吹き抜けの開放的な空間で、天井近くまで贅沢なガラス張りになっている。
今日みたいに天気がいい日だと、日がよく当たって明るかった。
大きめなテーブルが均等に並び、早いもの順で好きな場所に座れるようになっている。
私たちも固まって席を確保して、食事を始めている。
メニューはたくさんあるから、この時間は一日の楽しみの一つになっている。
サクスヘル校長も私から離れたテーブルで他の生徒たちと食事をしている。
彼は生徒の名前を憶えているようで、気さくに話しかけていた。
彼は毎朝学校の校門前で生徒たちを出迎え、長い休憩時間には校内を散策して生徒たちと触れ合っている。
特に新入生に対して、学校に馴染めるように気遣っているようで、廊下で彼をよく見かける。
すれ違いざまに好意的ではない、意味深な視線を向けられるけど。正直に言えよっていう、無言の圧力のようだった。
「あっ!」
突然、悲鳴とともにガチャンと食器が落ちる衝撃音が食堂内に響く。
振り返ればトレイから食事の皿を落とした生徒がいた。
床には食べ物が無惨に散らばっている。
落とした子は私と同級生の女の子だ。私と違って最少年の十歳で入学したのか、まだ小さな子どもだった。
惨状を見て泣きそうになっている。
酷い有様なので、片付けるにしても大変だよね。
手伝ったほうがいいのかなと思い、腰を浮かしかけたその時だ。
「大丈夫ですか? 火傷はしてませんか?」
素早く近寄って優しく声をかけたのは校長だ。
彼は女の子に何も汁がかかってないことを確認すると、魔導を使って素早く床の汚れを消し去った。
あっという間に何事もなかったかのようになる。
そんな彼の巧みな仕業を見て、周囲の生徒たちから「すごーい」と歓声が上がる。
「ここはもう大丈夫だから、もう一度食事を取りに行くといいですよ」
とても穏やかな声だった。彼は慈愛深い眼差しを生徒に向けていた。
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