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第六十九話
しおりを挟む“バキッ”
蹄は踏み抜くことができず折れていた。
「…悪いな」
『!?!ッッ!お、お前は?」
ラビオンが大剣を担いでユニオンの横に立っていた。
「…あぁ、2回斬るぞ…」
“斬斬ッッ!!”
『ウガァァァァアァァ!!』
ラビオンは静かにウリンのカバンからポーションを取り出して飲ませるとウリンをそのまま寝かせ、ユニオンの方を向く。
『何故?!何故『再生』しない!!』
ユニオンの右前脚と付けられた傷の二箇所から血が流れている。
『お前!何をした!!!』
ラビオンは大剣を片手で突き付ける。
「…壊しただけだ。ジタバタするなよ?」
『う、ウォォオォォ!!『モノケロース』!!!』
「二の壊『砕』」
ユニオンの角は粉々に砕け散る。
『ヌオォォォオォォォォォ!!!』
額を抑え後退り、大樹の方へ走り出すユニオン。
『瞬歩』
ッ
ッ
“ダンッ”
『うぉおのぉれえぇぇぇ!!』
目の前に立つラビオンに拳を繰り出すユニオンだが、
“ガガガガンッ”
突き出された右腕は至る所から血が吹き出す。
「悪い、もうお前はただの弱者だ」
『ウガァァァァアァァ!!!』
右腕を壊されたユニオンは背後を向くと後ろ足を蹴り上げる。
『『ホース・ディフェンス!!!』』
「一の壊『断』」
『う』 『そだ』
ユニオンは半分に斬られ砂に変わっていった。
砂に変わったユニオンを見つめ、ゆっくりと自分の相棒を見る。
「…ありがとな…」
ラビオンの大剣は役目を終えたように粉々に砕け散った。
「…うっ…ラビオン?」
「おっ!気が付いたか?」
ラビオンはウリンの鞄の中に手を突っ込みながら振り向く。
「クソッ!…身体が動かねぇ」
「まぁ、あんだけの傷だ!動けねぇのも無理ねぇな!!」
「ウリン、大丈夫?」
ヒョコッと顔を覗かせるラムザ。
「く…ラムザ、無事だったか」
3人は大樹の根元にいて、横たわるウリン、ラビオンとラムザは木の根に座っていた。
「で?あの化け物、どうやって倒したんだ?」
ウリンは首だけ動かすとユニオンがいないことを確かめるようにラビオンに問いかける。
「ん?あぁ、俺は『剣壊者』になったみたいだ」
「な!?お前まさかスキップ覚醒したのかよ…」
二次職の大剣士から四次職へと文字通りスキップしたのだ。
「どうやら俺の実力はそこまで登り詰めたみたいだな!!!」
と親指で己を指し、カッコつけるラビオン!
「く…殴りたい」
ウリンは悔しそうにしているが横で鞄を漁るラビオンに気付く。
「おい!お前何やってんだ!!」
「ん?他に食い物でもないかと思ってさ。お前最高級ポーション2本も隠してやがったしな!」
「馬鹿野郎!それで今助かってんだろうが!やめろ!俺の鞄から手を抜け!!」
ウリンの言葉は虚しく響く。
「やっぱりあった!ほれ、ラムザ!食えよ」
ハムのようなものを取り出すとラムザに渡す。
「ありがとう!」
「やめろ!それは緊急時の保存食だぞ!やめムグッムグッ!!」
「まぁ、お前も食えよ!血ぃ流しすぎだろ?」
ウリンは無駄だと分かり口を動かして保存食を食べる。
「それにしてももっといいポーションはないのか?ラムザに跡が残ってるんだが?」
ポーションを使ったがラムザの両手両足の傷跡は消えなかった。
「ないな、あれがとっておきだったからな」
「そうか、ラムザ、しょうがねぇが帰ったら治してやるからな?」
ラビオンが頭を撫でる。
「これでいい!かっこいいでしょ?」
手のひらにある傷跡を二人に見せる。
「「プッ!!」」
「そりゃねーぞ?くはははは」
「あはははは!ラムザも言うようになったな!」
二人に笑われて恥ずかしそうなラムザだが、
「足はブーツで隠れるし!この二つは二人が助けてくれた証だから!も、もう!笑うな!」
「あはははは、わかったよ」
「あぁ、っと、それじゃあ俺は証としてこれをもらっておこう!」
大樹の根元に突き刺さった剣を引き抜く。
その剣は光り輝き髪飾りのような細工が目を引く美しい大剣だった。
「魔剣…か」
「凄い…」
「これがいまから相棒になる魔剣ヴァルゴだ」
剣を掲げると大樹から祝福のように光が差し込む。
「えぶしっ!」
「おい!!…ったく、締まらねえな?で?俺には何か無いのか?」
「おう、これはお前のだ!」
とラビオンがウリンの手に持たせたのは『憤怒の命石』。
「へぇ!綺麗な宝石だな!っと、いてて、ようやく少し動けるな」
起き上がるウリンに手を貸すラムザ。
「綺麗だね!」
「高く売れるぞ?」
宝石をラムザに見せながらウリンはそう言う。
「な!売るなよな!」
「うらねぇよ!!俺のとっておきだ!」
笑いながらウリンが光に透かしてみると、見覚えのある顔が遠くに見える。
「おーい!ラビオン!ウリン!ラムザ!」
「あ!ラムザ見つけたんだね!!さっすがラビオン!」
「アンタら心配したんだからね!!あとで説教よ!!」
とアビーやワルツ、ルシエにリミ達が走ってくる。
ルシエ達にスキップ覚醒を自慢するラビオン。
飴が溶けたままのズボンを履き替えるラムザ。
ワルツに笑われるが動けないウリン。
そしてラビオンの背中に光る『聖剣ヴァルゴ』を長き時見つめてきた大樹は優しくその枝を揺らす。
『憤怒のラース、その獣、一角獣で近寄るもの全てを貫く』
ユニオンはやっとバルゴの元へと旅立って行った。
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