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第四章 大事なものと中年冒険者

大事なものと中年

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 ギルドに入ると横川さんに呼ばれ二階の応接室に入る。

「今日は新人がすいませんでした。あれからちゃんと注意したので許して頂けないでしょうか?」
 と殆ど土下座のような姿勢だ。

「横川さんが悪いわけじゃないですし、大丈夫ですよ」

「いえ、あれは私の姪の咲夜でして……その、甘やかされて育ったもので、思い込みも激しく……ですので、すいませんでした!」

 あぁ、姪なんだ、それはなんとも。

「はぁ、兄ちゃんの機嫌を損ねたのはそいつかよ……」

「本当に申し訳ない」
 とまた頭を下げる。


 それからは四層までのドロップを渡してギルドを出る。

「兄ちゃん、疲れた時は甘い物だよ。ずんだ食べに行かない?」

「だな、そのあとお土産でも見てみるか?」
 と茶屋でお茶して、土産物屋に。

「刀カッケェ! まじ侍になろうかな……」

「模造刀だろ? ノセなら作れるんじゃない?」

「調べたけど結構大変そうですよ。いまなら鍛冶屋も多いし、作って貰った方がいいと思いますけど。モッチーさんに融合してもらえば属性付きとかにも出来るでしょうし」

属性付きの刀か、いいかもな。

装備はやっぱ鎧? でも野武士的な感じでもいいなぁ。

「でも賢人はないな、金髪だし似非侍だろ?」

「は? 戦国バチェラーでもいろんな髪が居るじゃん!」

「てか戦国バチェラーって乙女ゲーだろ?」

「だからコスプレしたらモテるって」

「……俺も侍いいと思ってたんだよなぁ」

「いや、動機が不純だし、お前がやったらガチの武将じゃね?」

「うっせー! モテたいんじゃボケェー!」


 五月蝿いのはほっといて、フィギュアとかスゲーな、何カ所稼働だよ? 付属品つけすぎだし。

 てかここバチェラー多すぎ。まー城跡だからあんま見るとこないし、お土産で稼いでんのか?

 やっぱ人気は伊達と真田か。お、ワンコインで二頭身のキャラフィギュアがあんじゃん。
 中身分かんないけど、アンコとマロンに買ってこー。とりあえず10個あれば5個づつで分けるだろ。

 賢人達の所に戻ると、模造刀を買う様だが、一本だけ買うようでどれにするかでまた揉めている。

「やっぱクロでしょ! 赤とか派手すぎるわ!」

「俺が好きなんだからしょーがねーじゃん、赤だから映えるんだろ!」

 正直どーでもいい。

「お前ら金あるんだから、買えばいいじゃん」

「けっこーな値段すんですって!」

 見ると五万以上……俺だったら買わんな。

「どーせまた今度来るんだから、そん時買えば?」

「そーっすね! それまでに赤の良さをこいつに教えてあげますよ!」

「ざけんな! 漢なら黒しかねーし!」

 とノセとモッチーがなにをやってるかと言うと、何故かアクセサリーコーナーで物色してる。

「おい、そこの不審者2人、何してんの?」

「ん? お土産選び、アンコちゃんに」




 で、家に帰ると嫁の土産を渡す。
 ズンダ饅頭。
 それなりに喜んでくれて良かった。

 アンコとマロンは、はしゃぎながら開けていたが、ダブりと推しキャラが居なかったので凹んでた。また買ってこよう。

 ちなみにノセ・モッチーのアクセサリーは床に置きっぱなしになっていた。

 何故だろう今日はほんと疲れた………



 翌日は休養日にした、昨日も疲れたしソロソロ休みたかった。で朝から嫁とアンコがベッタリだ。

「「最近ダンジョンばっかでつまんない」」

 仲がいい事で……

 街の雰囲気も変わり、落ち着く町並みだ。

 ハウスに入り3人で映画を見ていると、

『ようやく時間が出来たよ! 行ってもいい?』とリンリンからメールが届いた。

「だれ?」と両方から睨まれるが、会えばわかると宥めてOKの返信をする。

 ドタドタと階段を降りる音が聞こえて、

「やっほー! リンリンちゃん参上!」

「おう! 久しぶり! こっちが嫁の美羽でこっちがアンコな!」

「美羽ちゃんにアンコちゃんね! よろしくー!」

 天界であったままだな、あの人形がこうなるのか。

「こいつはリンリン、俺の友達だ」
 と美羽とアンコに紹介する。

「IDの確認ができません。防衛「アンコ、こいつは気にしなくていいから、敵ではないから!」了解しました。アンコです。よろしくお願いします。」

 と警戒してたのは最初だけ、映画を辞めて、ゲームに切り替え3人で遊ばせるとすぐ仲良くなった。

 ちょうどリンリンが来たので、

「ちょっと聞きたい事があるんだが」

「いいよ? 美羽ちゃんアンコちゃんちょっと話してくるね!」

「「はぁーい」」

 と言うわけで俺の部屋、リンリンはベッドに座って、俺は椅子に座り。

「さっそくだが魔素の流れはもう止まってるのか?」

「まだだよ、多分何百年かは続くと思う」

 まじかぁ、
「んじゃ今できてるダンジョンが、地球に適応してきてるのか?」

「それは違うかな、魔素を吸収し適応してるけど、今の地球は過剰に取り込んでるから吐き出す為にダンジョンを作ってるんだよ。
 日本は狭いから少ないけどね。」

「じゃあダンジョンは」

「増えるだろうね」

 椅子に背を預けて上を見上げる。

「壱番君はもう異次元ハウスって安全な場所があるけど、どうしたいの?」

 俺はどうしたいのだろうか?

「分からないが……ここだけでは人は生きていけないだろうな、人間が住める地球がいいな」

「だと思ったよ。まぁ増えるだろうけど消す事もできる。前みたいにダンジョンを攻略すればね! でも消し過ぎるとまた吐き出す為に増えると思うけど」

「吐き出してなんか変わるのか?」

「変わらないよ。そりゃ多少の変化はあるだろうけど、今までもそれなりに天変地異はあったでしょ?」

「まぁ言われてみればな……」

「しかも魔素、魔法と今まで無かった物があるし、モンスターもいる。これだけでも地球は変わったんだしね」

「ダンジョンを放置するとどうなる?」

「スタンピード、氾濫するね、止めるかい?」

「出来ると思うか?」

「壱番君だからね! でもダンジョンによって難易度も変わる、階層も変わる。
 今は壱番君達が深く潜ってるけど、壱番君達だけでは無理だよ。
 だからその為に馬鹿、この原因を作った奴がいま地球で罰を受けてるよ」

 やはり俺らだけじゃ無理か、
「罰ってなんだ?」

「ギルドのグランドマスター。
 人間に紛れて人間を手助けする罰。
 ほとんどの能力は封印されてるから人間とほぼ変わらないよ、スキルで残ってるのは転移くらいかな? ギルド間だけのね。
 でもその分天界からの支援物資があるから、レベル測定器もステータスカード作成機も支援物資。
 いまは5人に分かれて仕事してるよ」

「同じ人間が、5人いるのか?」

「少ないよね、地球に国が何個あると思ってるんだか……でも今はダンジョンも少ないし、なんとか下を育ててるみたいだよ。
 興味ないからチリ君に聞いた話だけどね」

「育成中か……」
 ならなんとか、

「言っとくけど壱番君くらい強くなるのはいないと思っていいよ。
 ファーストは君だけ! だけど君は君らしくしていればいい。
 これは人間に課せられた試練だから君一人がやるべき事ではない!」

 なんだよそれ……

「君の手は2つだ、君は何を掴む? 力があっても能力があっても救えないものはある。神ですらね。だから大事な物を取り零さないで」

 真面目な顔で見ていたリンリンが薄く笑うと、
「じゃあ待たせてるから下にいくね! また聞きたい事があればスマホでね」
 と歩いて部屋を出て行った。

 ……俺の大事なもの、か。


 昨日は夜までリンリンはがいた。
 バーベキューをし、みんなでワイワイ楽しんでから、時間だからと寂しそうに帰るリンリンに、

「「「「「「「またねー!」」」」」」」
 とみんなで言うと恥ずかしそうに〃また来るね〃と言って笑って帰った。
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